ぜんぶ君のせいだ。|7人で歌うことで生まれ変わるグループ歴代の楽曲たち

ぜんぶ君のせいだ。が6月2日に2作目の“再新録再定義”アルバム「Q.E.D.bi」をリリースした。

今作には「Cult Scream」「無題合唱」といったグループの代表曲のほか、「Folia Therapy」「あおはる」といったライブでなかなか披露されないレア曲など計15曲を収録。前作「Q.E.D.mono」と合わせて30曲近くの再新録を行ってきた彼女たちは、既発曲をどのように解釈し、新たなバージョンとして世に送り出しているのか。今年2度目の全国47都道府県ツアー「Sicutie & Stupid Tour 2021」を開催中の彼女たちにインタビューを行い、グループ歴代の楽曲に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 堀内彩香

ライブをしない日のほうが非日常

──前回のインタビューは3月に行われた「re:voke tour for 47」のツアーファイナル直後でしたが、すでに今年2度目の47都道府県ツアーがスタートしています。2周目の47都道府県ツアーはいかがですか?

雫ふふ 「おかえり」と言ってもらえることがすごくうれしいんです。「2回も来てくれてありがとう」って言われるんですけど、私たちからしたら「ライブに遊びに来てくれてありがとう」なんですよね。だからすごく温かい気持ちになります。

もとちか襲 各地を回りながら「また来るよ」と言っていた約束が早くも果たせたのはすごくうれしいです。

甘福氐喑 1カ月くらいツアーがない期間があったんですけど、私たち3人は去年加入してからずっとツアーを回っていたから、ツアーがない日のほうが少なくて。毎週末ライブをすることに慣れていたから、すぐ2度目のツアーが始まってこっちのほうが日常、みたいな感覚があるんですよね。

征之丞十五時 ライブをしない日のほうが非日常に感じるときはあるよね(笑)。

ぜんぶ君のせいだ。

如月愛海 ひたすらライブを繰り返してきているので、パフォーマンスがすごく変わりました。これまでぜん君。は7人という大所帯でライブをしたことがなかったから、最初はみんな気を遣ってフォーメーションを組んでた感覚があったんです。みんながみんな、ちょっとずつ他人の位置をどこか意識しながらライブをしていて、それがちょっと不格好だなと感じていて。そういう気遣いがいい意味でなくなってきたというか。

メイユイメイ まだ加入してそんなに経ってないけど、一緒に過ごしている時間が多いから、だんだんお互いが何を考えるようになってきたのかわかってきたのが大きいかも。

 それと、ライブ中にぶつかっても全然気にしなくなったよね(笑)。

愛海 普通に考えたらぶつかり合ってるほうが不格好なのかもしれませんけど、私たちのライブはそれくらいがちょうどいいんですよね(笑)。みんながみんな、思い思いのタイミングで前に出るし、それを譲り合うんじゃなくて競い合うようにできるようになってきているのは、すごくいいことだと感じています。

──メイさんと个喆さんの場合、以前所属していたゆくえしれずつれづれとはまったく異なるライブが日常となりつつあるわけですよね。

左から征之丞十五時、メイユイメイ、甘福氐喑、如月愛海。

メイ つれづれのライブとは曲も雰囲気も全然違うから、入ってすぐのときはかわいい曲をパフォーマンスするのが本当に難しくて(笑)。最初は「こんなポーズしちゃっていいのかな」とか思ってドキドキしながらライブをしてました。最近はそれにも慣れてきて、かわいい曲を歌って踊るのも大好きになってきました。

个喆 个喆は最初からいろいろできるようになったのが楽しくて仕方がなかったです。つれづれのライブでかわいいことをやると浮いちゃってたと思うから、いろんなことができるのがうれしい。

