ナタリー PowerPush - the HIATUS

細美武士が語るバンドの現在位置

バンド始動から3年。the HIATUSは2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」をリリースした。本作でthe HIATUSのサウンドはエモーショナルなバンドサウンドから、オーガニックかつプログレッシブなものへと劇的に進化を遂げる。そして2012年9月、彼らはレコード会社をユニバーサルミュージックへ移籍。その第1弾として映像作品「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表した。

ストリングスやホーンを交えた15人編成のバンドで「A World Of Pandemonium」の進化形をライブ映像で映し出すこの作品から、the HIATUSは果たしてどこへ向かうのか。ナタリー初登場となるボーカル、ギターの細美武士に話を聞いた。

取材・文 小野田雄 / インタビュー撮影 井出眞諭

 
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「A World Of Pandemonium」は混沌とした作品

インタビュー写真

──まず、昨年11月にリリースした3rdアルバム「A World Of Pandemonium」は現時点で細美さんにとって、どんなアルバムなんでしょうか?

バンドにとっては、5人それぞれの持ち味をフルに活かしながら、誰か1人のイメージが先行するんじゃなく、the HIATUSというバンドの独自のフォーマットに着地させることができたアルバムだと思います。あのアルバムの制作過程としては、半分くらい作っていた時期に震災が起きて、作業を一旦中断したので、完成までに1年くらいかかりました。でも、いろんなことを考えながら、腰を据えて作ることができた作品だったんですね。自分たちの中では1枚目も2枚目も楽しみながら作ったアルバムだったんですけど、その過程で作曲のやり方もどんどん変わってきて、3rdアルバムでは特定の作曲者が立つんじゃなく、the HIATUSとして全員が参加したし、それによってオリジナリティが生まれて、バンドとしてギアチェンジのタイミングにあたる作品になったなと思いますね。

──日本語で“大混乱の世界”という意味の「A World Of Pandemonium」というアルバムタイトル、それから作品を聴きながら旅していくような流れを踏まえて、アルバムを作っていた1年間の精神状態は内容とどのようにリンクしていると思いますか?

あくまで自分の個人的な感覚なんですが、メロディが既に存在しているとすれば、その時点でメロディがなんらかのメッセージを発してると理解してます。そして、そのメロディが何を主張しているのかを明確に言語化することが自分にとっては作詞なんですね。だから、自分のイデオロギーやメッセージありきで歌詞を書いているわけではないんですけど、前提となる音を生む段階でメンバーそれぞれが感じているものは当然入ってくるので、卵が先かニワトリが先かよくわからないまま、結果的に自分たちのメンタルが作品に反映されていくんだと思います。

──細美さんにとっての歌詞とはつまりそういうものであると。

その上で、3rdアルバムを作るときの周囲のバイブレーションが安定か混乱か、そのどちらだったかといえば、混乱、混沌としていた時期がありました。その混乱、混沌というのは、言ってみれば、色が一色に決まっていない状態、絵の具のいろんな色がぐしゃぐしゃっとなった状態であって、逆に言えば、そこから何色にしていくのか自分たちで決めることができるタイミングだったと思うんですね。つまりその混乱や混沌を、次の安定に向かっていく、そのスタートとしてポジティブに捉えようと、自分の中で早めにスイッチが切り替わったんです。そういう変化の結果はあのアルバムに表れている気がしますね。

アコースティックギターに持ち替えた理由

──音楽的にも「A World Of Pandemonium」は大きな飛躍を遂げた作品ですが、そのひとつに細美さんがエレクトリックギターをアコースティックギターに持ち替えた点が挙げられます。

ひとつは単純にアコギの音が自分には新鮮に感じられたし、面白かったんですよね。ただ、先に何か新しいことをやらなきゃっていう思いがあったわけじゃないです。レコーディングのときは、毎回スタジオに自分の持ってるギターをあらかた持ち込んで、ピンときたギターを弾くっていう作業になるんですけど、今回は気付いたらアコギを手にすることが多かったです。あと柏倉隆史のドラムがすごく有機的なので、単純にエレキのストロークを8分とかで弾くっていうんじゃなく、シンコペートしたり、ポリリズミックになるように音と音の隙間にギターを入れるには細かくフレーズを刻めるアコギのほうが絡みやすかったっていう理由もあります。

──その柏倉さんのドラムは曲に寄り添うことで、定型の8ビート、16ビートからはみ出した変拍子になっていくプレイスタイルですよね。3rdアルバムは、その変拍子のリズムアプローチを押し進めた作品だと思うんですが。

聴いているとそう感じるのかもしれないですけど、やっている側にとってはごく自然なことなんですけどね、俺らにとっては。8ビートのシンプルな4コードの曲を作ることとハードルの高さはあんま変わんないっていうか、既存のフォーマットで曲を作ろうとするほうがみんな頭を抱え込んでしまうかもしれないです。

DVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」2012年9月12日発売 / NAYUTAWAVE RECORDS

収録曲
  1. Deerhounds
  2. Superblock
  3. The Tower and The Snake
  4. Souls
  5. Bittersweet / Hatching Mayflies
  6. Broccoli
  7. Flyleaf
  8. Shimmer
  9. Snowflakes
  10. On Your Way Home
  11. The Flare
the HIATUS(ざ はいえいたす)

現在活動休止中のELLEGARDENのフロントマン・細美武士を中心に結成され、ウエノコウジ(B)、堀江博久(Key)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)、一瀬正和(Dr)、伊澤一葉(Key)が参加するバンド。2009年4月にパンクロックフェス「PUNKSPRING 09」で初ライブを披露し、同年5月に1stアルバム「Trash We'd Love」をリリースした。その後もオルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつジャンル不問の新しい音楽を追究。2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」が発売される。(9月12日より同アルバムのiTunes配信がスタート) そして2012年9月にレーベルをNAYUTAWAVE RECORDSへ移籍し、「A World Of Pandemonium」にストリングスとホーンアレンジを加えたスタジオセッションドキュメンタリーDVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表。11月からは初のホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を開催する。