ナタリー PowerPush - TOTALFAT
海外勢も認めたメロコア界の雄 エンジン全開でメジャーに進出
岡野さんはレコーディングを一緒に楽しんでくれた
──岡野さんと初めて会ったときのことは覚えてますか?
Shun 最初に僕らのライブを観に来てくれたんですけど、ろくに会話もせず挨拶だけでした。初めてちゃんと会話をしたのが、プリプロでスタジオ入りした初日で、もうお互いその日からすごい運命を感じちゃいましたね。岡野さんも僕らとの作業をすごく楽しんでくれたみたいで、プリプロ初日に「このバンドのアルバム、俺が(プロデュース)やっちゃっていいんだよね?」みたいなことを僕らにも聞こえるように、ディレクターに話して。
Jose 3曲くらいやった後に、岡野さんから言ってくれてね。
Shun で、ディレクターが「あっ、はい」って(笑)。
──岡野さんはスタジオで、みなさんとどういう感じで作業を進めていったんですか?
Shun メロディに関しては僕たちのやりたいようにやらせてくれて、それぞれのプレイをいちプレイヤー、いちアーティストとして敬意を持って接してくれました。「基本的に、君たちがハッピーなら俺はハッピーだから」というスタンスで、その中からTOTALFATが作った楽曲をいかにカッコよく聴かせるかを主軸に、「ここのフレーズで、こういうのを聴いてみたいんだけど」って提案してくれたり。
Bunta 最初、プロデューサーっていったら音を足していくような作業が多いのかとか思ってたけど、実際には逆で。効果的に音を引く作業が多くて、それがすごい良かったですね。
Shun 「ここでこういうフィルを入れたい」みたいなプレイヤーのエゴもあるけど、そういうのってレコーディングの中でディレクションを少し間違うと、曲が複雑になって聞こえづらくなったりするんです。でも、岡野さんはプレイヤーのアピールしたい気持ちとかを全部踏まえた上で、1曲の中のベクトルをバッと揃えて攻撃力を増してくれる。自分たちが作った曲が5分おきにどんどん良くなっていくのを目の前で見て、本当に衝撃を受けましたね。あとは、一緒に楽しんでくれたのがデカかったかな。岡野さんはレコーディングした曲をチェックするときに、絶対にエアギターをするんですよ。しかもエアギターの指の動きがすごい完璧で、音と同期してるし(笑)。
──岡野さん自身がもともとベーシストだし、プレイヤーとしての視点で「やってる側が楽しくなくちゃ」っていうのをわかってるのかもしれないですね。
Shun それはあると思います。実際、岡野さんもコーラスに参加して、「もっとメタルな曲ないの!? アルバム(をメタルで)汚そうよ!」って楽しんじゃってたし(笑)。
──楽しみながら作ってるから、聴いてるだけで笑顔になる作品に仕上がったんですね。
Jose そういう空気や雰囲気は、間違いなくCDに入ってるよね。
Shun 過去最高に楽しい現場でした。以前だったら緊張して「あぁ、大丈夫かな」って気持ちのほうが強かったけど、今回は岡野さんと会えるのがいつも楽しみで。
Bunta スケジュール的には追い込まれたけど、気持ち的には全然追い込まれなかったし。
Shun うん。スケジュールが追い込まれてるのに気持ちが追い込まれないのって、ホント究極だと思うんですよ。やっぱり楽しいからこそ遊びが生まれて、その遊びが曲にとってすごい良いものになったり、思いつきでコーラスを入れても結果的に良いものになっているのは、本当にすごいと思います。
「キッズが1回聴いただけで頭から離れなくなる曲」
──「Summer Frequence」のビデオクリップも観ましたが、パーティ感が強く出たこの曲にぴったりの内容ですよね。
Shun 今どきあまりない、中学生っぽい感じで(笑)。
──でも、今はああいうバカバカしい内容のビデオを作れるバンドが、すごく少なくなってる気がして。
Shun そうですね。複雑な音楽とか奇をてらったサウンドが人気だったり、そういうバンドがメインストリームに上がってきたりすることはすごいと思うんですけど、本当にシンプルな部分で勝負して、あくまでポジティブに一直線で行く音楽の存在意義って、今だからこそさらに必要とされているのかなと。TOTALFATがやるべきことっていうのは、その発信するメッセージやライブ会場の雰囲気において、僕たちが原点としてるTHE OFFSPRINGから受けた影響をそのまま出していくことだと思うし、僕らはそれしかできないと思っているんです。そこは自分たちのルーツに忠実に、伝えるべきものはあくまでポジティブに、得るものはあくまで笑顔、というところで勝負したいですね。
──これからツアーが始まって、夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」「京都大作戦」への出演も決定しています。いろんな場所で、普段TOTALFATの音に触れる機会の少ない人たちにこの音を届けることができそうですね。
Shun THE OFFSPRINGのデクスター(・ホーランド)に言われたのがまさにそこで。「キッズが1回聴いただけで頭から離れなくなる曲を、おまえたちは作れ」と言われたんですけど、このアルバムはそういう作品になっていると思います!!
CD収録曲
- Invention ~Good morning,my treasures~
- Ryan,Don't Worry
- Summer Frequence
- Sacrifice
- Ain't Gonna Kill
- The Roundabout
- The Wonderful World
- In Your Hands
- Predator
- Bruised
- Smile
- Hide and Seek
- One Last Time, I'll Try To Be With You
- Overdrive
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo,B)、Jose(Vo,G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。 数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」や「SUMMER SONIC 09」にも出演している。