ファンの人たちが支えてくれてるからこそ、純粋に音楽に向き合えてる
──アルバム4曲目の「FINALIST」にはANARCHYさんが参加しています。こちらのコラボについては?
TAKUYA∞ 彼が京都、僕らが滋賀の出身で。まあ隣町同士みたいなもので、インディーズの頃から存在は知っていたんです。もともと僕はヒップホップという文化も好きだし、その中でも彼のスタイルが好きで、こちらから「一緒にやりたいな」というDMを送ったのがきっかけでした。お互い共通の知り合いもけっこういるんで、間を取り持ってもらって。
──ここでの歌詞というかリリックも、お互い思っていることが重なっていないと成立しないと思うんですね。「売れるか売れないかに恐れはない」「音楽で食うこと以外興味なし」と言い切っている。そして「α-Skill」では、音楽が本当に大好きだからこそそれが自分を卑屈にさせることがある、ということが歌われている。ある意味、今さらの質問でもあるんですが、そこまで音楽に入れ込めるのはなぜなんでしょうか? 少年期に「自分には音楽しかない!」と叫ぶのとは違い、長い経験を経ながらさまざまな大人の事情や裏側も知っているうえでこれを言えるのは、なかなかないことだと思うんです。
TAKUYA∞ それができているのは、やっぱりファンに支えられてるからだと思います、間違いなく。売れないままこれほど長くやれていたかと言われたら、たぶん無理だっただろうし。仮にファンが50人ぐらいしかいなかったとしたら、地道に活動を続けることはできていたかもしれないけど、守れていないプライドもたくさんあったと思う。だけど自分たちは、プライドのすべてを守れるぐらいたくさんの人に支えてもらえているから、全然恐れてないというか。いろんなずるいことをせずとも、いい曲さえ書いていれば評価してくれる人たちが、周りにたくさんいてくれている。純粋に音楽を好きになれる状態にさえなれれば、たぶん「FINALIST」のような考え方になるはずなんです。ただ、それは僕らだけでできることではなくて、ファンの人たちが支えてくれてるからこそ、純粋に音楽に向き合えてる。そういうのがなかったら、いろんな人と戦わないといけなくなるし。
克哉 ホントにそうだと思う。いろんな人を巻き込んで、いろんな経験をさせてもらえてますけど、それは6人だけでは到底叶わなかったはずのことなんで。
TAKUYA∞ でも、デビューする前に一瞬ヤバい空気があったよな? 音楽が嫌いになりそうな空気になって「このままいったらヤバかったんちゃう?」みたいになった頃が。とにかくその当時は、金がなくて。全員そうだったんですよ。音楽をやるのは楽しいんだけど、いつものスタジオに行こうと思うと、琵琶湖を挟んだ反対側にあったので、向こう岸に渡るのに200円かかったんですね。その200円を払うのに2円足りなくて、お姉ちゃんにもらったりしてたときもあったくらいで(笑)。
克哉 ガソリンスタンドで「10円分ください」って言ったこともありますもん(笑)。
TAKUYA∞ 音楽がいい悪いとかいう次元ではなくて、もう生きてるのが嫌になるぐらいの状況だった。そんな瞬間があったな、と最近思い出して。そんなときにうまい具合に僕らは救われたわけなんです。
──過去を振り返ってみたとき、音楽をあきらめそうになったのはその時分くらいのものですか?
克哉 あきらめそうというか、やりたいけどできないかも、という状況になってましたね。金もないし。そこで音楽に真剣に向き合えば向き合うほど、音楽にいっぱい時間を取られるし、それによってバイトもどんどんできなくなっていって。信人なんか、家のものをなんでも売ってましたからね、お金を作るために(笑)。
TAKUYA∞ だから思うのは、音楽をやってる人の中に、音楽を嫌いな人は基本的にはいないはずだってことなんです。違うことで音楽が嫌になることはあったとしても。
──そして、6人の世界が成立しているのは、ファンの支えがあるからこそ。しかもその人たちを味方に付けられた理由も音楽にある。そう考えていくと「音楽しかない」というのもとても納得できます。ところでアルバムの終盤にはインストゥルメンタルの「ANOMALY奏者」が収録されています。Anomalyというのは“変則”、“異常”といった意味の言葉ですが、やはりこのバンドにはどこか普通ではないところがあると感じます。
克哉 この曲についても、自分たちのやりたいようにやれてる、やりたいことがそのまま出せるようになっている結果だと思いますね。どの曲についてもそうですけど。周りから見れば変則的でもあるのがUVERworldだし、狙ってやってるわけではなく、いろんな意味を匂わせることができるのが、自分たちの得意なことでもあるんです。
いつか一番になりたいですね、名実ともに
──おそらくこのインタビューを読みながらアルバムを聴き、日産スタジアム公演に思いを馳せている読者もいるはずです。その2日間については現在、どんな光景を思い描いていますか?
