ファンの声が不可欠だった「アイドル」のステージ
──「アイドル」では、歌い終えたあとにLEDにロゴが投影され、ジャケットが完全再現されました。「アイドル」がオープニング主題歌に使用されたテレビアニメ「【推しの子】」で星野アイが立てなかった東京ドームの舞台を再現しているかのようで、鳥肌が立ちました。
Ayase まさにその通りです。僕らにとって「アイドル」は、ここまで連れてきてくれた大事な曲ですし、いつもライブでものすごい盛り上がりを作ってくれるので、一番の山場にしたいと思っていました。
ikura ジャケットをしっかり再現するために、カメラマンさんがすごく細かくバランスを調整してくれていました。
──ドーム公演の4日後にちょうどマンガ「【推しの子】」が完結を迎えたのも、運命的なタイミングでしたね。「アイドル」を歌う前にikuraさんは「全員の声で完成する曲です」とおっしゃっていましたが、そこにはどんな思いが?
ikura 「アイドル」はREAL AKIBA BOYZの皆さんが声を入れてくださって完成した曲ということもありますし、楽曲のモチーフにあるアイドルの活動にはファンの存在が必要不可欠で、YOASOBIがこれまでライブで披露してきた「アイドル」も、ファンの皆さんの声があってこそ完成していた感覚があったんです。「ここは全員が絶対に声を出すところだぞ」という意気込みを込めて、歌う前に伝えさせてもらいました。歌いながら、客席の皆さんの気合いをすごく感じられてうれしかったですね。
──オーディエンスの熱気には、ライブ全編を通して感動させられたんです。スマホでの静止画撮影がOKなので皆さんたまにスマホを構えるけれど、すぐに下ろす人が大半で、「しっかりと目に焼き付けるぞ」という熱量が伝わってきました。ステージからも客席の熱は感じましたか?
ikura すごく感じました。お客さんがこれだけ「全力で楽しむぞ」というモチベーションで来てくれるライブってほかにあるのかな?と思うくらい。老若男女の皆さんがそういうふうに熱量を持って臨んでくれるのが本当にうれしかったです。それは表情や、聴いているときの佇まいからも伝わってきました。ライブ前後にSNSを見ていても、「これだけのモチベーションを持ってライブに来てくれるんだ」と感動しましたね。
最初は怖かった気球の演出、約5万個の制御型LEDライト“フリフラ”の光に感動
──気球に乗って登場する演出では、きっとそうした観客の表情がよりくっきりと見えましたよね。
Ayase みんないい顔をしていましたね。5万人から手を振られることなんてなかなかないから、いい経験でしたし、すごく楽しかったです。少し裏話をすると、最初から何かしら飛ぶ演出を絶対入れようとは思っていて。ikuraにハーネスで飛んでもらう案や、ちょっと不気味なぬいぐるみとikuraが手をつないで風船で浮かんでいるアイデアなども考えていたんです。でも議論を重ねた結果、最終的に気球でいこうという話になりました。
──ちなみにikuraさんに比べて、Ayaseさんの気球は高度が低かったですが……。
Ayase あれは僕が怖かったからですね(笑)。でも、怖くなくてもそうしていたと思います。
ikura より多くの人の近くに行けるもんね。自分から気球に乗りたいと言ったものの、実は私も高いところは苦手なんです(笑)。最初に乗ったときが一番怖かったけど、お客さんの顔を見る余裕が出てきたら、意外と大丈夫になってきました。
Ayase 気球のデザインにはめちゃくちゃこだわりました。あんなに細かいディテールで作れると思っていなかったので、こだわり続けました。GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEさんが時間をかけて、いいものをデザインしてくれてよかったです。
──ちなみに「超現実」ではスマホライトやペンライトの持ち込みを禁止して、フリフラ(制御型LEDライト)を全員に配布していましたよね。統一感のある美しい光の海が広がっていました。
Ayase フリフラは絶対に使いたかったんです。Coldplayのドーム公演にゲストアクトとして出演させてもらったときに、うまくフリフラを使っていたのがとても印象的で。照明の色から角度まで演出をものすごくこだわって作ったので、ドーム公演全体で統一感を持った演出を行うという意味で、今回はフリフラにしました。
ikura ドームで約5万人がそろった光を放つ景色は本当にきれいで、圧巻の景色でした。
今後はギターボーカルとしての面も磨き続けたい
──アンコールの「舞台に立って」ではikuraさんがエレキギターをかき鳴らしながら歌いましたね。“NHKスポーツテーマ2024”として書き下ろされた楽曲ですが、「そうだ夢に見ていた未来に 今私は立っているんだ」という歌詞がお二人にぴったりと重なり、とてもエモーショナルな気持ちになりました。
Ayase もちろんアスリートの皆さんに心を寄せて作った曲なんですが、実はこのドームの舞台を見据えて作った部分もあるんです。書いているときにはドームに立つことが決まっていたので、僕の思うことはもちろん、ikuraが思っているであろうことも曲に乗せたいと考えていました。特にボーカリストは、1人で矢面に立つ存在。そう考えたときから、この曲は絶対に、ikuraにギターをかき鳴らしながら歌ってほしいとイメージしていたんです。ドームのアンコールでやることもその時点で決めていました。本番はいろいろな思いが込み上げてきて、本当に泣けました。
──ikuraさんはこれまでにバンドでギターを弾いた経験はあるんですか?
ikura いえ。それどころか、YOASOBIでギターを弾く姿を見せること自体が初めてで。ギターを持つという行為は、私にとっては10代からずっと、幾田りらとして歌うときのものだったんです。本番では、幾田りらという人間がikuraとしっかり融合したうえで、ikuraとして歌っている感覚があって。これまでのすべての日々があって、今の姿があるんだなって……自分でも映像を観返したときにすごく感動しました。
──幾田りら名義で演奏するのはアコースティックギターですよね。もともとエレキギターも弾いていたんですか?
ikura エレキは初めてなので、鳴らし方から全部レッスンしていただいて、死に物狂いで練習しました。しかもあのギターは、Ayaseさんが今年の誕生日にプレゼントしてくれたものなんです! 絶対にカッコよくかき鳴らさねば、という気持ちでいっぱいでした。
Ayase ちなみにあのギターにはボタンを押すと光るギミックが搭載されているんですけど、ikuraがそれを光らせることが、ピンスポット点灯の合図になっていました(笑)。
ikura (スイッチを動かす動作を再現するように)「ikura、OKです!」って(笑)。今後も「舞台に立って」を披露するときはギターを弾く予定なので、今後はギターボーカルとしての面も磨き続けられるよう、がんばりたいです!
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放送では「YOASOBIの一挙手一投足をしっかり見て」