ナタリー PowerPush - TOTALFAT

4人の思いが詰まった日本語曲で「NARUTO」をメロコア色に染める

最後まで「この歌詞でいいのか」って不安との戦い

──改めて自分たちだけで日本語詞にチャレンジしてみて、どうでしたか?

Shun 「World of Glory with JOE INOUE」のときは、日本語詞の曲を書くことよりもその曲がライブでどう響くかっていうことのほうが重要だった気がするんです。ライブをする側にとってもそうだし、聴く側にとってもやっぱり日本語詞に対して多少はアレルギーがあったと思うんですけど、実際にライブで鳴らしたらすごくいい空気感になったし、お客さんも喜んでくれたし、何より俺らが1つ変われたっていうか。

インタビュー風景

Kuboty(G) 特に俺はここ2年くらい、日本語詞に対して常に考えたり悩んだりを繰り返してきたんです。そんな中で、自分たちでは踏み出せなかった最初の一歩を「World of Glory with JOE INOUE」のおかげで踏み込めたし、本当に意味のある1曲だったなと。だから今回、言葉の1つひとつまで4人で何度も話し合って書いたので、本当は肩の力が抜けた感じとは真逆の環境から生まれた曲なんですよね。最後の最後まで「この歌詞でいいのか、大丈夫なのか」って不安との戦いでした。

Shun 今までバンドをやってきて、この曲が一番正解がわからなかったものなんじゃないかな。英語詞を書いてるときは自分たちが今まで聴いてきた洋楽からヒントを得て、ビートやノリや響きのカッコいい言葉を常に選んできたけど、日本語詞だとそれがわからなくて。このメンバーの場合、過半数が邦楽よりも洋楽を聴いてる時間が長いので、圧倒的に不利なんですよ。

Kuboty 日本語詞の落とし込み方がわからないし。

Shun そう。やっと歌詞が書けたと思ったら、今度は歌い回しや譜割りでの戦いが始まる(笑)。

Jose 日本語って単語1つひとつの持ってる力強さがハンパなくて。

Shun 接続詞1つで響きや聴こえ方が変わるしね。

Bunta 俺個人の話ですけど、去年くらいからUVERworldやONE OK ROCKのメンバーと仲良くなって。この曲を作ってるときにUVERworldのライブDVDを観たんですけど、ボーカルのTAKUYA∞くんのMCとそのあとにつながる演奏の爆発力がとにかくすごかったんです。それを観たら、俺らにもこういうことができるんじゃないかなって思って。で、Shunにその話をしてから、「Place to Try」の核となるサビ部分の「君はひとりじゃない」ってフレーズをまず2人で作って、そこからどんどん膨らませていったんです。俺の中では「この曲はライブでやったらストレートに伝わるな」っていう確信もありましたし。

もはやファンにだけ向けてやるだけじゃなくなってる

──これまではメロコアやパンクシーンの中で戦ってきたわけですが、今回の「Place to Try」や前作「World of Glory with JOE INOUE」といった日本語詞の楽曲では、もっと外側……いろんな日本のロックバンドがいるシーンで勝負していきたい、自分たちの魅力を伝えていきたいという気持ちはありましたか?

Shun 「DAMN HERO」のときからそういう意識はあったと思うんですけど、やっと余裕を持ってやれるようになったかな。それと、シーンを盛り上げたいとか、ライブハウスを盛り上げたいとか、音楽業界を盛り上げたいとかそういう気持ちも強くて。もはやファンにだけ向けてやるだけじゃなくなってる気がしてます。

インタビュー風景

──それは具体的にどういうことでしょう?

Shun もちろん音楽なんて自分たちがやりたくてやってることだし、元々衝動的に始めたことなので、別に周りの言うことなんて聞かずに何十年も変わらずやっていくこともカッコいいと思うんです。でも、TOTALFATに関して言えば、いろんな人を巻き込んで、いろんな人に世話になって、いろんな人からチャンスをもらってる。だからこそ、その横のつながりでいろいろ盛り上げていきたいっていう気持ちがある。そうなると、やっぱりファンに向けてだけじゃなくて、例えばこの曲をthe telephonesのみんなが聴いてどう思うかとか、BIGMAMAのみんながこの歌詞を読んだらどう思うか、そういう周りのバンドマンに向けてもメッセージやサウンドを発したくなるんです。

──なるほど。

Shun だから、ほかのバンドとの「これは真似できねえだろ」っていうやり合いを通じて、シーン全体が盛り上がっていけたらいいなっていう気はしますね。Hi-STANDARDがやってきたことってきっとそういうことだと思うし。周りのバンドに対して刺激を与えて、本当に数えきれないくらいのフォロワーを生んで、その影響でさらにたくさんのバンドマンが生まれて、たくさんのライブハウスができて。同じことができるかどうかわかんないですけど、やっぱり彼らに影響を受けた世代としてそこに立ち向かっていきたいですね。

ニューシングル「Place to Try」 / 2011年11月9日発売 / Ki/oon Records

  • 初回生産限定盤[CD+DVD] 1575円(税込) / KSCL-1888~1889 / Amazon.co.jp
  • 通常盤[CD] 1223円(税込) / KSCL-1890 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Place to Try
  2. Take It Over
  3. Life Is Such a Danger Flight
  4. Place to Try –NARUTO-ナルト- Ending Version-
  5. Place to Try -Instrumental-
DVD収録内容
  1. Place to Try (Music Clip)
  2. Damage (Music Clip)
  3. Invention ~Good morning,my treasures~ & Ryan,Don't Worry (Live)
    *2011年9月18日 SHIBUYA-AXにて収録
TOTALFAT(とーたるふぁっと)

TOTALFAT

2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、 Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello & Goodnight」をリリースし、GOOD CHARLOTTEの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」といった夏フェスに出演し、好評を博した。

2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。翌2011年5月には井上ジョーをフィーチャーした日本語詞のシングル「World of Glory with JOE INOUE」をリリースし、話題を集めた。続けて同月末にメジャー2ndアルバム「DAMN HERO」を発表。9月には全国ツアーのファイナル公演として、SHIBUYA-AXでワンマンライブを実施し大成功を収めた。同年11月にニューシングル「Place to Try」をリリース。