ぜんぶ君のせいだ。如月愛海×ましろ|前に進むために「活動休止」という時間が必要だった

ぜんぶ君のせいだ。は7月に東京・中野サンプラザホールにてグループ初のホール公演となる「ぜんぶ君のせいだ。単独公演~生鳴兆候(バイタルサイン)~」を開催し、その日の夜にグループの“一時活動休止”を発表。さらに翌週には活動初期からグループを支えてきた一十三四と、約1年前に加入した凪あけぼのの脱退を発表し、多くの患い(ぜんぶ君のせいだ。ファンの呼称)たちを驚かせた。数多くの音源をリリースし、現場を回ることでアイデンティティを確立してきた彼女たちは「活動休止」をどう捉え、前に進んでいくのか。四とあけぼのはなぜグループ脱退を決心したのか。ぜん君。の中核を成す如月愛海とましろの2人に、現在の正直な胸のうちを語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 関上貴也

左からましろ、如月愛海。

節目の中野サンプラザ公演

──いろいろ伺いたいことはあるんですが、まずは中野サンプラザホールで開催されたライブのことから(参照:ぜんぶ君のせいだ。中野サンプラザで患いたちと集大成的ライブを展開)。そもそも中野サンプラザホールという大きな会場でのワンマンライブは、グループにとってかなり重要な公演だったと思います。

ましろ

ましろ 本当は「未夢命TOUR」のツアーファイナルをZepp Diver Cityで開催して、その次のステップへの第一歩として中野サンプラザでの初ホール公演をやろうと思っていたんですが、そもそもツアー自体が完結せずに終わってしまい……。

如月愛海 「未夢命TOUR」のことを私は「夢を現実に変えるツアー」だと言い続けていたんです。本来であれば、夢を現実に変える道筋を見せてから中野サンプラザで節目のライブをやって、もっと大きくなったぜん君。が次のステージに向かっていく、という流れを思い描いていたんですが、いろいろ話し合った結果、グループの活動休止やメンバーの脱退が決まってしまって。中野サンプラザ公演が節目のライブであることに変わりはないんですけど、節目の意味合いがちょっと変わってしまいました。

ましろ でも、結果として本当にいいライブができたよね。

如月 うん。いいライブだった。もちろん完璧なライブができたとは思っていないんですよ。技術的に足りない部分もまだあったし、感情的になりすぎてしまって、冷静じゃなかったところもあったと思う。でも振り返ってみて、「いい1日だったな」としみじみ思いました。

ましろ 自分たちはライブが終わったあとに活動休止を発表することを知っていたから、それでも患いさんをつなぎ留める何かがないといけないと思ってがむしゃらにライブをしていたんです。だから自分ではどういうライブだったかわかっていなかったけど、終演後にいろんな方に「いいライブだったよ」と言ってもらえたことがうれしくて。ここしばらくは直接ライブを観てもらって、直接レスポンスをもらうことがあまりなかったから、そういう言葉を直接受け取ることで「きっといいライブができたんだな」と思えました。

如月 私は感動の中に活動休止のことはあまりなかったかな……。

ましろ 僕はあったよ(笑)。ただ活動休止をするからライブをする、みたいなことではなかったから、変に思いを入れすぎないようにはしてたけど。

──ぜんぶ君のせいだ。は現場でライブをすることを活動の中心に据えていたグループなので、3月以降のほとんどライブがなかった状態は初めての体験ですよね。

ましろ はい。ただ、ライブができなくなったことですごく考える時間がもらえたことがありがたくて。今までは土日にライブして平日に帰ってきて週末にまたライブに行く、という生活を当たり前のように続けてきたから、何か考えて煮詰めるよりも先に自分たちの課題が自然と目の前に出てきて、それをこなしていくことが優先だったんです。もちろんそういう現場中心の活動に助けられてきた部分、成長させられてきた部分もあるけど、時間があればあるだけもっと見せたいライブの形を考えることができるし、これまで変えられなかった大きな部分を変えることもできるかもしれない。ぜんぶ君のせいだ。をさらに大きいステージに上げるためにどう進化しなきゃいけないかを考えて話し合う時間がたくさん持てたので、貴重な数カ月だったと思います。

左から如月愛海、ましろ。

武道館に行くための「活動休止」

──中野サンプラザでのライブ後にグループの一時活動休止が発表されました(参照:ぜんぶ君のせいだ。が一時活動休止を発表)。最初にその話を聞いたときは、情勢的にライブがあまり行われない状態が続いている今、わざわざ「活動休止」と言わなくてもいいんじゃないかと思ったんですよ。

如月愛海

如月 「活動休止」と言うことでたくさんの人を不安にさせてしまうとは思ったんですが、「活動休止」と表明することにも意味があるんです。ぜんぶ君のせいだ。は、ちゃんとパワーアップしたいんですよ。いつの間にかパワーアップしてたんじゃなくて、次へのステップアップのために準備をして、時間を使って、大きく変わったぜんぶ君のせいだ。を見せる必要があると思うから。実は活動休止をすること自体は、メンバーの脱退に関係なく決まっていたんです。

──それはどういうことですか?

ましろ ライブを繰り返していく中で「もっとこうしたいね」みたいな話が出てきても、いつものペースで活動を続けながらでは変えられないことが多くて。

如月 例えば5人から4人にフォーメーションを変えなきゃいけないこともあったし、ぼのと(征之丞)十五時が入ってからは4人から5人に変えなきゃいけなくて。これまでの私たちはライブの現場でとにかく慣れること、本番を重ねることでパフォーマンスを磨いてきたんですけど、そういう急ごしらえじゃない、ちゃんと時間をかけた変化を遂げたかったんですよ。「本番を重ねる」ということに意味があるのも理解しているんですけど、私たち不器用ですから(笑)。

ましろ 活動しながらパフォーマンスの根本を見直すような変化を生じさせるのが難しいと思って悩んでいたら、レーベルの社長が「だったら活動休止をしてみれば?」と言ってくださったんです。僕たち自身はそんな選択肢があると思ってもいなかったから「そういうこともできるのか」と思って。僕たちは目標としている武道館にどうしても立ちたくて、そのために足りないものをちゃんと持って前に進む必要があると思うんです。ただがむしゃらに行くんじゃなくて、ちゃんと武道館に立つべきアーティストにならなきゃいけない。

如月 本当に武道館という舞台に立つために活動休止という時間が必要だったんです。前向きな活動休止だと捉えてほしくて。

──詳しく話を聞く前は、新型コロナウイルス感染拡大の影響があって活動休止をせざるを得ない状況になったのかと思っていました。

如月 活動休止だけじゃなくて、メンバーの脱退もコロナ禍とはあまり関係ないんです。