ぜんぶ君のせいだ。|みきとP提供の“原点回帰”ナンバーで新たなフェーズへ

ぜんぶ君のせいだ。がニューシングル「Heavenlyheaven」をリリースした。

これまでぜんぶ君のせいだ。の楽曲はレーベル所属の作家が書いてきたが、今作の表題曲「Heavenlyheaven」は今回初めて外部の作家であるみきとPが作編曲で携わったナンバー。外部からの提供曲でありながらも、グループのリーダー・如月愛海はこの楽曲にデビュー曲「ねおじぇらすめろかおす」との共通項を見出し、“原点回帰の曲”と表現した。音楽ナタリーでは2度目の47都道府県ツアーで全国を飛び回るメンバーにインタビュー。新曲でありながらもグループ初期のサウンドを彷彿とさせる「Heavenlyheaven」へのメンバーそれぞれの印象や、ライブをテーマにしたカップリング曲「live生live」に込める思いを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦

再録アルバムを経て奇想天外なセトリに

──まずは現在開催中のツアーの話から。2周目の47都道府県ツアーを開催中のグループの近況はいかがですか?

如月愛海 ずーっとライブを繰り返す中で、患い(ぜんぶ君のせいだ。ファンの呼称)さんの受け止め方が変わってきたように感じています。グループの体制が目まぐるしく変わって、みんな衝撃を受けたと思うし、最初は不安が大きかったと思うんです。でも7人になってから47都道府県ツアーを2周するくらいライブをしているので、患いさんたちにもこの7人のぜん君。が定着してきた手応えがあります。私たちも、5人のときより7人のほうが飽きさせないパフォーマンスができていると思うし。

征之丞十五時 うん。1人ひとりがのびのびとパフォーマンスできるようになってきたと感じがするよね。でもそれがバラバラじゃなくて、ちゃんと1つにまとまるときはまとまれる。患いさんからも「最近1つになってきたね」と言っていただく機会が増えてきました。

雫ふふ

雫ふふ ステージ外でもちゃんとぶつかれるようになったのが大きいと思うんです。素でぶつかれるというか。喧嘩をすることもあるけど、それっていいことだなと思って。本気でぶつかり合うことも信頼関係がなきゃできないから、今はいろんな経験を経て成長できている実感があります。

もとちか襲 47都道府県ツアーも2周目なので、以前行ったライブハウスに再び訪れる機会があるんですけど、そのときに加入したばかりの頃を思い出すんですよね。必死になってがむしゃらに合わせようとがんばってた当時のことを思い出して、ちょっと懐かしい気持ちになって。今はそのときと違って、7人が1つになってのびのびとライブができていると思います。

──ぜん君。は今年の春に「Q.E.D.mono」「Q.E.D.bi」という2つの再録アルバムをリリースしました。30曲近くの既発曲を現メンバーで歌い直すことで、ライブの引き出しがめちゃくちゃ増えたわけですよね。

甘福氐喑

甘福氐喑 セットリストがものすごく奇想天外になりました(笑)。ぜん君。のライブは毎日セトリが違うから、2日間続けてライブがあったとしたら、初日と2日目で全然違うライブになるんです。

愛海 メイちゃん(メイユイメイ)とこてちゃん(个喆)が入ったおかげでグループの歌唱力が上がったので、ただ激しい曲で盛り上がるだけじゃなくて、じっくり聴かせる曲を見せ場に持ってこれるようにもなって、グループの武器がどんどん増えてる手応えがありますね。

十五時 患いさんが声を出せない状態でめちゃくちゃ攻めたセトリとかあったよね(笑)。マスクしてても、うずうずしてるのがすごくわかった。

 同じ曲でも曲順とかで全然印象が変わるから、自分たちでも新しい発見がありますね。「あ、この曲ってこういうテンションの上がり方をするんだ」みたいな。

ふふ 例えば「無題合唱」。めちゃくちゃ泣きながら歌う日もあれば、曲順によっては覚悟を決めてしっかり歌う日もあって、同じ曲でも全然表情が変わることがある。

愛海 レパートリーがめちゃくちゃ増えたから、1周目の47都道府県ツアーとは別のグループになったんじゃないかというくらい変わったかもしれないですね。前回のツアーを観に来てくれた人にはもう一度会いに来てもらって、今の私たちがどういうグループになったか確かめてもらいたいです。

