ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年2月のお笑い」

しずる、ずっと面白い

飯塚　「千鳥のクセスゴ！」（フジテレビ）でしずるの「LOVE PHANTOM」ネタが面白いっていうのが話題になってた。

井口　しずるさんって面白いネタを出し続けてますよね。

飯塚　そうそう。しずるって面白いよなって改めて思った。2人ともネタが作れて、演者として2人とも上手いし。あのネタは「曲を使うネタ」という縛りで「クセスゴ」のために作ったネタで、アドリブ的な感じでやった部分もあったらしいんだけど、最後自分たちで笑っちゃってるのとかも含めてすごい面白かった。

井口　意外と、そういう縛りがあったほうがいいネタできたりするんですよね。

飯塚　ラブレターズの「西岡中学校」とかね。

井口　今までやったことのない歌ネタをやるっていうライブの企画用に作ったら、「キングオブコント」決勝に行った。

飯塚　ロングコートダディが2022年の「M-1」で披露していたマラソンネタも、「マラソンあるある-1グランプリ」（関西テレビ）用に作ったネタ。

井口　「こういう縛りだから」って思いっきりアクセル踏んでやりきったら、意外といい感じになるっていう。

飯塚　しずるがずっと面白いっていうのは「キングオブコント」の準決勝で見ていても思うし、「UNDER5 AWARD」の予選MCをやっているのも見たけど、すごくいいんだよね、しずるのMC。もちろん今も十分売れていると思うけど、もう1回大きく来るんじゃないかなって思う。

井口　みんなしずるさん好きですしね。

飯塚　先輩も後輩も好きな人多いよね。村上さんのちょっと変わっているところも含めて。ラランド・サーヤさんが「THEゴールデンコンビ」で相方にKAƵMAさんを選んでいたり。

井口　「アメトーーク！」（テレビ朝日）で「しずる池田大好き芸人」もありましたし。

飯塚　今思うと「爆笑レッドカーペット」（フジテレビ）に出ていた人たちってめっちゃ地肩強いよね。毎週1分ネタを作らなきゃいけないって相当大変だったと思うから、ネタ作り能力が鍛えられているんだろうね。

井口　「クセスゴ」はレギュラー放送終了なんですよね。人気だと思っていましたけど。

飯塚　この連載でも話しているけど、お笑い好きの人でもネタ番組を観なくなってきている気がする。自分の若い頃ってネタ番組絶対観てたじゃん。「オンエアバトル」とか「レッドカーペット」とか。今はYouTubeがあるし、ライブも配信で観られるから。

井口　「オンバト」がないときは「お笑いダンクシュート」（NHK総合）とか録画して擦り切れるまで何回も繰り返し観てました。

飯塚　だから、賞レースが多くなっちゃうんだよね。賞レースのほうが比較的観てくれるから、「ダブルインパクト」（※）になるんだと思うし。

※編集部注：日本テレビと読売テレビが優勝賞金1000万円の新たな大会「ダブルインパクト ～漫才＆コント二刀流No.1決定戦～」を立ち上げ。4月に1回戦がスタートし、決勝は今夏、日本テレビ・読売テレビ系列で生放送される。

井口　でもこの間、伊豆に行ったら「あ、井口さん！ ちょうど昨日録画してた『チャップリン』観てたのよ！」って声かけられて。「M-1」以外で「ネタ観たよ」と言われたのは初めてだし、録画して「チャップリン」観てるんだ？とか、意外と届いているだなとは思いました。

井口の伊豆旅行

因縁のエバースと対面

飯塚　エバースVS井口はどうなっているの？

井口　いやー、会っちゃいましたね。

──井口さんが常々「よしもとの人気芸人が配信でものすごく儲かっている」という話をテレビや舞台で言っていることに対して、エバース佐々木さんが「見取り図じゃん」（テレビ朝日）の「大きい声では言えないけど、小さい声なら言える会」で苦情を言っていた様子が放送され、ネットニュースにもなったあと、井口さんが佐々木さんとのツーショットをXに載せていました。

井口と佐々木のツーショット

井口　番組で共演だったんですけど、局に入ってクロークに行ったらたまたま誰もいないところで2人だけで会っちゃって。なんか「おお～ん……」みたいにはなりました（笑）。

飯塚　「お前、言ってたな？」みたいなやり取りはあったんだ？

井口　対決する企画とかではなかったですけど、その対立構造みたいなのは番組の煽りとしては使われてるかもしれません。まあ、あいつも珍しいタイプですよね。僕がどれだけ言っても、みんな「もういいって、その話」みたいなリアクションじゃないですか。佐々木だけはちゃんと言い返してくるっていう。

飯塚　9番街レトロは「給料を見せ合いたい」みたいな話になってたけど。

井口　もう見せられなくなっちゃいましたね。勘弁してくれよ。だから何より確認しました。「エバースは大丈夫だろうな？」って。揉めといていなくならないでほしいんで。不戦勝みたいになっても困りますから。

