UVERworld「Eye's Sentry」特集|人生の終わりなきテーマを掲げた、愛と絆の歌を紐解く

UVERworldのニューシングル「Eye's Sentry」とライブBlu-ray / DVD「UVERworld KING'S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」がリリースされた。

UVERworldにとって、2024年最初のリリースとなるこの2作。音楽ナタリーではこれらの作品を通して、彼らの現在地と本質をレビューで紐解いていく。

文 / 宮本英夫ライブ撮影 / 平野タカシ

強く鋭く、そして優しい言葉

ライブハウスに狙いを定めたツアー「UVERworld LIVE TOUR 2024」、信人(B)、克哉(G)、彰(G)の生誕ライブ、そして女性限定ツアー「UVERworld QUEEN'S PARTY(女祭り)TOUR 2024」。3つのメニューを2月から同時進行しながら驀進中のUVERworldから、またしてもヤバいブツが届いた。テレビアニメ「青の祓魔師 島根啓明結社篇」オープニングテーマを表題曲としたニューシングル「Eye's Sentry」と、昨年夏のメモリアルなスタジアムライブの模様を完全収録した映像作品「UVERworld KING'S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。どちらも圧倒的な物量と熱気で我々に迫り来る、とんでもないエネルギーに満ちあふれた作品だ。さっそく中身を紐解いていこう。

「Eye's Sentry」通常盤ジャケット

「Eye's Sentry」通常盤ジャケット

UVERworldが「青の祓魔師」と手を組めば、すさまじい熱のこもった曲になるのは、第1期オープニングテーマ「CORE PRIDE」と第2期オープニングテーマ「一滴の影響」、そして劇場版主題歌「REVERSI」の3曲で立証済みだ。この第3期オープニングテーマも、アニメサイドからただ「UVERworldにお願いしたい」というオファーが来たという。その全幅の信頼に対してバンドが燃えないはずはない。期待を超える満額回答、それが「Eye's Sentry」だ。

元になったのは、克哉が書き溜めていたストックの中の1曲。メンバーは「青の祓魔師」の世界観に沿うように、サビだけを残して全面的に曲を作り変え、TAKUYA∞(Vo)が歌詞を乗せた。生のバンドのグルーヴを生かしたミドルテンポの壮大な曲調で、真太郎(Dr)と信人が刻む煽るようなリズム、彰と克哉のギターが飛び回り、誠果(Sax, Manipulator)が吹く短く印象的なサキソフォンのフレーズが響く。信人はパンチの効いた歌のインパクトを生かすため生音の質感にこだわり、彰は現在の彼のトレンドだというギターシンセを駆使し、よりいいフレーズを探して3回ほど録り直したそうだ。レコーディングが最新アルバム「ENIGMASIS」(2023年7月リリース)の制作時期と近かったため、全員の演奏に脂が乗っている。

その中心で圧倒的な存在感を示すのは、やはりTAKUYA∞のボーカルと歌詞だ。「本当の自分を知られることで」から始まる頭サビから、「それだけの為に 変わっていければいい」で終わる最後の1行まで、TAKUYA∞ならではの人生哲学が全面的に展開されている。それは「自分の生き方を決めるのは自分自身だ」という揺るぎない意思。「瞳に映る 君すらも守りたい」というフレーズは特に美しい。歌詞の全体を貫く愛と絆の大切さ、そして「本当の自分ってなんだ?」という人生の終わりなきテーマが胸を打つ。「お前が本当に欲しいものはなんだ?」と問うようなTAKUYA∞の言葉は強く鋭く、しかしいつになく優しくリスナーに響く。熱い曲だが、攻撃的ではない。リスナーに寄り添っているのだ。包み込みと突き放しの絶妙なバランスが、聴き終えた余韻を切なくも温かいものにしている。

カップリングには「High Light!」「über cozy universe」という2曲が収録されている。「High Light!」はライブ会場での盛り上がりが目に浮かぶ、インストゥルメンタルの要素の強いアッパーチューンだ。ストンプとクラップ、掛け声が入ったイントロから一気にテンポアップしていき、エレクトロニックな仕掛けやサックスのブロウ、TAKUYA∞の英語詞ラップなど、次々と主役が入れ替わる豪快な1曲。「über cozy universe」もエフェクトをかけたボーカルが入るものの、インストゥルメンタルを中心とした曲で、強烈なハウスビートとギターの掛け合いで2分弱の短距離を一気に駆け抜ける。

期間生産限定盤には「CORE PRIDE」「一滴の影響」「REVERSI」の3曲が収められ、UVERworldと「青の祓魔師」との長い歴史と強い絆を再確認できるほか、付属のDVDには「Eye's Sentry」を含む「青の祓魔師」のテーマソング4曲のミュージックビデオが収録される。初回限定盤付属のDVDでは、2023年12月20、21日に神奈川・横浜アリーナで行われたTAKUYA∞の生誕祭の映像をダイジェストで楽しめる。DVDの中身やジャケットの違いなど、盤によっていくつかの仕様があるが、どれを手に取っても期待を裏切らないことだけは保証済みだ。

