miwa×幾田りら|時代を彩るシンガーソングライター対談

今年デビュー15周年を迎えたmiwaがベストアルバム「miwa」を発表した。

miwaは2010年3月にシングル「don't cry anymore」でメジャーデビュー。2015年に女性アーティストでは史上初めてギター1本の弾き語りで日本武道館公演2DAYSを行うなど、シンガーソングライターとしてシーンをけん引してきた。そんなmiwaに憧れ、その背中を追ってきたシンガーソングライターがいる。YOASOBIのボーカリスト・ikuraとしても活動している、幾田りらだ。幾田は14歳の頃、路上ライブでmiwaの代表曲「ヒカリへ」を歌唱していた。miwaの歌をカバーしていた新世代のアーティストが、今やシンガーソングライターとして数々のテレビCMやドラマの楽曲を手がけるなど活躍している。

ベストアルバム「miwa」の発売を記念して、miwaと幾田は初めて顔を合わせ、「ヒカリへ」のコラボ歌唱動画を撮影。その収録前に2人の対談が実現した。憧れの存在から、音楽業界で肩を並べて一緒に進んでいく存在へ。シーンの第一線を担うシンガーソングライターとして、2人はじっくりと言葉を交わし合った。

取材・文 / 森朋之撮影 / 梁瀬玉実

どうしてこんなに心を揺さぶられるんだろう?

──miwaさんと幾田りらさんは今日が初対面だそうですね。このあと、「ヒカリへ」のコラボ動画を撮影されるそうで。

幾田りら そうなんです! miwaさんと一緒に歌わせてもらえる日が来るなんて、本当にうれしすぎて。ありがとうございます。

miwa こちらこそ、ありがとうございます。「一緒に歌えたらいいな」と思っていたんですけど、まさか本当に実現するなんて!という感じです。

──幾田さんがmiwaさんの音楽と出会ったのはいつ頃ですか?

幾田 中学1年くらいですね。「ヒカリへ」や「片想い」もそうですけど、とにかくmiwaさんの曲をたくさん聴いて、カラオケで歌って。中学3年のときにソニーミュージックのオーディションを受けたんですけど、1次審査で「don't cry anymore」を歌わせていただいたんです。

miwa え、そうなんですか!?

幾田 はい。審査してくださったスタッフの方から「『don't cry anymore』の歌詞と、(幾田の)『負けたくない』という思いが重なっていて、印象に残りました」みたいなことを言ってもらって。miwaさんの楽曲があっての今だなと思います。

miwa すごい。鳥肌が立ちました。私の楽曲を歌ってくれた幾田さんが、世界に羽ばたくアーティストになっていくのを現実に見ていて……感慨深すぎて、どうしよう?

幾田 いえいえ、そんな。miwaさんの楽曲を歌うことで、自分自身の心情、言葉にならなかった気持ちを重ね合わせて、吐露していた部分もあったと思うんですよね。例えば片思いをこじらせていたときに「片想い」をカラオケで熱唱して発散したり(笑)。ソニーのオーディションのときも、歌詞の強さ、メロディの強さを通して、自分の歌声をアピールしました。ソングライターとしてもすごく影響を受けています。

miwa ありがとうございます。すごくうれしいです。

miwa

miwa

幾田 miwaさんの曲を聴いて「どうしてこんなに心を揺さぶられるんだろう?」と深堀りして、「心の深いところに届くストレートな歌詞を書かないといけないんだ」と思ったんです。当時は多感な時期で、自分の気持ちをストレートに書くのが恥ずかしかったり、オブラートに包んで遠回しな表現にしたりすることが多くて……私ばっかりしゃべっちゃってすみません!

miwa いえいえ(笑)。でも、私も自分の気持ちをストレートに書けなかったです。デビューする前も、デビューしたあとも。それこそ「片想い」や「めぐろ川」などで初めて「愛してる」「好きなんです」という言葉を書いたんですよ。それは私にとってすごい挑戦だったんですけど、「勇気を出して書いてよかったな」って今初めて思いました(笑)。自分で歌うことを考えると、どうしても「恥ずかしい」と思ってしまうし、カッコつけたい気持ちもあったんですよね、その頃は。

幾田 自分の気持ちをさらけ出すのが怖かったりしますからね。デビューしてからも、ソロの楽曲についてディレクターさんと話をする中で「自分の心に正直に、まっすぐ伝えることをベースに置いて曲を書かないと」と言われて。そのときも改めてmiwaさんの楽曲を聴いて、「本当にそうだな」と実感しました。

シンガーソングライターの課題

miwa 幾田さんの曲、私もすごく好きです。「スパークル」や「レンズ」もそうですけど、YOASOBIとはまた違う、幾田りらさんの素の部分が感じられるのがすごくいいなって。

幾田 え、本当ですか? うれしいです。

miwa 人となりが感じられる歌声も素敵で、心地いいし、癒されるし、キュンとくる。作詞作曲はどんなふうにやっているんですか?