飯塚　佐々木さんは「よしもとで勝負する度胸もないくせに」って言っていたけど、井口くんとしてはよしもと以外の事務所で戦っているほうが大変だって思っているんだよね？

井口　そうです、そうです。よしもと以外で勝ってるほうがすごいだろ！ 絶対に。

飯塚　神保町（よしもと漫才劇場）とかのファンだと、「先輩の井口さんが後輩にそんなことを言って大人げない！」と思うかもしれないけど、僕はおじさんだから、でっかい事務所のイケイケの若手が言ったほうが影響力が強くて、井口くんのほうが弱いと思っちゃう。そこの認識がそもそも噛み合ってないんだよね。

井口　そうなんですよ。みんなが「よしもと」というものをわかってなさすぎる！ 巨大なんだから！ みんなよしもとが本当に好きだし。それはそれでいいんですけど。

飯塚　よしもとの芸人さんはよしもと所属であることの特権性も少なからず享受しているはずだけど、わざわざ「これおかしいよ！」とは言う必要ないもんね。

井口　だから、僕だけが戦ってるんですよ。

飯塚　お笑いだけじゃなくて、いろんな業界でも勢いのある若手と年上のおじさん、どっちのほうが強いのか、みたいな問題はあるよね。XXCLUBの大島くんとレイザーラモンRGさんの件（※）もそうで、大島くんからしたらだいぶ上の先輩から急にイジられたと思うけど、RGさんからしたらネットの世界では大島くんのほうが影響力あると思っていた。どっちが合ってるとかではなく、そのズレがまず発端にあった。

井口　こっちはあっちが巨大だと思ってるし。

飯塚　ずっと相容れないんだよね。

※編集部注：レイザーラモンRGが特に面識のなかった大島育宙のモノマネとして「お笑い考察をしているR島」というネタを「R-1グランプリ2025」予選で披露。その後X上でのやり取があったものの、お互いの本意が不明のままで不穏な雰囲気が漂っていたが、大島のYouTubeチャンネルにRGが出演して語り合うことで和解した。詳細はぜひ動画で。

──エバースの町田さんにも会えたんですか？ 以前「会って対峙してからじゃないと判断したくないから、ロンハー来いよ！」と言っていましたけど。

ウエストランド井口、エバース町田へ「ロンハー来いよ！」

井口　会えましたけど、町田がいるせいでブレましたね（笑）。町田がどうしょもなさすぎて！

──ではそのエバースとの共演の様子は今後何かしらで見られるということですね。

井口　佐々木と僕のツーショットもかなり反響ありましたからね。あんなにみんな気にしてたんだっていう。みなまで言っちゃうと、僕がやりたいことってこれですからね？ 僕がやいやい文句言って、こんなに盛り上がるならいいじゃないですか。くるまには怒られましたけど（笑）。

飯塚　井口くんに対していろいろ言う人もいるけど、結局みんな楽しんでる。

井口　楽しんでるんだからいいんですよ。本当にケンカしてるわけでもないし。

本当に詐欺に気をつけろ！

飯塚　オンラインカジノの問題が騒がれている中、唯一ほっこりしたのが「コロチキ、令和ロマンの代演で炎上」。まあ炎上とかではないけどね。

井口　一部不満を言う人もいたっていう。それを本人もうまく笑いにしていて、いい出来事でしたよね（笑）。

飯塚　オンラインカジノ関連で唯一笑えるニュース。テレビ出演で結果出すとかより、こういう時事ネタに乗っかるほうが話題になるのが今っぽいなと思う。

──「耳の穴かっぽじって聞け！」（テレビ朝日）はとろサーモン久保田さんの出演を見送り中で、代打としてみなみかわさんと濱田祐太郎さんを迎えていましたね。

井口　久保田さんが戻ってくるまではこういう形でやっていこうという方針ですね。本当に今、刻一刻といろいろ状況が変わるから、番組作りが大変ですよね。「この人呼んで大丈夫なのか？」とか。

飯塚　番組の会議でも「事情聴取されている可能性があるなら呼ぶのやめておこう」みたいな話になる。

井口　名前を出さないばっかりに、まったく関係ない芸人まで影響受けちゃいますよね。

飯塚　任意の事情聴取を受けている段階で「ダメ」ってなると、冤罪でも取り調べを受けたらもうダメなのかっていう話になる。なんの弁明の余地もなく、疑われたらアウト。どうせキャンセルされるなら早めに切ったほうがいいって感じが漂ってる。

井口　「バラバラ大作戦」（テレビ朝日）もきっと春から新しい番組をやると思いますけど、始めづらいですよね。始めたはいいけど、この人いなくなったらどうしようっていう。

飯塚　最近、みんな陰謀論っぽくない？ 爆笑問題の太田さんがフジテレビの騒動をイジったからフジテレビの番組（「ぎりぎりをせめるので続くだけやります法律お笑い」）が終わったとか。発想が短絡的だなって。