「Eye's Sentry」期間生産限定盤ジャケット

「Eye's Sentry」期間生産限定盤ジャケット

7万人の男たちが拳を突き上げた日

次に映像作品「UVERworld KING'S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」の話をしよう。本作には2023年7月30日、日産スタジアムにおよそ7万人の男性crewを集めたヒストリカルなライブの模様がすべて記録されている(参照:UVERworldと7万人の男たち、日産スタジアムで繰り広げた前代未聞の激闘)。前日の7月29日に開催されたライブ「UVERworld THE LIVE at NISSAN STADIUM 2023.07.29」の映像作品は昨年12月にリリース済みだが、セットリストも演出も、会場の空気感もそれとまったく異なることは、観始めればすぐにわかる。筆者は「UVERworld KING'S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」の映像を大きなスクリーンで観たが、ドローン空撮も含めた多彩なカメラワークのド迫力と、ドルビーアトモスを駆使した最高級の音像に度肝を抜かれた。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

高所恐怖症ならば足がすくみそうな、巨大なせり上がりの上でメンバーが「Don't Think.Feel」を演奏するド派手なオープニングから、一瞬も目が離せないジェットコースターのようなライブ。中盤ではグラウンドの反対側にあるサブステージへ移動して、crewたちとの距離をグッと狭めた親密なパフォーマンスで魅せる。さらに夕方から夜に至る美しい空の色と輝きを増す照明のもと、歌詞の持つ強いメッセージ性が7万人の圧倒的な一体感を生む「EN」や「THEORY」を経ての「MONDO PIECE」のグランドフィナーレ、そしてTAKUYA∞の「俺たちがチームUVERworld!」という絶叫まで、すべての瞬間がハイライトだ。「FINALIST」に参加したANARCHY、「来鳥江」で登場した山田孝之と愛笑むという、男臭さ満点のゲストの熱演もライブの勢いを加速させる。豪華な演出もバカでかい音も大量のレーザービームも、絶対に音楽の邪魔をしない。メンバー全員が気合いの入ったいい顔をしている。真太郎が得意の下ネタを封印して普通のMCをしているのも、たぶん目の前の光景に本気で感動していたからだろう。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

「老若男女を問わず自分たちの楽曲とメッセージを届けているのに、同世代の男に刺さらないのが悔しい」。2011年に「男祭り」を始めた理由をTAKUYA∞はかつてそう語ったが、7万人の男性crew(+ファンクラブで特別に無料招待された女性crew)で埋め尽くされたスタジアムを見れば、そんな時代が嘘のように思える。

TAKUYA∞(Vo)

TAKUYA∞(Vo)

活動初期から最新曲「Eye's Sentry」に至るまで、UVERworldの、TAKUYA∞の放つメッセージには一貫性がある。己の生き方を見せ、相手にその生き方を問うストイックな姿勢に、同性が反応するのは当然だろう。少年めいた男同士の熱い闘い、遊び、挑発、笑顔が交錯する、この異様な盛り上がりは「男祭り」でしか味わえないUVERworldの本質だ。映像化によって当日参加が叶わなかった男性crewも、もちろん女性crewにも、楽しむ機会が与えられたことが喜ばしい。

バンドは今、新たなプランへ向けて準備していると聞く。気が早いが、来年はメジャーデビュー20年の節目の年だ。UVERworldのベストタイムは未来にある。今からもう、次のアクションが待ち遠しい。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」の様子。

プロフィール

UVERworld(ウーバーワールド)

幼馴染のTAKUYA∞(Vo)と信人(B)らを中心に滋賀出身のメンバーで結成されたロックバンド。2005年7月にシングル「D-tecnoLife」でメジャーデビューを果たす。ライブハウスからホール、アリーナ、ドームまで1年を通してライブ活動を精力的に行い、2008年より毎年12月25日に東京・日本武道館でクリスマスライブを開催するなど、常に大きな注目を浴びる。2011年より男性限定ライブ「男祭り」を始め、2017年には埼玉・さいたまスーパーアリーナで約2万3000人の会場キャパシティを男性客のみで埋めるという日本記録を樹立。2019年12月に東京・東京ドームで約4万5000人の男性客を動員する「KING'S PARADE 男祭り FINAL」を行い、その日本記録を自ら更新した。2023年7月にアルバム「ENIGMASIS」を発表し、同年7月に神奈川・日産スタジアムでワンマンライブ2DAYSを開催。2日目は男性限定ライブ「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」として行い、約7万人を動員した。2024年2月よりライブツアー「UVERworld LIVE TOUR 2024」、女性限定ツアー「QUEEN'S PARTY 女祭り LIVE HOUSE TOUR 2024」を実施。3月にテレビアニメ「青の祓魔師 島根啓明結社篇」のオープニングテーマを表題曲としたシングル「Eye's Sentry」をリリースした。4月にハワイで女性限定ライブ「UVERworld QUEEN'S PARTY 女祭り THE FINAL in HAWAII 2024」を行う。