音楽ナタリー PowerPush - THE PINBALLS
初フルアルバムで「現代の侍」目指す
THE PINBALLSが1stフルアルバム「THE PINBALLS」をリリースする。前作「ONE EYED WILLY」からおよそ10カ月ぶりにドロップされる今作には、「プリンキピア」など既発楽曲のリテイクを含む全12曲を収録。ヘビーなミドルチューンや疾走感あふれるガレージロック、切ないメロディが印象的なポップチューンなど、これまで以上にバラエティに富んだ内容に仕上がっている。
「ONE EYED WILLY」発表まで「なんにも起こらなかった」と吐露した前回のインタビュー(参照:THE PINBALLS「ONE EYED WILLY」インタビュー)を経て、彼らは今どういう状況にいるのか。そしてどのような思いを込めて今作を制作したのか。古川貴之(Vo)、中屋智裕(G)に話を聞いた。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類
「なんでもっと売れないんだ」っていう怒り
──この1年で周りの状況に何か変化はありましたか?
中屋智裕(G) そんなには……(笑)。
古川貴之(Vo) そうなんです。僕的には……すっごくいいアルバムなのになんでもっと売れないんだ、評価されないんだっていう怒りがあって。もっと騒いだっていいはずだぜって常に思ってたんですけど……まあそうは言いつつも、これが現実だよなとも思っていて。前回のインタビューでもお話しましたけど、どん底の状態で6、7年続けてきたバンドなので、そこは全然へこたれないぜという気持ちでやってきました。
──前作に対する気持ちは今でも変わらず?
古川 はい。だからもっと力づくでやらないと、わからせないとっていう気持ちが強くなって、今回の1stフルアルバムも1曲目から怒りとか感情をストレートに出した激しい曲から始めようと思ったんです。このアルバムには少なからずそういう反骨精神が込められているのかも。今まではここまで攻撃的な曲ってあんまりなかったと思うんですけど、「カルタゴ滅ぶべし」はすごく攻撃的な気がしますね。
──そういう感情をストレートに出すということも含めて、今回は初のフルアルバムということもあって歌詞的にもサウンド的にもいろいろ挑戦してますね。
古川 はい、いろいろやりました。まずこれまでのミニアルバムと比べて曲数が増えるので、アナログ盤で言うところのA面、B面を意識したところがあって。6曲目のインストナンバー「農園の婚礼」はアルバムにおけるインターミッション的な役割だと思っていて、映画で言ったら「ベン・ハー」とか「風と共に去りぬ」のインターミッションみたいなイメージの楽曲なんです。ちょっと箸休めというか、このインストが流れてる間にタバコを吸ってきてもいいよみたいな。そういうことは考えましたね。
──そういうポイントも、ちょっと昔ながらのロックアルバムを彷彿とさせますね。前回のインタビューでも話しましたけど、THE PINBALLSのルーツって60年代のブリティッシュビートやガレージロックだと思うんですが、実際に鳴らされている音はそこからの影響を受けつつも完全に2014年のサウンドなんですよね。そういうところが現在海外で活躍している若手バンドにも通ずると思うんです。
中屋 そこは意識はあんまりしてなかったです。好きで聴いてる音楽とか憧れてる音楽とかをそのまんまやりたいっていう気持ちもあんまりなかったし。なのですごく自然な感じでこうなった気がしてます。
古川 結果としてKANA-BOONみたいなバンドだけじゃなくて、the NEATBEATSやYellow Studsのようなルーツを大切にしたバンドとも対バンできる。そこは本当に面白いと思うし、THE PINBALLSの強みなんでしょうね。
歳は取ったけどやっとスタートラインに立てた
──結成から8年にして、ついにフルアルバムが発表されるわけですが。
古川 フルアルバムが出せるってことは、僕が想像してる以上にすごいことなんだろうなと思っていて。なんだかんだ言って初めてだもんね、12曲入りの作品を作るのは。そういうことを踏まえて、実はここからが本当のスタートなんじゃないかと思ってるんです。
──なるほど。
古川 僕、もう30歳なんですけど、本当なら30歳ってバンドマンとしてピークを迎える時期なんじゃないかと思ったりもするんですよ。だってTHE YELLOW MONKEYなんて吉井(和哉)さんが30歳の頃、めちゃめちゃ売れてたわけじゃないですか。そう考えると、もう続けていても意味ないんじゃないかとすら思うんですけど、逆に僕らの場合は前作「ONE EYED WILLY」を出すまでずっと遠回りしていただけで、歳は取ったけどやっとここで本当にスタートラインに立てたんじゃないかとも思うわけです。
──そういう意味では前作はスタートラインに立つための助走だったのかもしれないですね。
古川 歳取ってくると、「これ、あと4年早ければなあ」と思うことが多くて(笑)。このアルバムもハタチのときに出せてたらよかったなあと思うんですけどね。
──逆にハタチのときにこのアルバムを作ったとしても、これと同じ内容にはならないと思いますよ。この8年間の活動があったから、こういう結果になったわけですし。
古川 そうですよね。やっぱり若さばっかりに憧れるのは違うんですかね(笑)。
──若さならではの素晴らしさはもちろんあると思いますが、年齢や経験を重ねることで出せる音っていうのも確実にあると思います。このアルバムはまさにそういう作品だと思うんですよね。
古川 なるほどなあ……そう言っていただけて、ホッとしました(笑)。
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収録曲
- カルタゴ滅ぶべし
- FREAKS' SHOW
- 冬のハンター
- way of 春風
- (baby I'm sorry) what you want
- 農園の婚礼
- 真夏のシューメイカー
- プリンキピア
- 漁船の唄
- fall of the magic kingdom
- 樫の木島の夜の唄
- まぬけなドンキー
THE PINBALLS "DONKEY KNOWS WHAT IS LOVE" TOUR
- 2014年9月20日(土)広島県 HIROSHIMA 4.14
- 2014年9月21日(日)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2014年9月22日(月)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2014年9月25日(木)東京都 下北沢GARDEN
- 2014年9月27日(土)福岡県 kokura FUSE
- 2014年9月28日(日)大分県 club SPOT
- 2014年10月13日(月・祝)大阪府 ミナミ地区(「MINAMI WHEEL 2014」への出演)
- 2014年10月18日(土)東京都 下北沢Daisy Bar(アウトストアイベント)
- 2014年11月23日(日)山梨県 KAZOO HALL
- 2014年12月6日(土)長野県 ALECX
THE PINBALLS "DONKEY KNOWS WHAT IS LOVE" ONE-MAN TOUR
- 2014年12月12日(金)愛知県 SAKAE R.A.D
- 2014年12月13日(土)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
- 2014年12月20日(土)東京都 新代田FEVER
THE PINBALLS(ピンボールズ)
2006年に古川貴之(Vo)、中屋智裕(G)、森下拓貴(B)、石原天(Dr)の4人で結成されたガレージロックバンド。2010年、タワーレコード初のアーティスト発掘オーディション「Knockin' on TOWER's Door」にて、応募総数1006組の中から見事1位に輝く。2011年にはシングル「アンテナ」、ミニアルバム「ten bear(s)」を発表。その後も「TREASURE」「MUSIC CITY TENJIN」「MINAMI WHEEL」「SUMMER SONIC」など数々のフェスやイベントに出演し、知名度を高めていく。2013年11月、3rdミニアルバム「ONE EYED WILLY」を発売。翌2014年9月には初のフルアルバム「THE PINBALLS」をリリースする。