ナタリー PowerPush - THE PINBALLS

ラストチャンスに賭けたガレージバンドが放つ完全無欠のロックンロールアルバム

THE PINBALLSの最新ミニアルバム「ONE EYED WILLY」がリリースされた。前作「100 years on spaceship」から1年7カ月ぶりに発表される今作では、60年代のブリティッシュビートから影響を受けつつもさらに現代的な進化を遂げた、オリジナリティあふれるロックンロールを堪能することができる。

ナタリー初登場となる今回は古川貴之(Vo)、中屋智裕(G)にインタビューを実施。バンド結成から現在までの道のり、そして自信作「ONE EYED WILLY」の魅力をたっぷり語ってもらった。

構成・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

ライブを続けても「なんにも起こんねえな」

──THE PINBALLSは2006年に結成されたそうですが、皆さんどうやって知り合ったんですか?

古川貴之(Vo)

古川貴之(Vo) 実はみんな別々のバンドで活動していたけど、ずっと顔見知りだったんです。そんな中で僕と中屋くんは小学校から一緒で、バンドを組む前からエアガンとかで遊んでた仲なんですけど(笑)。で、それぞれのバンドがうまくいかなくて、22歳ぐらいの頃かな……周りが進路を決め始める中、僕はバンドを続けたくて。ラストチャンスじゃないですけど、敗者復活戦みたいな感じで「まだバンドをやりたいんだ!」って人間を集めて組んだのがTHE PINBALLSなんです。

──このメンバーが集まったときには、すでにTHE PINBALLSでこういう音楽をやりたいという考えは明確にあったんですか。

古川 ありました。その時点に考えてたことと、今やってることはそんなに変わってないと思います。

中屋智裕(G) 僕らはThe BeatlesやThe Rolling Stone、The Who、The Kinksみたいなバンドが大好きで。そういったバンドを土台にしながら、どんどんオリジナル曲を作っていきました。

──結成から最初に全国流通のCDをリリースする2011年までずいぶん時間が空いていますが、その期間はただひたすらライブ活動を行っていた?

古川 そうですね。でも、ライブを中心にって言うと聞こえはいいですけど、正直どうしていいのかわからないところも多くて。例えば「CDってどうやって出すんだろう?」とか(笑)。そういう時期が長かったんですよ、僕ら。

──じゃあ、ほかに何をしていいかわからないから、ひたすらライブをやっていたと?

古川 いいライブをしてればどんどんお客さんが入って、レコード会社から声がかかってデビューできるんだろう、ぐらいの考えしかなくて。で、ライブを続けるんですけど、なんにも起こんねえな、と(笑)。全然道が開けなくて絶望感がありましたよ。「これがラストチャンスだ!」と思ってちゃんとやってるつもりではいたんですけど状況は何も変わらなくて、出口が見えなくなって恐怖感しかないし。

中屋 ただライブしかやることがわからなかっただけなんです(笑)。

──ライブをやっても手応えは感じなかった?

古川 お客さんの反応もあまりよくなくて。自分たちでは「俺たち絶対に才能あるんだけどな」と思う反面、お客さんのリアクションで落ち込むことも多かったです。

やっと険しい道を進むための体ができあがった

──そんな下積み時代を経て、大きな転機になったのが2010年に行われたタワーレコード初のアーティスト発掘オーディション「Knockin' on TOWER's Door」。THE PINBALLSはここで見事1位に輝きました。

中屋智裕(G)

中屋 転機には違いないんですけど、でも「じゃあ明日から」っていろいろ物事が進展しても、そこに意識がなかなかついていけなくて。レコーディングして、撮影をして、そういったことを1つひとつやっていく中で、いろいろ勉強していって、意識がついてきたのは時間がちょっと経ってからのことでした。

古川 そうだね。

中屋 そのときはとにかく必死で。状況が変わったことで、それに対応しようとして自分の気持ちにも変化があったし、バンド内にも変化が生じたし。でもただ対応するだけじゃなくて、前に進んでいかなきゃ意味がないわけで、必死にもがいてましたね。それは今も変わらないんですけど(笑)。