愛海 私も含めて全員が毎回のライブでいろんなプレッシャーを感じて、毎回それに打ち勝ってきたんだと思います。ライブ中、今日はこれをやってやろう、これができた、みたいなものがそれぞれのメンバーから伝わってくるんですよ。私は一番キャリアが長いから、みんなのことをちょっと俯瞰で見て、それぞれがどういう成長を遂げているのかがわかるんですよね。みんな“登り龍”的な成長をしていると思います。

森の奥深くを味わうアルバム

──3月に再録アルバム「Q.E.D.mono」がリリースされ、今回はその続編的な作品として「Q.E.D.bi」がリリースされました。まず皆さんが動物に扮しているというジャケットアートワークに驚きました。

ぜんぶ君のせいだ。「Q.E.D. bi」ジャケット

愛海 3月にリリースした「Q.E.D.mono」のジャケットで描かれていたのが“森の中に入っていく私たち”だったんですよ。「Q.E.D.bi」のジャケットではその森の中で出会った動物たちが描かれています。

十五時 動物と言っても、一般的な動物たちじゃなくて、伝説上のものだったり、よくわからない生きものだったり……。

 ぜん君。のジャケでここまでコスプレしてるアートワークってなかったよね。

愛海 うん。たぶん既存曲の再録だからここまで遊べたんだと思います。新しい音源でこのジャケにしてしまうと、曲を聴く前に余計なイメージを聴き手に与えてしまう気がして。今回はみんなが知ってる曲を改めて世に送り出すからこそ、今までできなかった振り切り方ができていると思います。

メイ ちゃんと各々の個性が出てるんですよ。こてちゃんなんてユニコーンだからね(笑)。

个喆 真剣にユニコーンになりました。ちゃんと検索して、研究もしたんですよ。

 甘福氐は十五時に襲われているうさぎなんですけど、何度もジャンプして撮りました。動物になりきるのって難しい(笑)。

愛海 ふふは動物になってもあまり変わらなかったね。

ふふ うーん、一応動物になり切ってるつもりなんだけどなあ(笑)。

──「Q.E.D.mono」の収録曲がグループの定番曲を中心にしたものだとしたら、「Q.E.D.bi」はライブで聴く機会の少なかったレア曲が収録されているのが1つの特徴だと思います。

愛海 ライブでやる曲はもちろん、2作目ということもあり、ライブであまりやっていない曲もたくさん入っているのが「Q.E.D.bi」の特徴ですね。「Q.E.D.mono」が森の入り口だとしたら、「Q.E.D.bi」はぜん君。という森の奥深くを味わってもらう作品だと思います。

──特に5曲目の「Folia Therapy」は、最近のライブではまったく披露されていなかった曲ですよね?

愛海 もしかしたら十五時もライブでやったことないんじゃない?

十五時 やったことないよ!

愛海 「NEORDER NATION」(2018年7月発売の4thアルバム)をリリースした当初にライブで披露したきりですね。ここだけの話、私も振り付けを忘れていました(笑)。

 ライブではあまりやらないけど、ねちは「Folia Therapy」が好きすぎて、再録アルバムに入ると知ったときは飛び上がるほど喜びました。まさか自分が歌えるとも思ってなかったなあ。

愛海 「Folia Therapy」はレコーディングし直せてよかったと素直に感じた曲ですね。収録曲を発表したとき、この曲が収録されることを喜んでいる患い(ぜんぶ君のせいだ。ファンの総称)さんがたくさんいて、「あ、こんなに愛されている曲だったんだ」と改めて気付けた1曲でもあります。

 歌詞は重くてドロドロしているけど、人間味あふれる感情が「Folia Therapy」には込められていて。「笑って」という歌詞をすごく苦しそうに歌うところとか、とにかく大好き。

 わかる。

愛海 「重すぎる愛」を歌った曲なんですよね。ぜん君。はいろんな愛を歌ってきたけど、ここまで愛が重い曲はなかなかなくて。今回初めて「Folia Therapy」を聴く人もいるだろうから、「ぜん君。が表現する愛にはこういう形もある」ということを知ってもらいたいですね。