ナタリー PowerPush - やなぎなぎ

野心むき出しのド・ロックで「ヨルムンガンド」の世界を彩る

やなぎなぎが3rdシングル「ラテラリティ」を11月7日にリリースする。リードトラック「ラテラリティ」は前作「Ambivalentidea」同様、テレビアニメ「ヨルムンガンド」シリーズの新エンディングテーマに抜擢されたナンバー。しかし、その肌合いは大きく異なる。スケール感のあるアブストラクトサウンドが特徴的だった「Ambivalentidea」に対し、「ラテラリティ」はやなぎの言葉を借りるなら「BPM200超えのド・ロック」。ヘビーなリズム隊と高速ハードロックギターにジャジーなコード感が特徴的なピアノが複雑に絡み合う。

「ラテラリティ」はやなぎのディスコグラフィの中でもかなり異質かつ野心的な1作になっている。そこで今回ナタリーではやなぎを直撃し、会心の意欲作の誕生秘話を訊いた。

取材・文 / 成松哲

完成形の見えない音楽を作ってみたかった

──今回リリースされる「ラテラリティ」を初めて聴いたのは「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」の放送開始時だったんですけど、ホントにビックリしました。

ですよね(笑)。

──10月初旬、ジャケット写真を先行公開したときにやなぎさんご自身が「今回はなんとBPM200超えのド・ロックです」というコメントを出していたことを知ってはいたんですけど、それでも実際に聴いたときにはやっぱり意表を突かれました。1stシングル「ビードロ模様」とも、2nd「Ambivalentidea」とも違う、この「BPM200超えのド・ロック」というサウンドを選択した理由は?

「ヨルムンガンド」っていう作品の世界観に沿わせてみた結果、ああいうサウンドになったっていう面もあるんですけど、もうひとつ、私の中に「冒険してみたい」という気持ちがあって。自分らしさを出しつつも、これまでとは全然違う感じ、面白い攻め方を見せられたらいいな、と思っていたんです。あと、せっかく面白く攻めるなら、私が今まで書いたことのない、歌ったことのないジャンルに挑戦したほうがいいだろうなとも思っていて。やったことのあるジャンルだと、音源が届いたときにある程度完成形が見えるんですけど、それは面白い攻め方じゃないので、完成形の見えない音楽を作ってみたかったんです。

──では、制作に入る際にはどんなサウンドになるのか、ご自身も全くわかっていなかった?

ええ。

──ただ、さすがに作編曲の藤田淳平さんに「完成形の見えない音楽をお願いします」というオーダーを出すわけにはいかないですよね?

あはははは(笑)。藤田さんには「エンディングテーマなんだけど、オープニングっぽい曲を」ってお願いしてみたんですよ。

──えっ? エンディングテーマなんだから、物語の終わりにふさわしい曲を歌えばいいじゃないですか。

前回のエンディングテーマだった「Ambivalentidea」はしっとり系、“情感エンド”っていう感じだったんで、コントラストを付けたかったんですよ。なので藤田さんには「こういう曲がいいな」っていう希望を箇条書きにしたメモと一緒に「今回は放送の最後にハッとする要素がほしいんです」というオーダーを出させていただきました。

私の声や歌詞が乗れば「違和感がないのに面白い」攻め方ができる

──やなぎさんが藤田さんに伝えた「こういう曲」とは?

そのメモには具体的にアーティストさんのお名前を出しちゃったんですよ。「東京事変寄り」っていう感じで。東京事変っぽいサウンドなんだけど、もっと私の作風に寄せた感じというか、「キャッチーなんだけど独特の展開があって」っていう感じのざっくりとした無理な注文をしてみました(笑)。

──ということは、藤田さんの目にはやなぎなぎという人が「BPM200超えの高速ハードロックとジャジーなピアノが絡み合うサウンドの似合う人」に見えたと?

そうみたいですね(笑)。ただ、そのイメージってそんなに間違ってはいないとは思っていて。ストレートなロックなんだけど、オシャレなピアノが入ってる感じは「ヨルムンガンド」の世界観にはもちろん合っているし、「ストレートなハードロックでは終わらない独特な感じは確かに私っぽいな」っていう印象も受けましたから。デモをもらった段階から、曲調的には皆さんビックリするかとは思うんですけど、このトラックに私の声や歌詞が乗れば「違和感がないのに面白い」っていう攻め方ができるだろうなっていう自信はありましたね。

──実際、1stシングル、2ndシングルと連続して聴いたときに「あっ、同じ人の曲だ」と認識できる上に、明らかに新しくもあり、カッコよくも仕上がっています。この「やなぎなぎらしさ」と「面白い攻め方」のバランスってどうやって取ったんですか?

やっぱり歌い方ですね。藤田さんとレコーディング現場でいろいろやりとりもしたんですけど、基本的には私が考えていた歌い方を尊重していただけたので、私っぽい楽曲になったし、以前からのファンの方にも安心して聴いていただける感じになってるんだと思います。

──やなぎさんが考えていた歌い方とは?

すごくテンポの速い曲なので、普通なら声を張り上げて歌うのかもしれないんですけど、それだと「誰が歌っても……」という感じになっちゃうと思うので、私の声を活かせる方法を探したというか。ロックなんだけど浮遊感のある声が乗ってるとすごく面白いかな、とは考えていましたね。

ニューシングル「ラテラリティ」 / 2012年11月7日発売 / 1260円 / ジェネオン・ユニバーサル / GNCA-0247
ニューシングル「ラテラリティ」
収録曲
  1. ラテラリティ
  2. 真実の羽根
  3. link
  4. ラテラリティ(instrumental)
  5. 真実の羽根(instrumental)
  6. link(instrumental)
「ラテラリティ」発売記念イベント
  • 2012年11月10日(土)東京都 アキバ☆ソフマップ1号店 8Fイベントスペース
    OPEN 11:30 / START 12:00
    内容:ミニライブ+サイン色紙プレゼント
  • 2012年11月10日(土)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
    OPEN 15:30 / START 16:00
    内容:ミニライブ+サイン色紙プレゼント
  • 2012年11月11日(日)大阪府 タワーレコード難波店
    OPEN 12:30 / START 13:00 
    内容:ミニライブ+サイン会
  • 2012年11月11日(日)大阪府 TSUTAYA EBISUBASHI
    OPEN 16:00 / START 16:30
    内容:ミニライブ+サイン会
  • 2012年12月8日(土)茨城県 WonderGOO守谷店 GOOst
    START 14:00
    内容:ミニライブ&サイン会(ミニライブ終了後)

参加方法などの詳細はやなぎなぎオフィシャルサイトにて確認を。

やなぎなぎ

関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーソロデビュー。同曲はオリコンウィークリーチャート11位にランクインした。6月にはテレビアニメ「ヨルムンガンド」のエンディングテーマを含む2ndシングル「Ambivalentidea」をリリース。11月にはテレビアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のエンディングテーマを収録した3rdシングル「ラテラリティ」を発表する。