古川 正直言えば1枚目(2011年発売のミニアルバム「ten bear(s)」)を出して、生活がもっと劇的に変わると思ってたんですよ。もっと楽になるんだろうなって。でも実際にはより険しくなっていって、2枚目(2012年発売のミニアルバム「100 years on spaceship」)を経てやっと険しい道を進むための体ができあがった気がしてます。「あ、このまま進んでいけるぞ」って。

裏テーマは「泥臭いLOW」

──どんな困難にも立ち向かえる状態になった今、満を持して新作「ONE EYED WILLY」がリリースされます。実はこのアルバムを聴いて、それ以前の2枚と比べると全体の音が太くなっていて驚いたんです。バンドのタフさが前面に押し出されていて、バンドとして何か意識の変化があったのかなと感じていたんですが、今までの話を聞いて納得できた気がしました。

古川貴之(Vo)

古川 やっぱりさっき言った「体ができてきた」感じが出てるんでしょうね。ぶっちゃけ、これから初めてライブハウスに立つ新入生くらいな気持ちでいますよ。ここにたどり着くまでに6、7年かかっちゃいましたけど(笑)。

──でも下積みを6、7年続けてきたバンドならではの強さは、絶対にあると思いますよ。

古川 本当は6年生なのに1年生の奴らと一緒に並んだら体格が違いすぎて、ある意味ズルだと思いますよ(笑)。

──回り道はあったかもしれないけど、その経験があったからこその今だと思いますよ。それでは曲作りやアレンジにおいては、以前と何か変わったところはありますか?

中屋 曲作りに関しては今までやってきたこととそんなに変わってなくて。ロックバンドってみんなそうだとは思うんですけど、自分たちがカッコいいと思うことをやろう、そのシンプルな考えが大元にあるんじゃないですかね。音作りに関して言えば、今回の曲は帯域を少し下げるのが一番合ってると思っていて。裏テーマじゃないですけど、「泥臭いLOW」を作ろうと考えて、楽器の鳴りもそうですし、ミックスやマスタリングのときもそれを一番考えてたかもしれない。

──今回のアルバムの楽曲って普遍性を持ったロックナンバーばかりですが、「泥臭いLOW」を意識した音作りによってすごく現代的なサウンドになっている気がします。そこが過去2作との大きな違いだと思いますが?

古川 そう言っていただいてすごいうれしいんですけど、今っぽい音とかそういうこと、僕らはあまり意識してないんですよ。今の若い人に受け入れられるのはどういう音楽なんだろうとか、そういうことに意識的なバンドはすごいなと思うんですけど、自分たちにはできないというか。自分たちは今を生きていて音を鳴らしている、その無意識に出てくる音が「今の音」なのであって、逆に「今の音」を鳴らそうと意識するとそれがもう過去のものになってるのかなという気もするんです。

ミニアルバム「ONE EYED WILLY」/ 2013年11月13日発売 / No Big Deal Records / NBDL-0009
[CD] 1890円 / NBDL-0009
収録曲
  1. friendly gently ghost
  2. carnival come
  3. 片目のウィリー
  4. 蛇の目のブルース
  5. deep sea song
  6. protect her, St.Christopher
  7. 蜂の巣のバラード
THE PINBALLS(ぴんぼーるず)

2006年に古川貴之(Vo)、中屋智裕(G)、森下拓貴(B)、石原天(Dr)の4人で結成されたガレージロックバンド。The Rolling Stones、The Whoに代表されるブリティッシュロックをルーツにした、荒々しくも歌心あふれる楽曲を武器にライブ活動を続けてきた。2010年、タワーレコード初のアーティスト発掘オーディション「Knockin' on TOWER's Door」にて、応募総数1006組の中から見事1位に輝く。2011年にはシングル「アンテナ」、ミニアルバム「ten bear(s)」をリリース。その後も「TREASURE」「MUSIC CITY TENJIN」「MINAMI WHEEL」「SUMMER SONIC」など数々のフェス / イベントに出演し、知名度を高めていく。2013年11月、3rdミニアルバム「ONE EYED WILLY」をリリース。