音楽ナタリー PowerPush -和楽器バンド
「今の日本」を伝えたい! メンバー8人の壮大な構想
尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓といった和楽器とロックバンドを融合させた気鋭の集団、和楽器バンド。彼女たちがミュージックビデオ「華火」をDVD / Blu-rayでリリースした。
ナタリーではメンバー全員にインタビューを敢行。なぜこの編成になったのか、どうして異ジャンルを組み合わせたのか、映像シングルというフォーマットの理由は? 初登場の今回はあらゆる疑問を8人に投げかけるとともに海外進出を含む今後の展望を聞いた。
取材・文 / 鵜飼亮次
必然的なフォーメーション
──こうやって8人全員集まると大所帯だなって改めて思いますね。皆さんが集まったきっかけを教えてください。
鈴華ゆう子(Vo) もともと私は詩吟をずっとやっていて、琴のいぶくろ聖志くんと尺八の神永大輔くんとユニットを組んで演奏してたのが基盤になっているんです。そのうち詩吟だけじゃなくてポップスもやってみようって話になって。それでキャッチーでスッと聴いてもらえるようなサウンドにするにはギター、ベース、ドラムっていうバンドの要素が私の中でマストだと思って。
──そしていわゆるロックバンドのメンバーを集めたと。
鈴華 はい。私の周りにいるアーティストに「こういったものが作りたい」って声をかけて、集まったメンバーと最初の動画「月・影・舞・華」を作りました。ドラムの山葵くんはニコニコ動画のイベントで会って。彼はいつも上半身裸で背中には漢字をペイントしていて「面白いなあ」って思ってたんです。ベースの亜沙くんは「吉原ラメント」っていう、すごく売れた彼のボーカロイド曲がもう和を感じさせる曲じゃないですか。あと町屋さんは動画の中で浴衣を着て能面をかぶってギターなのに和風だから「もう彼しかいない」って(笑)。
──町屋さんたちは声をかけられたとき和楽器と聞いてどう思いました?
町屋(G) 僕はずっとロックギターをやっていますが、クラシックも聴くし、ジャズも演奏するし、過去に吹奏楽もやってていろいろな音楽に興味を持っていたんです。自分がたまたまやってる楽器がギターなので、さまざまな国の音や楽器をギターで表現できないかと模索していて。ロックだけやってたら和楽器の人と知り合うきっかけはないし、一緒にやれたら光栄だと思いましたね。
亜沙(B) 僕は単純に面白そうだなって感じで、二つ返事くらいでやるやる!って(笑)。
鈴華 みんなそうですね、すぐにやる!って言ってくれた。
山葵(Dr) 「これ売れるぞ」とかじゃなくて、新しい動きに対して「面白そう」ってみんなが思う。好奇心でバンドが成り立った気がしますね。
さまざまな和楽器との出会い
──そもそも和楽器に触れる機会ってなかなかないと思うんですが、和楽器奏者の皆さんはどういうきっかけで始めたのでしょうか。
いぶくろ聖志(箏) 僕はもともとベースをやってて、アメリカの音大にジャズを勉強しに行こうと思ってたんです。でも目指しながら「なぜアメリカで学ぶのか?」ってふと疑問に思って。日本人としてアメリカに行って、そこで吸収したものだけで日本でプロとして活動するってちょっと違うなと。それで高校にたまたま箏曲(そうきょく)部があったので「ひとまず日本で日本のことを勉強しよう。アメリカに日本の音楽も伝えた上で向こうの音楽を持って帰ろう」って入部したんです。そこで僕は琴にハマってしまって。琴って演奏するその日の気分で出てくる音が違うというか、音がすごくダイレクトに返ってくるんです。この直接的な感じが自分の武器としていいなって思い、高校出てからは琴の奏者としてプロで活動しています。
黒流(和太鼓) 僕は実家がアマチュアの太鼓チームで、いつの間にか自分も叩けるようになってたんです。でも僕は全然好きじゃなくて(笑)。っていうのも当時は和楽器がバカにされることがとても多くて、まあモテない(笑)。なので高校時代にベースを始め、バンドで来日アーティストの前座もやるようになったんですけど「自分の技術ではかなわない」と感じてしまった。じゃあ自分には何ができるだろうって考えたとき、小さい頃からイヤイヤやってた和太鼓があって。でも和太鼓のスタイルは好きじゃないので、やるならもっと異端な、今までにない形のものを作りたいと思って、そこから茨の道を進み始めたと(笑)。
神永大輔(尺八) 僕はテレビゲームの音楽が好きで。ゲーム音楽の中には各国の民族音楽みたいな要素が入ってるんです。その中でもケーナとかアイルランドの笛の音に興味を持ちました。それで大学に入って笛がやりたいなと思ってたら尺八のサークルがあったので「じゃあこの笛」って。そこからだんだん日本の音楽面白いなって思えるようになりました。
蜷川べに(津軽三味線) 私は小学4年生頃から三味線を始めてコンクールに出たりしてたんですけど「何かもっと面白いことをやりたいな」って思って5年前に東京に出てきました。最初は民謡の伴奏を中心にやっていたけれど、そういうのじゃなくてJ-POPに合わせてみたらどういう感じになるかなと考えていて、ボーカロイドっていうジャンルの曲を聴いて「これだったらいろんなパターンでできるな」と思って気軽な感じで動画を上げましたね。
──鈴華さんは3歳からピアノ、5歳から詩吟と詩舞を始めたとプロフィールに書いてあります。
鈴華 詩吟は趣味でしたね。うち親がピアノの先生なのでピアノをずっとやっていて、「音大に行け」ってすごく厳しかったんです。でもある日ピアノ教室の生徒さんが「詩吟と踊りやってる」って私も誘われて。ピアノの1対1のレッスンと違って踊りや詩吟はグループでお稽古するんですけど、大人から「上手だねー」とか褒められて(笑)。それがすごくうれしかったんでしょうね。それからピアノと和の世界を並行するようになったんです。ピアノは本気でやり、こっちは楽しめるものとして。でも詩吟とか踊りで賞を取れるようになって、だんだん趣味の世界から広がっていきました。
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- 通常盤 Blu-ray 1950円 / AVXD-91693
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※初回封入特典:メンバー別トレカ16種類ランダム封入
和楽器バンド(ワガッキバンド)
ボーカル、尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラムからなる8人組。個々にプロとしてアーティスト活動するメンバーが、ニコニコ動画にアップした“演奏してみた”動画などを通じて集合。2012年11月に最初の動画「月・影・舞・華」を公開し、和楽器とバンドサウンドの組み合わせなどにより好評を得る。2014年にはエイベックスからボーカロイド曲のカバー集「ボカロ三昧」をリリース。発売を記念して都内で行われた初ワンマンライブは即日完売した。そして8月27日には初のオリジナル曲となるミュージックビデオ「華火」をDVD / Blu-rayでリリース。