ナタリー PowerPush - TOTALFAT
海外勢も認めたメロコア界の雄 エンジン全開でメジャーに進出
今まで誰も「メジャーに行こう」って言わなかった
──TOTALFATは今年で結成10年目。このタイミングでメジャー移籍というのがちょっと意外でした。これまでにもそういうタイミングってあったと思うんですが。
Shun ゼロではなかったんですけど、そのときに誰も「メジャーに行こう」って言わなかったので、これまではそのタイミングではなかったのかな。でも今回は、去年のアルバム(「FOR WHOM THE ROCK ROLLS」)のツアーを終えて「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」に出て、その直後に話をいただきました。僕らは眉唾的に「またー」みたいな感じだったんですけど、それからKi/oon Recordsがどういうレーベルでどういう人がいて、僕らに対してどういう気持ちを持っているのかというのがわかって。4人で「行こう」と決断するのはそんなに時間はかからなかったですね。むしろ「当然でしょ」って誰も疑うことなく行くことができました。
──周りからは何か反応はありましたか?
Shun 「意外だね」「ずっとインディーズでいくのかと思った!」って驚く人もいたけど、最後にはみんな「今回はチャンスだね」と言ってくれて。やっぱり自分たちがどうありたいか、どうあるべきか……THE OFFSPRINGに憧れてバンドを始めたので、観てる人たち、聴いてる人たちにとってTOTALFATが「僕らにとってのTHE OFFSPRING」みたいな存在になるためにどうしたらいいかを考えたときに、今回の作品でメジャーに行くというのは僕らとしては自然な流れでしたね。
──そのニューアルバム「OVER DRIVE」ですが、メジャーに行くことを決めてから制作したんですか?
Shun そうではないですね。前回のツアーが終わってすぐに「次どうしよっか?」「このまま止まらずに作品を作ろう!」という話をしていたときに、アルバムタイトルになった「Overdrive」という曲をKubotyが完成形に近い状態で持ってきて。みんなその曲を聴いたらすぐビビビッときて、僕もすぐ歌詞を書いて、「よし! こういう感じでアルバム作ろうぜ」と決めた頃に、移籍の話をいただいたんです。だからメジャーとか関係なくて、僕たちは最初からエンジンがかかってた状態でした。
──Kubotyさんが「Overdrive」という曲を作ったときは、バンドの次のステップを意識してましたか?
Kuboty いや、全くなかったです。自分がいつも曲を作るような感じで、特に何かを意識したわけじゃなくて、ふとできたっていう。タイミングも別に狙ったわけじゃないし、ちょうどツアーが終わって夏が終わりかけた頃に、本当に自然に出てきた曲なんです。
Shun だからいい曲なんだよ、きっと。その後に乗せた歌詞のほうが、「こうしていきたい」という気持ちがこもってる気がしますね。
──この曲を筆頭に、アルバム「OVER DRIVE」にはもともと持っていた色にメジャーならではのキラキラ感が加わって、いわゆるメロコアやパンクの一言で片づけられないものがたくさん詰まった、最初から最後までバラエティに富んだロックアルバムだなと感じました。「メジャーに移るし、ちょっと気合いを入れて」という気持ちがあったのかなと思ったんですが、そういうわけではなかったんですね。
Shun でも、メジャー移籍は確実に大きな追い風になりましたよ。環境も良くなったし、初めての試みもいっぱいしたし、プロデューサーを選ばせてもらったりとか、選択肢が増えましたね。メジャーの話がなくて、これまでどおりの環境で同じ気持ちでやってたら、もしかしたら今みたいな感想はもらえなかったかもしれないし。「キラキラ感」を出すのって長くやればやるほど出にくくなるものだと思うんですけど、今回はいろんな人にそう言ってもらえるので、そういう意味では成功だったのかなと思います。
超一流の“ザッツ・プロデューサー”にお願いしたかった
──プロデューサーも岡野ハジメさんという意外な人選です。岡野さんはいろんなタイプのアーティストを手掛けていて、いかにもメジャーというイメージが強いですが、今回なぜ岡野さんにお願いしたんですか?
Shun これまではセルフプロデュースだったので、まず「プロデューサーを入れるか入れないか」の話し合いから始まったんです。みんなプロデューサーにすごい興味があって、大人になっちゃうと何かを教えてもらえる機会もそんなにないし、そういう意味では全員「ぜひ入れたいな」という話になって。それで、「一緒にやってみてなしならなしでいいし、勉強として経験したい」って軽い気持ちでお願いしたんです。いろんな候補があった中で、Kubotyが岡野さんが手がけてる作品に好きなものが多くて、ぜひにと。
Kuboty ジャンルを問わず、自分の好きな曲の中に岡野さんが手がけているものが多かったんですよ。
Shun パンクやハードな音楽を得意とするプロデューサーさんもいた中で、なぜ岡野さんだったかというと、本当に超一流の“ザッツ・プロデューサー”っていう存在の人にお願いしてみたかったというのがあって。要は、自分たちが作ったものの到達地点が最初から見えてる人にはお願いしたくなかったんです。得意としてるジャンルが同じものだったりすると、ある程度同じ方向を向いてるから着地点が見えちゃうような気がして。それはそれで良い要素もあると思うんですけど、全く違うところにいる一流の人に自分たちの音をぶつけて化学反応を見てみたかったので、そういう意味でも岡野さんにお願いしたかったんです。でも一緒にやってみたら、岡野さんめっちゃメタル好きで(笑)。
Kuboty あと、レーベルのディレクターさんが「俺が一番話しやすいのは岡野さんだよ」と言っていて、そういうところにも縁を感じて。だったら岡野さんでしょ、ハジメちゃんでいいでしょと(笑)。
CD収録曲
- Invention ~Good morning,my treasures~
- Ryan,Don't Worry
- Summer Frequence
- Sacrifice
- Ain't Gonna Kill
- The Roundabout
- The Wonderful World
- In Your Hands
- Predator
- Bruised
- Smile
- Hide and Seek
- One Last Time, I'll Try To Be With You
- Overdrive
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo,B)、Jose(Vo,G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。 数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」や「SUMMER SONIC 09」にも出演している。