音楽ナタリー Power Push - 荒井岳史×三浦康嗣×村田シゲ×一瀬正和

バンドみたいなソロ第2作「プリテンダー」

the band apartの荒井岳史(Vo,G)が2枚目のソロアルバム「プリテンダー」を発表した。1980年代のJ-POPテイストを感じさせる「あの夏のイリュージョン」、フォークロック調のサウンドが印象的な「あきらめの街抜けて」、岩崎愛をゲストボーカルに招いたエレクトロポップチューン「ワンモアタイム」など全10曲を収録した本作は、ソロアーティスト・荒井岳史の新たな可能性を示す作品に仕上がっている。

今回音楽ナタリーでは、荒井とアルバムのプロデュースを手がけた三浦康嗣(□□□)、レコーディングに参加した村田シゲ(B / □□□、CUBISMO GRAFICO FIVE、Circle Darko)と一瀬正和(Dr / ASPARAGUS、the HIATUS、MONOEYES)による座談会を企画。酒を飲みながら和気あいあいとした雰囲気の中で新作「プリテンダー」について語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 江森康之

益子樹さんにお願いした時点で8割終わった

──荒井さんの2ndソロアルバム「プリテンダー」が完成しました。今回は□□□の三浦さんがプロデューサーとして全面的に参加しています。

座談会の様子。

荒井岳史 前回の「beside」では三浦にアレンジャーとして参加したもらったんですけど(「マボロシ」「思い出さない」の編曲を担当)、今回はまず「三浦にプロデュースしてもらいたい」というのが最初にあったんです。単純に前回のアレンジがよかったし、年齢が同じっていうのもあって、シックリきてたんですよね。同世代ならではの共通項もあるし、まったく違うところもあるっていうバランスがよくて。

三浦康嗣 荒井くんから話をもらったときは「ありがたいな」って思いましたね。前のアルバムのときは2曲でアレンジをやらせてもらったんですけど、それもまったくの偶然だったんです。僕がthe band apartのスタジオで別件のリハーサルをやってたら、そこでたまたま荒井くんもソロアルバムの曲作りをやってたのがきっかけで。

荒井 うん。

三浦 そのときだけで終わらず、また頼まれるのはやっぱりうれしいですよね。いろんなアーティストの方にプロデューサーとして関わらせてもらってますけど、「1回やって終わり」ってことも多いし。

村田シゲ ハハハハハ(笑)。誰のこと?

三浦 いや、それは別にいいんですけど(笑)、相手の人が「いいな」って思ってくれないと、2度目は頼まれないじゃないですか。

荒井 まだ具体的なことが何も決まってないときに、三浦と話をしたんですよね。

三浦 そうそう。最初に飲みながら打ち合わせしたときに荒井くんが「“バンアパの荒井岳史”とは違うことをやりたい」って言ってて。そうなると音質やミックスも大事だから、エンジニアを益子樹さんにお願いしようっていうことになって。その時点で僕の仕事の8割が終わりましたね。

荒井 (笑)。その打ち合わせのときに「前回と同じメンバーで楽しくレコーディングしたいね」っていう話になったんですよ。「beside」のレコ発ライブも今日集まったこのメンバーだったんですけど、そのときの印象もすごくよかったので。

──村田さん、一瀬さんとの交流が始まったのは、どんなきっかけだったんですか?

村田 僕はFRONTIER BACKYARDのサポートをやってたときですね。バンアパと何度か一緒にライブをやって、そのときに仲良くなったのかな? 同い年っていうのもあったし。

荒井 7年くらい前だよね。

村田 うん。あと、荒井が1人で弾き語りライブをやり始めたときに「この人はちゃんと社会的なところがあるんだな」って思ったんですよ。バンアパって社会性が欠けてるというか(笑)、独立した社会を作り過ぎている印象があって。

荒井岳史

荒井 反社会的ではないけど、社会性はないよね(笑)。

村田 とにかく独特なバンドなんですけど、荒井が「僕はどこでも弾き語りしますよ」ってライブをやり始めたときに「この人はしゃべりかけても大丈夫そうだな」って。

三浦 打てば響くヤツだと(笑)。

荒井 何だよ、それ(笑)。塾長(一瀬)とは知り合って15年くらいになる?

一瀬正和 そうだね。ASPARAGUSというバンドを始めたときに、最初にライブに誘ってくれたのがバンアパだったんですよ。ボーカル(渡邊忍)が前にやっていたバンド(CAPTAIN HEDGE HOG)の頃から交流があって、音源も何もないのに「一緒にやろう」って言ってくれて。

荒井 そう言えばだいぶ後の話ですけど、「もしソロをやることになったら、絶対にドラムをお願いしたい」って話したことがあって。

一瀬 それは覚えてる。でも、ソロの最初のライブは違うドラマーとやってたんだよね。実はすごく嫉妬してたんですけど、本格的にソロが始まったときに呼んでもらえてよかったです(笑)。

荒井岳史 2ndアルバム「プリテンダー」 / 2016年2月3日発売 / 3240円 / binyl records/KATSUSA PLANNING / KATS-1004
「プリテンダー」
収録曲
  1. あの夏のイリュージョン
  2. サヨナラを君に言う
  3. ダンス・ウィズ・ザ・ワールド
  4. 玉手箱
  5. TMKN
  6. 花火
  7. 23:55~あきらめの街~
  8. あきらめの街抜けて
  9. ワンモアタイム
荒井岳史 2nd full album”プリテンダー”release TOUR
2016年4月17日(日)宮城県 PARK SQUARE
2016年4月20日(水)愛知県 池下CLUB UPSET
2016年5月3日(火・祝)広島県 福山Cable
2016年5月5日(木・祝)福岡県 Queblick
2016年5月7日(土)香川県 高松TOONICE
2016年5月12日(木)東京都 新代田FEVER
2016年6月5日(日)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
荒井岳史(アライタケシ)
荒井岳史

1978年生まれ。1998年よりthe band apartのギターボーカルとして活動。伸びやかで甘いボーカルと、卓越したギタープレイで多くのリスナーを魅了する。バンド活動と並行して、2013年8月に初のソロ作品「sparklers」、2014年6月に初のソロフルアルバム「beside」を発表。2016年2月に三浦康嗣(□□□)をプロデューサーに迎えて2ndアルバム「プリテンダー」をリリース。

三浦康嗣(ミウラコウシ)
三浦康嗣

1998年に自身が中心となり□□□を結成。歌モノ、ヒップホップ、ソウル、ハウス、テクノ、ジャズなどあらゆる音楽を取り入れた楽曲を発表し、音楽シーンの中で独自のスタンスを築き上げる。アレンジャー、プロデューサーとしても活躍しており、2014年3月に自身の作品をまとめた作品集「WORK」を発表した。

村田シゲ(ムラタシゲ)
村田シゲ

三浦康嗣といとうせいこうとのユニット・□□□(クチロロ)や松田岳二率いるCUBISMO GRAFICO FIVE、自身がリーダーを務めるCircle Darkoで活躍する一方、FRONTIER BACKYARD、フルカワユタカ、LOW IQ 01といった多数のアーティストのサポートベーシストも務める。またUSTREAM番組「熊枠」ではVJを担当している。

一瀬正和(イチセマサカズ)
一瀬正和

popcatcher解散後、2002年に渡邊忍、山下潤一郎とともにASPARAGUSを結成し、ライブをメインに活動を展開。細美武士を中心に結成されたthe HIATUSおよびMONOEYESのドラマーとしても活躍。また神奈川・横浜でスタジオを経営しているほか、ドラムセミナーも開催している。