ナタリー PowerPush - やなぎなぎ

野心むき出しのド・ロックで「ヨルムンガンド」の世界を彩る

「ラテラリティ」と「Ambivalentidea」のテーマは似通っている

──前回のインタビューで、「Ambivalentidea」では「ヨルムンガンド」の世界観をベースにスピンオフ的な物語を描いてみたとおっしゃっていました。でも、今回の歌詞はちょっとアプローチが違います。

前回は作品との関連性を一番に考えて書いてみたし、今回ももちろん作品とも絡めているんですけど、それともうひとつ「やなぎなぎの曲」として独立して聴けることも以前以上に意識してみたんです。実は「Ambivalentidea」とテーマは似通っているんですけど、そのテーマを別の視点から見てみることで「『ヨルムンガンド』のエンディングテーマ」という意味では対になりつつも、私らしさも出せるのかなって。

──そのテーマとは?

「対比」ですね。前回は曲の中で別の物語を作り上げるくらいに「ヨルムンガンド」の物語に入り込んで、しかも具体的に人と神という言葉を出しながら矛盾するふたつの何かを対比させてみたんですけど、今回は特定の視点に立った物語を作ってはいなくて。その対比や矛盾のある世界、「ヨルムンガンド」であれば「世界平和のために武器を売る」という世界に生きる人の心理を描写してみました。

──確かに「半分」「片方」というフレーズが大きなキーワードになってますもんね。詞の主人公が自分とは正反対というか、自分が持ち得ない「もう半分」「もう片方」の考え方や心情と自分の考え方や心情を対比させた上で、そのもう半分に憧れる内容になっています。

それが「ラテラリティ」っていうタイトルにもつながっているんですよ。左右対称の器官の片方がもう片方よりも優れている状態を指す言葉なんですけど、右脳と左脳のうち、右脳が発達している人はブッ飛んでる人が多いなんて言われがちじゃないですか(笑)。芸術家肌というか。自分には何も取り柄がないと思っている人が、ブッ飛んだ人に憧れる。そういう気持ちって私にもあるし、「ヨルムンガンド」のヒロインのココもかなりブッ飛んでいると思ったので、だったらそういうブッ飛んだ世界を見ている人の詞を書いてみようかな、って思ったんです。

──作詞はスムーズでした?

結構悩みましたね。前作の「Ambivalentidea」のときは(作編曲のbermei.)inazawaさんの幻想的な楽曲に負けないように、言葉選びにこだわったんですけど、今回は「ヨルムンガンド」の世界に触れた人の心理をかなり直接的な言葉で描写するという、また別の作業で。人の気持ちを扱うだけに軽くならないようにというか、より深みを出すためにはどうすればいいのかっていうことを慎重に探っていった感じでした。

カギカッコの中はブッ飛んでいる人の心の中にある言葉

──歌詞カードを見ていて面白いなと思ったのが、一部カギカッコで括ってあるフレーズがあって、そこだけ詞の世界の語り手が変わりますよね。

カギカッコの中は、カギカッコなしのところで「君」と呼ばれている人、つまり憧れられているブッ飛んでいる人の心の中にある言葉ですね。

──その割に歌っていることは「僕は僕だけの国に逃げ込んだ」「遺した悲鳴を閉じ込める箱を開く勇気も無い」と、あんまりブッ飛んでませんよね?

ええ。実際そういうもののような気がするんですよ。周りから見たらブッ飛んでるように見えたところで、その人だってその人なりの悩みがあるし、ブッ飛んでるがゆえに周囲の人から少し距離を置いていたりして「なんで自分の周りには人がいないんだろう?」なんて思ったりもすることもあるでしょうし。

──この曲が「ヨルムンガンド」の世界観に寄せつつも「やなぎなぎの曲」であることも意識して制作されたということは、ご自身もこの「僕」のように「周りからは私のことがそう見えるかもしれないけど、全然違うよ」っていう気持ちになることがあると?

「違うよ」って否定するほどではないものの、ほっとかれたいときはありますね(笑)。あと、私の実像と皆さんの思うやなぎなぎ像が結構違っていて「あれっ!? 私、みんなとズレてる?」って思う瞬間もあるし。それとは逆にカギカッコなしのほうの視点……さっきお話したように「僕」やココみたいな生き方や考え方は私にはできないから、そういうブッ飛んだ人やいい意味で人とはズレている人に憧れたりすることもあります。

ニューシングル「ラテラリティ」 / 2012年11月7日発売 / 1260円 / ジェネオン・ユニバーサル / GNCA-0247
ニューシングル「ラテラリティ」
収録曲
  1. ラテラリティ
  2. 真実の羽根
  3. link
  4. ラテラリティ(instrumental)
  5. 真実の羽根(instrumental)
  6. link(instrumental)
「ラテラリティ」発売記念イベント
  • 2012年11月10日(土)東京都 アキバ☆ソフマップ1号店 8Fイベントスペース
    OPEN 11:30 / START 12:00
    内容:ミニライブ+サイン色紙プレゼント
  • 2012年11月10日(土)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
    OPEN 15:30 / START 16:00
    内容:ミニライブ+サイン色紙プレゼント
  • 2012年11月11日(日)大阪府 タワーレコード難波店
    OPEN 12:30 / START 13:00 
    内容:ミニライブ+サイン会
  • 2012年11月11日(日)大阪府 TSUTAYA EBISUBASHI
    OPEN 16:00 / START 16:30
    内容:ミニライブ+サイン会
  • 2012年12月8日(土)茨城県 WonderGOO守谷店 GOOst
    START 14:00
    内容:ミニライブ&サイン会(ミニライブ終了後)

参加方法などの詳細はやなぎなぎオフィシャルサイトにて確認を。

やなぎなぎ

関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーソロデビュー。同曲はオリコンウィークリーチャート11位にランクインした。6月にはテレビアニメ「ヨルムンガンド」のエンディングテーマを含む2ndシングル「Ambivalentidea」をリリース。11月にはテレビアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のエンディングテーマを収録した3rdシングル「ラテラリティ」を発表する。