ナタリー PowerPush - TOTALFAT

4人の思いが詰まった日本語曲で「NARUTO」をメロコア色に染める

TOTALFATのニューシングル「Place to Try」がリリースされた。メジャー2ndアルバム「DAMN HERO」から約5カ月ぶりに発表される本作の表題曲は、人気アニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のエンディングテーマとしてオンエア中。彼ららしいストレートなメロコアサウンドに、メッセージ性の強い日本語詞を乗せた意欲的なナンバーに仕上がっている。

1stシングル「World of Glory with JOE INOUE」では主に井上ジョーが日本語詞を手掛けたが、今回は初めてメンバー4人のみで日本語での作詞にチャレンジ。インタビューでは彼らがどのようにして日本語詞を書き上げたのか、そしてアニメタイアップを通じて初めて出会うリスナーについてや、本作制作を経て見つけたバンドの本質などが、ストレートに語られている。

取材・文/西廣智一 撮影/中西求

ツアーファイナルが「AIR JAM 2011」と重なったことで生じた思い

──アルバム「DAMN HERO」に伴うツアーが9月18日に終わり、1カ月ちょっと経ちましたね。

Shun(Vo, B) 毎回アルバムを出してツアーをすると、それまでで一番いいツアーになったと感じるんですけど、今回は特に本数が少ないながらも1本1本にいろんなものが凝縮されていたと思うんです。各地でファンの期待値が以前よりも上がっていることを肌で感じたし。特にツアーファイナルのSHIBUYA-AX公演が「AIR JAM 2011」と同じ日だったことで、僕らもそれぞれ内面でいろんな思いと戦ったというか。

──どういった思いと戦ったんですか?

Shun 難波(章浩)さんから声がかかっていたので僕らも「AIR JAM」に出たかったし、Hi-STANDARDも観たかったしっていう欲求ですね。あとは、「AIR JAM」の裏でライブをやることに対する「大丈夫かな?」っていう不安。でも、ツアーを回りながらちょっとずつ吹っ切れていくと同時に、ファンのみんなや友達から「AXに行くぜ」っていう声が届いて、重い気持ちを飛ばしてくれたんです。そういう意味では今までで一番濃くて重くて充実感があったツアーで、メンバーそれぞれが自分を高めるのにすごくいい時間だったんじゃないかなと思いましたね。

──そして、ツアーファイナルのSHIBUYA-AXは見事ソールドアウトになりましたね。

インタビュー風景

Jose(Vo, G) 朝起きたときにすごく天気が良くて、太陽の光を浴びてテンションが上がってグッときたんですよ。それで会場入りして、まだお客さんがいないフロアを観て「ソールドアウトって言ってるけど、ホントに俺たちの音楽を聴きにきた人でパンパンになるのかな」って考えたり。リハのときは全然現実味がなくてフワフワした感じだったんですけど、実際にステージに立ったら今までのワンマンとは違って、気合よりも喜びが絶えずあふれてきましたね。

Bunta(Dr) ソールドアウトしたときに、「AIR JAM」世代の先輩方が自分のことのように喜んでくれて。

Shun もちろん同じ世代もね。KenKenの喜びっぷりが半端なかったな(笑)。ちょっと喜びすぎだろってくらい喜んでくれて。

Bunta ライブの打ち上げで、俺らがよく行く飲み屋に行ったら、先にKenKenが待っていてくれて(笑)。

Jose 自分はWAGDUG FUTURISTIC UNITYで「AIR JAM」に出た後なのにね。

Shun でもdustboxのJOJIさんだけは、「お前ら、一発当てたんだったらこのままつっぱれよ!」って喝入れてきたけど(笑)。

Jose AXでライブをやれたことで、「俺たち4人だけじゃねえな。バンドっていろんな人に支えられていて、やっぱりいいな」ってことに気付けたのはデカかったですね。

初のアニメタイアップは直球で勝負したかった

──そんな中、早くもニューシングル「Place to Try」が発売されます。この曲はアニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のタイアップが決まってから書き下ろしたんですか?

Jose タイアップのお話をいただいて、自分たちならではの曲を作って提出した感じですね。

インタビュー風景

Shun もちろん番組を観ている人に刺さるように、ってことも考えたし。ただ、変化球でストライクを取るよりは直球で勝負したいって気持ちは強かったですね。「NARUTO -ナルト-」タイアップの話はKi/oon Recordsに来たときから聞いていて、俺らがそこを狙うか狙わないかも自由だったし。そんな中で、自分たちが自信を持てる曲に関しては積極的に外へ飛び出していこうってスタンスを取っていて、それが今回合致した感じですね。

──正直、最初はアニメのタイアップで再び日本語詞ってことで、聴く前にちょっと構えていたんです。でも実際に聴いてみたら、すごく肩の力が抜けた、直球のTOTALFATの楽曲で安心したんです。

Shun でも、実は肩の力は全然抜けてなくて、むしろゴリゴリに凝り固まったものが俺らの肩にいっぱい積み上がっちゃってた状態で。いい作品を作って、いいツアーを回れて、いい人たちに囲まれて、いい音楽人生を過ごせていたけど、だからこそ見えない部分で気負いすぎていたのかもしれないですね。で、その肩に入った力を抜く作業がすごく大変で。特に今回は新しいことに挑戦するってことで、曲ができるまで本当に時間がかかったんです。「World of Glory with JOE INOUE」は井上ジョーくんの歌詞だったので、自分たちで日本語詞を書くっていうのもこれが実質初めて。5月末から作詞を始めたんですけど、9月のレコーディングまでなかなか仕上がらなくて。そうやって固くなった頭と肩をもみほぐす作業を、時間をかけて続けたんです。

Jose 「DAMN HERO」までは原曲を作った人主導で完成まで進めるスタイルが多かったんですけど、今回は全員で一から話して展開、Aメロ、Bメロ、サビと1つひとつを4人で作っていこうって決めて。

Shun 密室で4人が顔を付き合わせて書くスタイルで。

Jose だから気持ち的にも原点に帰れたし、実際そういう曲になったんじゃないかなって思います。

ニューシングル「Place to Try」 / 2011年11月9日発売 / Ki/oon Records

  • 初回生産限定盤[CD+DVD] 1575円(税込) / KSCL-1888~1889 / Amazon.co.jp
  • 通常盤[CD] 1223円(税込) / KSCL-1890 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Place to Try
  2. Take It Over
  3. Life Is Such a Danger Flight
  4. Place to Try –NARUTO-ナルト- Ending Version-
  5. Place to Try -Instrumental-
DVD収録内容
  1. Place to Try (Music Clip)
  2. Damage (Music Clip)
  3. Invention ~Good morning,my treasures~ & Ryan,Don't Worry (Live)
    *2011年9月18日 SHIBUYA-AXにて収録
TOTALFAT(とーたるふぁっと)

TOTALFAT

2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、 Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello & Goodnight」をリリースし、GOOD CHARLOTTEの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」といった夏フェスに出演し、好評を博した。

2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。翌2011年5月には井上ジョーをフィーチャーした日本語詞のシングル「World of Glory with JOE INOUE」をリリースし、話題を集めた。続けて同月末にメジャー2ndアルバム「DAMN HERO」を発表。9月には全国ツアーのファイナル公演として、SHIBUYA-AXでワンマンライブを実施し大成功を収めた。同年11月にニューシングル「Place to Try」をリリース。