新曲なのに“懐かしい”気持ちに

──ぜん君。の楽曲はこれまで水谷和樹さんかsyvaさんが作曲を担当してきたので、新曲「Heavenlyheaven」がみきとP提供という知らせを聞いて驚きました(参照:ぜんぶ君のせいだ。ニューシングル発売、表題曲はみきとPが作編曲担当)。

如月愛海

愛海 グループとして新しいフェーズに入ったということだと思います。作家さんの人選などは社長によるところが大きいんですが、ぜん君。が成長期を越えて成熟期に入っている中で、これまでと同じように自社の作家じゃなくていいんじゃないかという話をしていて。ただ、そこでボカロPのみきとPさんの名前が挙がってくるとは思わなかったので意外でした。

今村信秀(コドモメンタル.INC代表取締役) 如月の言う通り、僕自身はボカロはほとんど通らなかった世代で。でもメンバーの子たちが世代なのもあって、これまで配信やカバーなどで何度か聴いたことがあって、その中でもみきとPさんの作る音楽はぜんぶ君のせいだ。が表現したい世界に近いものを感じていました。上がってきた楽曲がとてつもなく仕上がりがよくて、シングルとして届けたいなと思って。

愛海 デモを聴いたとき、「ねおじぇらすめろかおす」(2015年7月にリリースしたぜんぶ君のせいだ。の1stシングル)のことを思い出したんです。あの頃のぜん君。にあったポップさと中毒性がちゃんと入っていて、なんか懐かしい気持ちになって。実は「ねおじぇらすめろかおす」という曲は、ぜんぶ君のせいだ。というグループができる前から、曲だけ先行して存在していたものだったんです。曲が先に存在して、そこに追いつくように自分たちが成長していったときのことを思い出したんですよね。再録アルバムを2作品出して、7人のぜん君。が定まったところで「Heavenlyheaven」という原点回帰を感じさせる曲が来て、また新しいいろんなことに挑戦する時代が来たような感覚があって、すごくうれしかったです。

──原点回帰を感じさせる曲が外部の作家から届くというのもなかなかないことですよね。

愛海 みきとPさんがウチらのカラーをちゃんと研究してくれたのかなとも思うし、ぜん君。の核にある部分が変わっていないとするならば、それはうれしいことですね。私は当時から「ねおじぇらすめろかおす」を歌っていたから「Heavenlyheaven」を聴いて「懐かしい」と思ったけど、メンバーのみんなはどう思った?

十五時 十五時が入ったぜん君。はカッコいい系の曲が増えたあとだったから、自分がファンだった頃のぜん君。のイメージに近くて。めぐちゃんが言ったのと同じで「懐かしい」と思ったよ。

メイユイメイ 「病みかわいい」ってこういうことだったよね!というのを感じたな。ポップでキャッチーなのにロックなところは忘れていない、めっちゃぜん君。の曲だ!って。

个喆

个喆 うん。超ぜん君。の曲。

 ぜん君。の曲でありつつ、ちゃんとみきとPさんの曲でもあるんですよ。ボカロを聴いて育ってきたから、イントロを聴いた瞬間に「みきとPさんの曲だ!」と思って。シャウトも入ってたし、ピコピコ音が入ってるし、ロック調だし、ぜん君。で歌ったら絶対カッコかわいくなるぞと思って、レコーディングがすごく楽しみでした。

个喆 シャウトがすごく聴きやすい曲で驚きました。「シャウトが苦手」という人でも、これなら違和感なく聴けると思う。

メイ レコーディングのとき和樹さんが「ちょっとなめらかにシャウトして」とディレクションしてくれたんですけど、それに戸惑っちゃって……(笑)。これまではいかに狂暴にシャウトするかを考えて歌ってきたので、初めてなめらかなシャウトに挑戦してみました。

 ねちもそれ言われた。私、シャウトがすごく低いタイプだから、マイルドなシャウトを求められて歌い方の根本を変えてみたんです。

愛海 喑の歌声が一番変わったかも。