ナタリー PowerPush - TRF

祝20周年!今明かされる革新的ユニットの歩み

「TK Rave Factory」の楽曲の根本

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──本線に戻りまして、メンバーが結集した後、ユニットは「TK Rave Facotry」の頭文字を取って「TRF」(当時は小文字のtrf)と名付けられました。このように命名された経緯を教えてください。

決めたのは松浦(勝人 / エイベックス・グループ・ホールディングス代表取締役社長CEO)だったかな。まず「TK」は、その頃「TETSUYA KOMURO PRESENTS~」みたいなCDを何枚か出して、小室哲哉の名前が付いてればある程度売れることが保証されているということで。「Rave」は、その当時イビサ島でレイブっていうのが流行っていて、それが輸入されてみんな憧れて、都内でよくレイブパーティが開催されてたんです。まあカッコいい、自分たちのやろうとしているものを表す言葉だっていうことで選ばれました。そして「Factory」は、シーンに新しい音楽だったりアーティストだったり、はたまたいろんなものを送り込んでいく“工場”的なものを小室さんとエイベックスで作ろうっていう意味合いですね。これを組み合わせて「TK Rave Factory」っていう名前になったんだと思います。

──デビュー後、TRFが大ヒットした要因はなんだったのでしょう?

ひとつはシーンですよ。ダンスミュージックシーンの土壌がもう日本にできてたということ。でも実は「GOING 2 DANCE」(1stシングル)とかはかなりコアじゃないですか。本当はあれがTRFの楽曲としての根本なんですね。

──確かに1stアルバム「trf ~THIS IS THE TRUTH~」はかなり洋楽色の強いハードコアテクノですよね。

つまり世の中的にはあまり受けないかもしれないけど、カッコいいもの。でもそこにポップス要素を多分に入れてやらないと一般受けはしていかないだろうっていうことで、ポップなオリジナルバージョンと、クラブ向けのリミックスバージョンの2タイプを用意するんです。そのポップなほうが有名になっただけのことであって、常に2つは作ってたんですね。

──クラブシーンに密接した音楽、というコンセプトは揺るがなかったんですね。

あと世間に受けた要素はねえ、やっぱり現場を巻き込んでディスコでガンガンかけさせたことですね。そのとき、マハラジャ系列のディスコやカラオケ店だけでも全国に300店舗くらいあったんですよ。そこでDJにガンガンかけさせて、まず“クラブでかかるカッコいい音楽”って認知されたあとに、「EZ DO DANCE」がシーブリーズのCMソングになって一般層に広がって。なんか外人みたいなグループがいきなり登場して、アンダーグラウンドから来たような新しさで、でも歌えるキャッチーな曲で……「なんだこいつら?」と思うような状況をうまく作っていったんですね、戦略上。そしてそういう市場が形成されていたところにうまくハマったっていう。

売れてるか売れてないかは僕の中では二次的なもの

──20年の間でTRFのセールスが落ち込んだ時期はどう見ていましたか?

どのアーティストもみんな落ち込むじゃないですか。だから落ち込むんだろうなとはハナから思っていたし、実際その時期が来ても「来たな」くらいの感じで。

──好転させるためのテコ入れはしなかったんですか?

何回か試みたんですよ。メンバーを増やしたり減らしたりしようとか。でも全部今のメンバーに拒否られて(笑)。

──TRFという存在は継続させたいと思っていた?

そこはTRFどうこうっていうより、プロダクションをやるって決めたときから、彼らの人生をそっくりそのまま預かるみたいな信念があったんですよね。“アーティストを作る”っていうより“人を作る”という概念です。自分がやれる限り彼らの面倒を見続けるし、一生の付き合いになるだろうって最初から腹を決めてたんで、その中でどう生きていくかっていうだけのことであって、それが売れてるか売れてないかは僕の中では二次的なものだったんです。まあもちろん売れてたほうがいいから、その努力はするけれども。

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──彼らがエイベックスの邦楽第1弾アーティストだから、古い仲だからではなく、それが千葉さんのアーティストに対するポリシーなんですね。

自分の中にはそういうものがありますね。いまだに自分が担当したアーティストには同じ思いを持ってます。

──でも紆余曲折あった上で、昨今の「a-nation」ではトップクラスの人気を誇るまでになり、現役のまま20周年を迎えられたのはすごくうれしいことですよね。

そうですね。別に彼らがあとでヒットを出したわけじゃなくて、昔のブランドが今また「a-nation」の中で生きているっていう。これは、彼らがずっとプロで、それぞれ持っている技能をきちっと果たしてるっていうのが大きいんじゃないかな。あとダンスシーンがまだしっかり存在してるってこともでかいと思います。

TRFは自分たちの魂

──今日のTRFは、会社にとってどのような存在ですか?