克哉 アルバム制作に伴う作業の終了とともに、そっちに全力を注げるような感じになってきています。まず自分たちが一番すべきことは、いいアルバムを作ることだと思っていたんで。それが世に放たれる準備ができて、ようやく日産スタジアムで何をすべきか、というところに……。もちろん今までもそこには向き合ってきたんですけど、さらに多くの時間を使えるようになったので、いろんなことを考えてやっていこうという感じですね。やりたいこと、やろうとしてることはたくさんあるし。音のこともパフォーマンスの見せ方もそうですし、やっぱりちゃんとこのアルバムの世界を日産スタジアムにも届けたい。しっかり届けるための準備に時間を使おうと思っているところです。
TAKUYA∞ 僕には成功のイメージしかないですね。不安というか、一瞬ドキッとする瞬間というのはあるんですよ。だけど準備をしっかりとしきれてるので、成功する気しかしてないんです。自分たちのイメージしてる最高のライブをそのままできる、もしくはそれ以上の形でできるというのが成功だと思ってるんです。今はむちゃくちゃいい想像しかしてないですね。ただ、どれだけ想像しても、成功を実感した瞬間の感動って、想像では感じられないんですよ。それを実感した瞬間の感動っていうのはすごいですよ、やっぱり。常に驚きを伴ってますね。
──そして、その先に思い描いているのはどんな未来ですか?
TAKUYA∞ 永遠にバンドを続けること。6人で。もうそれ以外にないですね。
克哉 結局は根本に戻ってきますからね。いい曲を作る。何か1個と言われたらそれが答えになってくるし、そのために自分が何をすべきか、ということになってくる。こうしてアルバムができた今も、次を見ていい曲を作りたいし、大きなところを目指すのも、いい曲作ってライブをやるためだし。まだまだいろいろ経験を重ねて大きくなっていきたいですね。自分自身も、バンドとしても。
TAKUYA∞ いつか一番になりたいですね、名実ともに。たぶん、今の時点でも自分たちが誰かにとっての一番になれているはずだとは思うけど、まだ僕の中では一番ではないんです。
──だからこそほかの誰かに対して「α-Skill」の歌詞のような思いを抱かざるを得なくなることがあるわけですよね。
TAKUYA∞ 僕らはもう、The Rolling Stonesを抜くような年齢まで、この勢いのままバンドができれば、もしくはもっといいコンディションで続けられれば……このままそういった年齢になったときにようやく“持ってる人”に変われるというか「あいつら持ってたんだな」ということになると思うんです。今はまだ持ってなかったとしても。そうなるときまで走り続けていきたいし、いまだに長距離ランナーですね、自分らは。
ライブ情報
UVERworld premium THE LIVE at NISSAN STADIUM
2023年7月29日(土)神奈川県 日産スタジアム
UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000
2023年7月30日(日)神奈川県 日産スタジアム
プロフィール
UVERworld(ウーバーワールド)
幼馴染のTAKUYA∞(Vo)と信人(B)らを中心に滋賀出身で結成されたロックバンド。2005年7月にシングル「D-tecnoLife」でメジャーデビューを果たす。ライブハウスからホール、アリーナ、ドームまで1年を通してライブ活動を精力的に行い、2008年より毎年12月25日に東京・日本武道館でクリスマスライブを開催するなど、常に大きな注目を浴びる。2011年より男性限定ライブ「男祭り」を始め、2017年には埼玉・さいたまスーパーアリーナで約2万3000人の会場キャパシティを男性客のみで埋めるという日本記録を樹立。2019年12月に東京・東京ドームで約4万5000人の男性客を動員する「KING'S PARADE 男祭り FINAL」を行い、その日本記録を自ら更新した。2021年12月にアルバム「30」を発売。2022年8月にシングル「ピグマリオン」をリリースし、2023年7月にアルバム「ENIGMASIS」を発表した。7月29、30日に神奈川・日産スタジアムでワンマンライブを開催。2日目は男性限定ライブ「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」として行い、7万2000人の男性客を動員予定。2024年に女性限定ツアー「QUEEN'S PARTY 女祭り LIVE HOUSE TOUR 2024」を行うことも発表している。
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