幾田 曲を書くときは、自分の中にあるストーリーを引き出してくることが多いですね。日常の中で思ったこと、心が震えた瞬間のことを書き留めておいて、そこから引っ張ってきて曲にしています。

miwa 私は実体験からは作らないタイプなんです。物語を紡ぐというか、シチュエーションやエピソードを自分で作ってから書くことが多いです。

幾田 そうなんですね! 私、今悩んでいることがあって。自分のストックを元に曲を作ってると、だんだん書くことがなくなってくるんですよ。「このテーマはもう書き切ったしな」ということもあったり。実体験ではなくて創作で曲が書けるようになったら強いだろうなと思って……タイアップ曲の場合は、テーマを踏まえて、自分がストックしている感情たちの中から近いものを選んで書くという感じなんですけど。

miwa 私もそうで、共感や実感が伴うストーリーで曲を作るようにしています。あとは曲を書くとき、頭の中にミュージックビデオが先にある場合もあって。先に映像やコマ割りをイメージして、そこに歌詞とメロディを乗せてくというか。1枚の写真を元に、そこから思い浮かぶシーンを曲にすることもありますね。

幾田 すごく勉強になります。今、本当に悩んでるところなので……。

miwa わかります。いっぱい書いていると、テーマが重なってきますからね。

幾田 「これがシンガーソングライターの課題なのかも」と思っています(笑)。

幾田りら

幾田りら

miwa しかも幾田さん、お忙しいですからね。ライブやいろんな活動がたくさんあって、1人の人間として過ごす時間が少ないと、創作する気持ちが湧いてこないのもすごくわかります。

幾田 やっぱりそういう経験もされてますか?

miwa そうですね。普通の日常が少なくなると、人間味がなくなってくるというか。タイミングによっては「休みをください」って事務所に要求してもいいと思いますよ……って、なんてことを言う先輩だ(笑)。

幾田 ありがたいです(笑)。生み出すことも仕事なので、そこが枯渇しちゃうと活動も滞りますからね。

miwa そうなんですよ。自分の感情が自然に動く瞬間がないと、どうしても創作に影響が出るので。私は旅行が好きなんですけど、いろんな土地に行っておいしいものを食べたりしていると、「ああ、生きてるな」という気持ちになるんですよね。あとはゆっくりと映画を観たり。ライブにもよく行くんですけど、素敵なライブを観ると自分のモチベーションも上がるし、意欲も湧いてくるんですよね。

幾田 確かに私もライブを観ていて「曲を書きたい」という気持ちになります。日常の中で心が揺れる瞬間を大事にしないとダメですね。

miwa ふとした瞬間にそうなるのが一番いいんですよね。インプットしようと意識しすぎてもよくなくて、ちょっと気が緩んでるときに何かを感じることが大事だと思うので。そういう時間ってありますか?

幾田 家族と過ごす時間はそうですね。あと、自然がある場所に行くのが好きなんです。風の音に耳をすませたり、そういう時間を作ることで心が落ち着いてきて。忙殺されると「締め切りがあるから曲を書かなくちゃ」となるので、気を付けようと思います(笑)。

miwa それも現実ですね(笑)。私は人とコライトするようになってから、曲作りがさらに楽しくなったんです。海外の作家の方々が来日したときに、コライトキャンプに参加したのが最初で。そのときに知り合った人たちに会いにロサンゼルスに行って、そこでも一緒に曲を作って。幾田さんもこの先、たくさんチャンスがあると思います。

幾田 ぜひやってみたいです!

路上ライブで歌った「ヒカリへ」

──幾田さんは14歳のときにmiwaさんの「ヒカリへ」を路上ライブで歌っていたんですよね。YouTubeに上がっている動画が話題になりました。

幾田 昔の動画が残ってるのは、本当に恥ずかしいです……。

miwa (笑)。どうして「ヒカリへ」を選んでくれたんですか?

幾田 ギターの弾き語りを始めて、大好きな「ヒカリへ」で練習していたんです。当時はオリジナル曲もあまりなかったので……あの動画、実は母が撮影してくれたんです。

miwa そうなんですね!

幾田 路上ライブをやろうと思ってると言ったら、「心配だから、ついていく」って(笑)。

miwa ご家族も応援していたんですね。路上ライブをやろうと思ったのはどうしてですか?

幾田 17歳でデビューしたいと思っていたんです。YUIさん、家入レオさんが17、18歳でデビューしていたのもあって、その年齢が「女性シンガーソングライターが最初に花開くとき」みたいな印象を持っていて。14歳のときに「あと3、4年でデビューするために動き出さなきゃ」と路上ライブをやったり、ライブハウスに出たりし始めました。

miwa 私もまったく一緒です。高校生のうちにデビューしたかったんですけど、間に合わなくて(笑)。

左からmiwa、幾田りら。

左からmiwa、幾田りら。

幾田 そこで共感してもらえるのは、すごくうれしいです(笑)。高校のときは「走り出すのが遅かった」という焦りもありました。miwaさんはどうでした?

miwa まずは自分の歌を人に聴いてもらおうと思って、下北沢LOFTのライブに出させてもらったり、あとは沖縄で路上ライブをやったり。

幾田 沖縄ですか?

miwa 祖母の家が沖縄だったんですよ。申請すれば路上ライブができる場所が北谷町にあって。もちろん人は集まらないし、お買い物や映画を観に来た人たちがたまに止まってくれるくらいでしたけどね。

幾田 路上ライブは度胸試しみたいなところもありますからね。