どういう存在なんだろうな……。例えば、日産で言うと「DATSUN」って事実上の第1号車だし、日露戦争で大きな功績を残した戦艦「三笠」も横須賀の公園に置かれてるじゃないですか。やっぱり今でも大事にしている存在だと思うんですよ。そういう意味では、我々が新しい一歩を踏み出すときに知力を結集して作った最初のものがTRFで、自分たちの魂みたいなところがありますね。この人たちもしくはこのブランドを、僕らが利益を出していける間はずっと守っていこうっていう気持ちがあります。

──ほかのアーティストには似ていない、TRFだけの魅力とはどういうところだと思いますか。

彼らは、マーケットから作られているアーティストだということですね。どういうことかというと、普通はアーティストって、自分から歌なりダンスなりアピールして選ばれて活動を始めるわけですけれども、そうではなく、ここにこういうマーケットがあると。ダンスシーンがあって、ディスコに行きたがってる人がいて、こういうメロディを好む土壌があって、それを具現化するにはどんな奴らがいいかっていうイメージがあって探したんですよ。で、それから20年間、彼らは常にマーケットに対応する形を取らされるわけです。だから彼らの中身を覗くと、すごく不本意ながらやっている部分もあって。

──え? 不本意ながら?

そもそもダンサーたちにとっては「ギャラがもらえるから」とやっていたバイトみたいなものですから。生活のためにとか、自分の存在証明のために我慢してやっていくという。でも彼らは、それをこなせることが強みなんですよ。だから20年経って50歳近くになっても「a-nation」という若者向けのコンサートがあれば、その人たちに喜ばれるようなスタイルに自分たちを適合させて、会場を引っ張っていく。それが本当に彼らのプロフェッショナルなところですよね。プロであればあるほど自分の信念は曲げたくないはずなのに、ときに呑んで曲げて、それでも一生懸命やっていけるという人たちだと思います。

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4カ月連続リリース第2弾 トリビュートアルバム「TRF リスペクトアイドルトリビュート」2012年12月19日発売 avex trax
トリビュートアルバム「TRF リスペクトアイドルトリビュート」CD+DVD盤[CD+DVD] 2940円 AVCD-38660/B
トリビュートアルバム「TRF リスペクトアイドルトリビュート」CD盤[CD] 2310円 AVCD-38661
収録曲
  1. BOY MEETS GIRL / IRF
  2. EZ DO DANCE / アイドリング!!!
  3. 寒い夜だから… / Dream5
  4. Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~ / 東京女子流
  5. survival dAnce ~no no cry more~ / BiS
  6. Love & Peace Forever / iDOL Street(SUPER☆GiRLS、Cheeky Parade、ストリート生)
  7. BOY MEETS GIRL -DJ KOO PARTY MIX-
DVD収録内容
  • IRF~BOY MEETSしたいGIRLS達~
TRF(てぃーあーるえふ)

TRF

YU-KI(Vo)、DJ KOO(DJ、サウンドクリエイター)、SAM(ダンサー)、CHIHARU(ダンサー)、ETSU(ダンサー)の5人からなる音楽ユニット。1993年に小室哲哉のプロデュースにより、trf名義でシングル「GOING 2 DANCE」、アルバム「trf ~THIS IS THE TRUTH~」にてデビューを果たす。90年代中盤には「survival dAnce ~no no cry more~」「BOY MEETS GIRL」「CRAZY GONNA CRAZY」「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」など、数々のミリオンヒットを生み出す。1996年からユニット名を現在のTRFに変更。また1998年より小室プロデュースを離れ、独自のスタンスで活動。各メンバーはソロ活動や、他アーティストの振り付けなども行っている。2012年11月にはベストアルバム「TRF 20TH Anniversary COMPLETE SINGLE BEST」をリリース。これを皮切りに4カ月連続リリース企画をスタートさせ、2013年2月にデビュー20周年を迎える。


2013年2月25日更新