植田真梨恵「勿忘にくちづけ」 PR

植田真梨恵|必要な言葉だけを、シンプルに美しく

シンプルな植田真梨恵を届けたい

──MVについても教えてください。

広い廃工場でグランドピアノとパーカッションを置いて、西村さんと車谷さんと3人で演奏しています。1作目のつもりで撮るという話を監督としました。

──メジャーデビュー曲の「彼に守ってほしい10のこと」のMVも植田さんの演奏シーンを捉えたものでしたね。

はい。シンプルな植田真梨恵を届けたいと思って、新人の気持ちで臨みました。

──ちなみに実際に久留米絣の製作現場の見学はしたんですか?

曲を書いたあとで久留米絣をやってみたいという気持ちで工房を訪ねて、藍染と機織り体験をさせてもらいました。すごく面白かったです。その模様が初回限定盤に付くDVDに収録されます。

言葉は自分の心を表すもの

植田真梨恵

──「雨にうたえば」は、大切な人と喧嘩したときに作ったそうですね。

私、調子に乗りやすいところがあって、余計なことをまあまあ鋭い言葉で言っちゃうことがあるんですよ。そういうときって決まってあとで自分が嫌になるんですけど。喧嘩したあとの落ち込んだ気持ちをどうすることもできず、日記を書くように曲を作って浄化しようと思って書き上げた曲ですね。最初にできた段階ではウジウジした感じだったのでテンポを上げて、雲間からちょっと日が差すような、口ずさめるくらいの楽しいアレンジを心掛けました。

──喧嘩は喧嘩でも植田さんが発端だったんですね。

そうなんですけど、喧嘩両成敗ですよ(笑)。キツいことを言ったときって、相手も傷付けるけど自分も傷付くので。でも私も昔みたいに若さにまかせて怒鳴ってたときほど相手のすべてを否定できないし、どうしたらよりよい状況に一歩進めるのかなって思ったりもして。最近言葉は自分の心を表すものだなとつくづく思うんですね。なので、もっともっと言葉というものを見つめて届けていくべきなのかなと思う今日この頃です。

“私音楽”を届けている

植田真梨恵

──曲の雰囲気はBillboard Live TOKYOのような会場にあいそうなアダルトな雰囲気があって、二十代後半になった植田さんの年齢的なところも曲作りに影響してるのかなと感じました。

そう思います。私は福岡から大阪に出てきて、自分の作曲能力にまったく自信がない状態で曲作りを始めたんですね。きれいなメロディや歌詞を書ける自信なんてなくて、私の抱えている思いをよりリアルに曲に落とし込むしかできないから、それを面白く思ってもらったり共感したりしてくれる人がいればいいなと思って。誰かのために曲を書くというよりもノンフィクション的に作ってるので、そのときの私の状態が曲に表れてしまうし、年齢というものは曲作りにおいてとても密接な関係だと感じますね。

──それで言うと、いい年の取り方をしてますよね。喧嘩しても相手の立場を考えられるようになっているわけですし。

そうかもしれないです。ただ私自身どうしたらいいのかなって一番迷う部分でもありますね。

──と言うと?

例えば十代後半の女の子がターゲットの洋服屋さんがあったとして、その店のデザイナーさんはもちろん自分がかわいいと思うものを作ってると思うんですけど、その感覚ってきっと変わっていきますよね。デザイナーさん自身が年を重ねたときに、「もうちょっと大人っぽいものを作りたい」って気持ちが芽生えることがあると思うんですよ。その結果コンセプトが変化したら、それはお客さんにとっていいことなのか単なる作り手のエゴなのかわからないなって思っていて。

植田真梨恵

──植田さんだったらどうしますか?

うーん……私はやっぱりそのときの自分がいいと思える作品を作りたいですね。私の場合は“私音楽”を届けているということにしか自分の価値を見出せてないので、リアルであることを大事にしていきたいと思ってます。

──曲作りに自信がないという話ですが、10年も活動を続けてきたわけですし、自信も芽生えてきたと思うのですが。

あるような、ないようなです。曲が完成してすぐは「は! 天才だった!!」って思うこともあるんですけど(笑)、その後すぐに「面白いのかなこれ」とか「いいのかなこれ」ってなるので。

──でも最初の頃よりはあるのでは?

わからないんですよね。曲を作り上げる作業って料理みたいで、「ここにこの要素が必要だ」って味を構成していく感覚なんですけど、それに関しては当時よりよっぽど早くなったと思います。ちゃんと整理されていて音楽的になっている一方で、当時のほうが伝えたいことの密度は濃かった気もするし。何をよしとするのかにもよると思うんですが、ソングライティングに関してはずっと自信はないですね。