松下優也=YOUYA「20230524」インタビュー|世界で活躍するアーティスト迎えた1stアルバム制作秘話から歌唱の分析まで (2/2)

Grayとの共作は個人レベルだからこそ実現した

──アルバムの話に戻ります。今作にはYultronやGrayなど、韓国ヒップホップシーンで人気を誇るJay Park周りのクリエイターが参加されていますが、これはどのようなつながりから?

これはJ.E.T. MUSICのコネクションです。韓国の音楽シーンというとK-POPの大企業が牽引しているイメージがありますが、それ以外のアーティストたちは基本的にインディーズで、みんなコネクションベースで仕事してるみたいなんですよね。ちなみに7月に開催するCrushの来日公演はJ.E.T. MUSICの主催なんですよ。

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──YOUYAさんは韓国のヒップホップ、R&Bシーンをどのように捉えていますか?

アウトプットがうまいと思います。それこそJay Parkもめちゃくちゃ尊敬してますし。なんというか、韓国のアーティストだけどアメリカのアーティストっぽい見せ方と言いますか。日本の場合、“日本フィルター”が濃すぎるんですよね。カラオケ映えする歌というか。僕は日本人だからそういうのも好きだけど。

──Grayは韓国のトッププロデューサーで、今作では9曲目「21世紀少年-21st Century Boy-(Prod. by GRAY)」を手がけています。Grayと仕事をした感想は?

すごく光栄でしたね。友達伝いに連絡を取り合って……前の事務所にいたときだったら全然想像もつかないことですよ。個人レベルだからやれていることかなと思ってます。向こうだって企業相手だったら全然違う感じだろうし。たぶん日本でGrayと仕事してるのはIOくんと僕くらいでしょ。まだ韓国に行ったことがないので、これをきっかけに行ってみたいですね。

──4曲目「Take It Back feat. Los(Prod. by UGP)」は西海岸のラッパー・Losさんをフィーチャーした楽曲ですね。僕、この曲すごく好きです。

お、マジですか。そう言ってくださる方多いんですよ。日本人ってウェッサイ好きですよね(笑)。本能に刺さるのかな? この前のビルボードライブでも「Take It Back」がすごく盛り上がったんですよ。僕もウェッサイが好きで、やってみたかったんです。ゴリゴリのじゃなくて、夏フェスに合いそうな余裕ある雰囲気の。

──Losさんのラップ、めちゃくちゃカッコよかったです。

「Show Me The Money」(韓国のヒップホップオーディション番組)に出ていたのを観て、Losの音源は前からチェックしてたんですよ。彼、見た目はイカついけど、実際は超優しいナイスガイでした。Zoomで何回か打ち合わせした程度ではあるけど、ものすごい人格者だなと思いましたね。

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方言の馴染み方、“歌のグルーヴ”の在り処

──7曲目「スーサイド:) feat. 向井太一(Prod. by Avin, Slay, Chase)」に参加されている向井太一さんとはどのようにつながったんですか?

僕の楽曲のバンドアレンジやプロデュースもしてくれているシンガーソングライターのルンヒャンさんを通じて仲よくなりました。彼女がムカタイと懇意で、制作はもちろんラジオとかも一緒にやってるんですね。それでルンヒャンさんが去年、僕のライブにムカタイを連れてきてくれたんですよ。そこから僕も彼のラジオに呼んでいただいたりする中で、自然と一緒に曲を作ろうという話になりました。

──こんな楽曲にしたい、というイメージはありましたか?

R&Bみたいなリズム感のある曲を関西弁で歌いたいと思いました。あまりゴリ押しにはならない程度の。方言って、リズム感のある歌と馴染むんですよね。ちょっとジャンルは違うけど、藤井風さんとかもそう。あれが標準語だったらかなり違う雰囲気になると思うんですよ。

──あー、その視点は面白いですね。

けっこう分析癖があって(笑)。日本語って1つの音符に1文字しか入らないけど、英語や韓国語は言葉と言葉の間に音があるんですよ。似たようなことを日本語でやるにはけっこういい塩梅を見つけないといけなくて、やりすぎるとコテコテになっちゃう。「スーサイド:)」はその研究結果みたいな感じで、僕は関西人だから、ふわりと言葉を乗せることを意識しました。ムカタイは福岡の人なので、彼のスタイルでやってもらって。案の定、最高の楽曲に仕上がりましたね。

──分析癖のあるYOUYAさんは、“歌のグルーヴ”というのは、どこに潜んでいると思いますか?

自分に関してはけっこう自然にグルーヴを意識しちゃってるんで、逆にグルーヴをなくして歌うほうが難しいというか、できないんです。日本ではカラオケがすごく人気で、「どこまで高音が出るか」みたいなテレビ番組もありますよね。あれはあれでいいと思うけど、僕は音程と同じくらい歌うときにリズムを重視すべきだと思う。そういう意味でグルーヴが潜んでいる場所は、さっきも少し言ったけど、文字と文字の間の発音だと思います。ミュージカルで英語の曲を日本語にして歌うと、同じ情報量が入らないんですよね。それは韓国語の曲を日本語で歌ったときにも思いました。だから日本語の歌で英語や韓国語と同じリズムを作るのは難しくて、独自のスタイルを編み出さないといけない。日本語の場合、発音しすぎないってのはポイントかもですね。歌のグルーヴは玉置浩二さんがものすごいなと思います。

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松下優也とYOUYAがクロスオーバーする瞬間に向けて

──YOUYAさんが共感する日本のアーティストはいますか?

好きな作品はたくさんありますけど、いないんです。どこにも属してないというか。俳優しながら、海外を意識した音楽活動もしてる人は少ないし。まったく別のジャンルだったら、庵野秀明さんに共感します。やりたいこと、形にしたいことを常に追求しているので。庵野さんのイメージを形にしてくれる超優秀なチームもいてうらやましい。だけど、僕にも今素晴らしいチームができつつありますし、もっともっと成長していきたいです。

──最後にYOUYAとしての目標を教えてください。

細々とした目標はたくさんあります。「こういう会場でライブがやりたい」とか、「この人と一緒に曲を作りたい」とか、「こういう演出をしてみたい」とかね。でもそれ以上に大事なのは自分が何をしたいのか、それをどう見せたいのかわかった状態で走り続けたいということですね。そもそもYOUYAとして活動を始めてすぐにコロナ禍になってしまって。ようやくコロナ禍がひと段落したので、僕としては「これから」という感覚なんです。

──なるほど。

音楽業界の人たちに俳優の話をしてもすべてを理解してもらうことはできないし、逆もまた然りなんです。つまり僕がやりたいことを本当の意味で理解できるのは僕1人。今後もっともっと売れていって、いつか「松下優也」と「YOUYA」がクロスオーバーする瞬間に自分がどうなってるのか楽しみですね。そのためにも妥協せずに作品を作っていきます。

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プロフィール

YOUYA(ユウヤ)

俳優・松下優也のアーティスト名義。松下は2008年にソロアーティストとしてデビューし、2015年から2020年までボーカルダンスグループ・X4のメンバーとして活動した。2020年、YOUYA名義で活動をスタート。翌2021年にEP「OVERTURE」をリリースし、千葉・舞浜アンフィシアターでワンマンライブを開催した。33歳の誕生日である2023年5月24日、YOUYAとして初のアルバム「20230524」をリリース。2022年には松下優也としてカバーアルバム「うたふぇち 伝わりますか」を発表している。