ナタリー PowerPush - TOTALFAT
海外勢も認めたメロコア界の雄 エンジン全開でメジャーに進出
インディーズを拠点に精力的なライブ活動を続けてきたTOTALFATが、Ki/oon Recordsにメジャー移籍。その第1弾作品となるアルバム「OVER DRIVE」をリリースした。今回のアルバムはL'Arc-en-CielやDEAD ENDなどを手がけてきた岡野ハジメをプロデューサーに迎え、ポジティブさに満ちあふれたメロディック&ハードな作品に仕上がっている。
アルバム発売を記念して、今回ナタリーではメンバー4人にインタビューを敢行。バンド結成のいきさつやメジャー移籍について、岡野ハジメを選んだ理由やアルバムに込めた思いなど、じっくりと話を訊いた。
取材・文/西廣智一 撮影/平沼久奈
「俺らもああいうバンドやりたいよね」
──TOTALFATは結成してから10年という長い歴史がありますが、そもそも最初にどんなきっかけから結成することになったんですか?
Shun(Vo,B) 僕が中学校のときに、兄の影響でGREEN DAYやTHE OFFSPRINGを聴き始めて。でも、中学では周りに洋楽を共有できる友達がいなくて、そういう仲間を探すために自由な校風の高校に入学したんです。
──高校はどんな感じでしたか?
Shun 私服通学の学校だったので、MISFITSのパーカーとかHi-STANDARDのTシャツを着て通ってました。で、学食でひとりで飯を食ってるときに、隣のクラスのBuntaに「バンドやってんの?」って話しかけられて。それをきっかけに仲良くなったんですよ。で、実は僕が中学を卒業する前にTHE OFFSPRINGの「AMERICANA(アメリカーナ)」というアルバムがリリースされて、ジャパンツアーが決定して。そのときはまだ一緒に行く友達がいなかったのに、高校で友達になった奴を誘って行けばいいかなって、すごい安易な考えでチケットを3枚買ってあったんです。それで、Buntaとかを誘って一緒にTHE OFFSPRINGのライブに行ったんですよ。今でもハッキリと覚えてます、1999年9月25日、東京ベイNKホールでした。2時間以上のライブ、最初から最後までとにかく衝撃が続きまくって。もう本当にハードなライブで、ボロボロになりながらNKホールを出て舞浜駅まで歩くんだけど、途中の自販機が全部売り切れていて水も飲めやしない(笑)。その帰り道で「俺らもああいうバンドやりたいよね」みたいな話になって、「やろうか!」ってその日のうちにバンドを組むことになったんです。
──じゃあ、もう最初からTHE OFFSPRINGみたいなバンドをやろうと思って?
Bunta(Dr,Cho) Hi-STANDARDやNICOTINEは既に第一線で活躍していましたけど、身の回りでTHE OFFSPRINGみたいな西海岸のメロコアサウンドを日本でやってるバンドが当時はまだ少なくて。ツインギターの4人編成で、みたいな話はその頃からしてましたね。
──英語詞でやってるのもそのあたりのバンドの影響ですか?
Shun はい。それと、Hi-STANDARDを筆頭に、俗に言うAIR JAM世代の大先輩方が英語詞でやってるのを見て、これでいいんだって後押しされましたね。そういったバンドの影響で、英語詞でやるメロコアというのものに誇りを持ってました。
中学のときに観たTHE VENTURESが初ライブ
──TOTALFATって基本にあるのはパンクロックなんだけど、同時にパンクだけじゃないいろんな要素もフィーチャーされていますよね。そこは皆さんがこれまでに聴いてきた音楽の影響が出てるんでしょうか。
Shun フックとなるパンクやメロコア以外のジャンルというのは、メンバーそれぞれがもともと好きな音楽の影響が強いですね。例えばJoseくんだったらブルースとか。知り合った頃の彼はエリック・クラプトン命だったしね。
Jose(Vo,G) 僕は中学のときに観たTHE VENTURESが初ライブです。
──えっ、そんなに若いのに!?
Jose 流行りものを毛嫌いするようなひねくれ者だったんで。流行りの音楽より渋いほうがカッコいいじゃないかって聴いてたらホントにハマっちゃって、そのままずっときました。Shunたちと知り合うまでは、パンクロックとか全然知らなかったし。
Shun で、Kubotyはもうどこからどう見てもハードロック/ヘヴィメタル小僧なんで。
Kuboty(G,Cho) ……はい(笑)。
Shun 僕とBuntaはずっとパンクが好きで似たような感じなんですけど、Buntaはここ数年でR&Bやヒップホップとか聴き始めて。リズムやグルーヴの面でそういう部分もちょっとずつバンドに取り入れて、新たな要素として持ってきてくれてます。
THE OFFSPRINGが与えた二度目の初期衝動
──今の4人が集まってライブを重ねて作品を作っていく中で、自分たちが憧れていた海外のバンドと共演する機会が増えましたよね。
Shun それがなかったらここまでバンドを続けてなかったんじゃないかって思うぐらい、かなりデカイっすね。特にTHE OFFSPRINGの存在に一度ならず二度までも人生を変えられて、ましてや一緒にツアーをまわるっていうのがね。
Jose CDを買って「カッコいいなー」って思ってた人たち、今だったらYouTubeとかネットでモニター越しで観ていた人たちと会話をして、彼らのライブをステージ真横で観れるのって、初めてCDを買って聴いたときの衝撃と同じぐらいまた惚れられるっていうか。それを同じアーティストで何度も体験できれば、ある意味僕らはずっと純粋でいられると思うんです。バンドを続けていると複雑なことを考えるようになったり、いろんな誘惑があったりするけど、でもその度にまた“あの頃”を思い出せる。「あっ違う、やっぱ自分らはこういう音楽が、こういうバンドが好きなんだ!」って思い出せる場所なんですよね。
Shun 一生に一度のはずの初期衝動が、彼らに会うことによってもう1回よみがえってくるというか。
Bunta 一緒にライブをすることで再確認できるのは大きいよね。
CD収録曲
- Invention ~Good morning,my treasures~
- Ryan,Don't Worry
- Summer Frequence
- Sacrifice
- Ain't Gonna Kill
- The Roundabout
- The Wonderful World
- In Your Hands
- Predator
- Bruised
- Smile
- Hide and Seek
- One Last Time, I'll Try To Be With You
- Overdrive
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo,B)、Jose(Vo,G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。 数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」や「SUMMER SONIC 09」にも出演している。