UVERworld|TAKUYA∞が語る、貪欲に音楽を追求する理由

今年、結成18周年を迎えたタイミングでベストアルバム「ALL TIME BEST」を発表したUVERworldが、バンドとして次のフェーズへと向かうことを告げる両A面シングル「GOOD and EVIL / EDENへ」を11月にリリースした。

映画「ヴェノム」の日本語吹き替え版主題歌「GOOD and EVIL」と、テレビ東京 ドラマ25 「インベスターZ」オープニングテーマ「EDENへ」を収録した今作で彼らは、海外の音楽シーンにも接近した革新的なサウンドアプローチに挑戦。これまでもバンドのイメージを刷新するような音楽的チャレンジを重ねてきたUVERworldだが、なぜ彼らはバンドとして大きな成功を獲得しながら、貪欲に新しい音楽を探求し続けることができるのか。今回音楽ナタリーではTAKUYA∞(Vo)に話を聞いた。

取材・文 / 秦理絵 撮影 / 上山陽介

ベストアルバムのリリースで一区切り

TAKUYA∞(Vo)

──今回のシングル「GOOD and EVIL / EDENへは2曲共、これまでのUVERworldのイメージを更新していくような楽曲になりましたね。

自分たちが聴きたいと思う曲を、自分たちで作っている感覚ですね。自分たちの中では、過去のUVERWorldらしさみたいなものは薄まっていったとしてもいいと思ってるんです。そう思ってやっていくと、普段僕たちは海外の曲を聴くことが多いから、自然と自分たちの中にあるものが反映されていく感じですね。

──バンドをやっていると、むしろ過去の自分たちらしさに縛られることが多いでしょうし、それが薄まってもいいとは考えられないと思うのですが?

今年はベストをリリースしたのもあって、1つ自分たちの中でも区切りが付いたのかもしれないですね。より新しいものに刺激を受けたいっていう気持ちが強くなっているなと思います。

──なるほど。

正直、自分たちに飽きているところもあるのかもしれないです。自分たちが自分たち自身に飽きるということは、少し遅れてファンの人たちも、自分たちの在り方に慣れが生じると思ってるんです。自分のことを考えたときにも、小学生の頃からずっと聴いてる曲ってないんですよね。好きで聴き続ける曲はあるけど、さすがに毎日は聴かない。好きな曲も、毎日目覚ましにしてたら嫌いになると思うし(笑)。今まで自分たちがやってきたオーソドックスなUVERworldらしさっていうのは、また数年後にやれば楽しくなるだろうし、とにかく今は新鮮なものをやりたいんです。

──そのあたりの感覚はメンバーとも共有しながら制作に臨んでいるんですか?

なんとなく共通認識はありますね。みんな音楽に対しては、いちリスナーだし、耳が早いんですよ。昔好きだった曲を10年も20年も聴くタイプじゃないので、自ずと流行りの音には敏感で、それぞれがいろいろな吸収をしてると思います。

ヴェノムにはヴェノムの正義がある

──そういうバンドのムードが今回のシングルには詰まっているんですね。1曲目の「GOOD and EVIL」は、映画「ヴェノム」の世界ともリンクした曲になっています。

映画のオファーをいただいてから書いた曲ですね。5分ぐらいのトレイラーを観させてもらって。ヴェノムはスパイダーマンの敵じゃないですか。そこから、ダークヒーローみたいな世界観を探していったんです。ちょうどツアー中だったので、ホテルにパソコンとギターと鍵盤を持ち込んで、ライブの合間に作ってました。

──作曲のクレジットが「UVERworld」になっていますけど、メンバーのアイデアも取り入れながら作っていったんですか?