井口　それに対していちいち説明しなきゃいけないのも大変ですよね。

飯塚　ネットの陰謀論にハマっちゃう人の考え方だから。「イロモネア」の告知も、最初ウンナンさんのマネージャーさんが南原さんの出演情報として発信していたから「え、ナンチャンだけなんだ？」って騒がれていて、「テレビ局の予算削減がそこまで来たか」とか言っている人もいて。内村さんの出演をなくして予算削減するなんて絶対あり得ないし。

井口　そういう人が何も考えずに発信してバズっちゃうから余計に信じる人も出てくる。

飯塚　井口くんがこの連載でよく「詐欺に気をつけろ！」と言ってるけど、本当にそう思う。陰謀論にハマらないように気をつけたほうがいい。

井口　だからまあ、落ち着いてほしいですね。

──SNSで発信する前に1回落ち着いて考えましょう、ということですね。

「2022年12月のお笑い」でみんなが詐欺に遭わないか心配していた井口

森香澄は逆井口

──井口さんが「トークィーンズ」（フジテレビ）で恋愛について語ったり、「あのちゃんねる」（テレビ朝日）の合コン企画に出ていましたね。

飯塚　井口くんの恋愛仕事が増えてる。

井口　とにかく恋愛が人気ですね。ABEMAを開くととにかく恋愛リアリティ番組が出てくるし、「あのちゃんねる」でも合コンの回がめちゃくちゃ再生されているらしいんですよ。だから絶望も感じます。こんなにみんな恋愛が好きなんだって。僕からしたら時代錯誤というか、あれだけ多様性だと言っているわりに古臭い気がしますけどね。「トークイーンズ」では僕も牽制して「お前らもいい恋愛してないだろ！」とかオープニングで言ったらそれがネットニュースになって、賛同する声とかもありましたけど、ちょっと変えていかないと危険な感じがします。まだ「早くいい人見つかるといいですね」とか言ってくるの？っていう。そんなことよりウケたいけどな？

飯塚　モテてない女性芸人を呼んで「お前の恋愛はダメだ！」とか言ってたらもう少し大変なことになりそうだよね。

井口　そう思うとかなりやばいことではある気がしますけどね。そこで僕がちょっとでも新しい風を吹き込めたらいいなと思います。

飯塚　井口くんとは逆で大変だなと思うのが、森香澄さんがモテテクみたいなものを無限に聞かれて、無限に打ち返してる（笑）。あれはあれですごいよね。逆井口状態。森さんと井口くんはもしかしたら同じ悩みを共有できるかもしれない。

井口　無限恋愛大喜利しているわけですもんね。

──ほかに「今月のお笑い」ありますか？

井口　Jリーグが開幕して、ファジアーノ岡山の開幕戦に僕ら行かせてもらったんですけど、ジュビロ磐田の開幕戦にラブレターズが行っていて。ジュビロはでラブレターズのあのネタに関連してグッズを作ったり、お笑いに寛容ですよね。ちゃんと理解があってやってくれている感じがあるので、いいなって思います。

──あと、細かい話ですがロッチの宣材写真が「おしゃれクリップ」（日本テレビ）で山崎育三郎さんが撮影した写真になっていて、ウエストランドと同じですね。

井口　あ、そうなんですか？

飯塚　めっちゃどうでもいい話ですけど、七五三で家族写真を撮りに行った写真館にグランジ五明さんの描いているマンガがいっぱい置いてあって、「これどうしたんですか？」って聞いたら、カメラマンさんが五明さんの弟さんで。

井口　へえ！

飯塚　しかも調べたら、マセキの宣材写真を撮ってる方だった。うちの家族写真はマセキの宣材写真と同じ人が撮ってくれています（笑）。

井口　ルシファーさんと同じってことですね。

お知らせ

5月14日（水）夜に第2回「今月のお笑いネタライブ!!」の開催が決定しました！ 即日完売した前回（シダックスホール）よりも広めの会場を用意しています。詳細は改めてお伝えします。そして書籍化も6月発売を目指して進行中です。楽しみにお待ちください。

プロフィール

井口浩之（イグチヒロユキ）

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太（コウモトフトシ）とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも！」（フジテレビ）のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から2014年に「THE MANZAI」認定漫才師。「M-1グランプリ」では2020年に初の決勝進出を果たし、2022年に優勝！ ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ！」をYouTubeなどで配信中。とろサーモン久保田とのレギュラー番組「耳の穴かっぽじって聞け！」（テレビ朝日）は毎週火曜26:34～。タイタン所属。

飯塚大悟（イイヅカダイゴ）

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン＆芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」（テレビ朝日）、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」（TBS）、「ヒルナンデス！」（日本テレビ）、「オードリーのオールナイトニッポン」（ニッポン放送）など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン～10人の放送作家から読み解くラジオの今～」（扶桑社）。