基本的にクレジットには、第一デモの詞とメロディを作ったメンバーの名前を入れているんですけど、今回の場合、僕が詞とメロディを作ったから、本来は僕の名前がクレジットされるんです。ただ、ド頭の後ろのオケはベースの信人が作ったもので、Aメロは克哉が作ったオケ、サビはギターの彰が作ったものなんですよ。僕が作ったデモをみんなに投げて、ちょうどみんなのアレンジがきれいに使われていったところから、クレジットがUVERworldになりました。

──サウンドだけでなく、歌詞も「ヴェノム」の世界観とリンクしてますね。

そうですね。ダークヒーローの視点から歌詞を描いたのは初めてなので、今までと違った角度から書けたかなと思います。

──「善悪よりもずっと この命何に使うか明確に出来た者が残る」というフレーズが、この楽曲の肝だと思いますが。

自分たちは、世間で言う「間違ってる」と言われるようなことを、ロックという言葉で正義に変えてしまってる部分もあると思うんですよね。そもそも世の中の「いい」も「悪い」も多数決で決まっていくじゃないですか。だから、映画の中でヴェノムは悪者とされるけど、ヴェノムにはヴェノムの正義があると思うんです。僕たちの生活の中には、そういうのがたくさんある。悪いやつがすごく儲かっちゃったりとか。でも、そこに覚悟みたいなものがあるとしたら、「自分の生き方を、自分で決めたやつが強えな」って思いながら生きてるところなんじゃないかと。そういうものを歌詞にした感じです。

──どんな人にもそれぞれの正義があるっていうことですよね。最近は他人の行動に対して、第三者が善悪をつけたがる風潮もあると思うんです。特にSNSでは。そういう時代のムードを感じながら書いたのかな?とも思いましたが。

僕はまったくSNSをしないので、その影響はくらってないんですけど。うーん……深く考えてはないけど、少なからず感じる部分はあるのかもしれないですね。

海外の音がいい秘密を探りにL.A.へ

──カップリングの「EDENへ」は、クリス・ウォーレスとドリュー・ライアン・スコットとの共作という形です。海外のクリエイターを迎えるのは初めてですよね。

自分たちが聴きたいと思う音楽って、もう日本にはなくて。スタジオで音の良し悪しを判断するときに聴くのも海外の曲なんですよ。その2人を紹介してくれたのは、デビュー当時に関わってくれたスタッフなんですけど。この間、海外で仕事をされているその方と会う機会があって、歯車が合ったんです。「今だな」って感じがした。それで海外でレコーディングした作品の音がいい秘密を現場で探ってみようと思って、ロスに行きました。

──ロサンゼルスではどんな刺激を受けましたか?

僕たちは、1曲を作るのに1カ月とか、それ以上かかるときもありますし、きっちり細かいところまで考えて作り込むんですよね。でも、海外は超適当で、まったく悩まない。曲を作り出して悩んだらすぐに捨てるし、スタジオの環境にしても、窓が開いていて、芝刈り機の音が入ってくるようなところで。

──日本だと、スタジオは外とは遮断されて密閉されていたりしますもんね。

そう。海外はそれでもめちゃくちゃ音がいいんですよね。今、向こうのポピュラーミュージックはヒップホップなので、すごく低音に重きを置いていて。その音がいい。それと今言った適当さに、僕たちの学ぶべきところがあるのかなと思いました。そもそも音楽って楽しみながら作るものじゃないですか。でも、僕らは「生みの苦しみ」みたいなのを存分に感じながら作るタイプなので、いい意味で、もっと楽しく作っていたほうがいい。昔、先輩のアーティストが「もっと曲は簡単に作ればいい」みたいに言ってて、そのときは「だからお前の音楽は聴かへん」って思ってたんですけど。今はその言葉の意味がわかりました。

──じゃあ今後はその適当さを、自分の制作の中に取り入れようと?

いや、そんなつもりはまったくないですね。ただ、そういう作り方もあることを知ってるのと、知らないのとでは違うんですよ。ちなみに、この「EDENへ」のメロディとコード進行は、1日でサクサクッと作って、それ以外の前奏であったり、サビ後のインターバルの展開、歌詞にしっかりと時間をかけたんです。今まで自分がやってきた作り込むことのよさと、いわゆる音楽本来の楽しみながら作っていくことのよさを、しっかりと理解して作ったのがこの曲ですね。

──それも海外で得た刺激がなければできなかった?

そうですね。