音楽ナタリー PowerPush - BOOM BOOM SATELLITES
“生きた証”の作り方
BOOM BOOM SATELLITESがニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」を2月4日にリリースした。2年ぶりのリリースとなる今作は制作期間中に川島道行(Vo, G)の4度目の脳腫瘍発症が発覚するも、治療を行いながら完成させた作品。ジャケットには“生命力の象徴”として花が描かれ、各収録曲にはみずみずしさと無機質さを兼ね備えたサウンドが凝縮されている。
ナタリーでは川島と中野雅之(Programming, B)にインタビューを実施し、アルバムに込めた思いを聞いた。さらに川島とthe HIATUSの細美武士(Vo, G)による対談、中野とねごとの蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)による対談も展開。世代を超えたアーティスト同士の対話を通じて、それぞれにとっての創作におけるこだわりを話してもらった。
取材・文 / 宇野維正(P1~3)、田中和宏(P4~7) 撮影 / 上山陽介
BOOM BOOM SATELLITES インタビュー
この時代に出す意味のある作品
──1月(取材時)にこんなことを言うのも先走りすぎですけど、今年の年末に2015年の年間ベストを振り返ったときに、そこでまず名前が挙がるのはこの作品なんじゃないかと思えるような、本当に素晴らしいアルバムで。デビューから15年以上も経って、こんなに新鮮な作品が生まれることがあるんだって驚きました。デビュー当初から取材をさせてもらってますけど、もうあれからずいぶん経ちますよね?
中野雅之(Programming, B) そうですね。結成からだと、えーと……24年くらい?
──24年! ひと昔前ならThe Rolling Stonesとかでしか聞かなかったようなキャリアの長さですね(笑)。
中野 とうとうそんなことになってしまった(笑)。
──これまでも過去の焼き直しのような作品は1作もなかったですけど、今回自分で驚いたのは、この作品を聴いたあと、気が付いたらふと鼻歌で歌っちゃったりしているんですよ。「え? 今、俺、ブンブンの歌を鼻歌で歌ってたな」って(笑)。
中野 へえー!
──長年ブンブンの音楽を聴いてきて、そういう経験はこれまでなかったなって(笑)。ポップミュージックとしての強度が飛躍的に上がっていて。
川島道行(Vo, G) 今回の作品はBOOM BOOM SATELLITESとして、スタンダードになるような音楽をようやく作ることができたと思います。
中野 このアルバムの制作は、純粋に曲を作るというところから始めたんですね。周りのアーティストに対しての距離感とか、時代の中での音楽のあり方の変化だとか、そういうことをまったく考えないで曲を作ろうというところからスタートしていて。ただ結果としては、この時代に出す意味がある作品になったなって。
──それは、具体的に言うと?
中野 今って、音楽全般における“作品作り”の比重が軽くなっている時代だと思うんですね。どのバンドもライブでどう展開していくかってことを中心に考えていて。お客さんにとっても、CDがどんどん物販のグッズに近付いていっている。バンドのファン層によっては、CDよりも物販のほうが価値のあるものになってきている。それは、ずっと音楽を作品として聴いて育ってきた自分にとっては悲しいことで。やっぱり自分は、音楽を作品として残すことに力を注いで生きていきたいなって。この先、どんなに流通のシステムが変わったとしても、作品とライブの比重がさらに変化していったとしても、俺たちはこれからもずっと作品作りを中心に据えて、それを全力でやっていくってことを、このアルバムで改めて示すことができたと思います。
アルバムにはパーソナルな革命を起こす力がある
──その問題意識は、2010年にリリースされた「TO THE LOVELESS」の時点でありましたよね。あれから約5年経って、さらにそういう気持ちが強まってきている?
中野 さらに強まりましたね。明らかに。実は、ここ数年フェスやイベントに出て実感するのは「いいアーティストが増えたな」ってことなんですよ。日本のポップスもロックも、2000年代と比べると、2010年代のほうが面白いことをやっているアーティストが増えてきているなって。ただ、作品とライブのバランスというのが、5年前と比べても、さらに変わってきていて。そういう人たちの音楽をCDでも楽しめるかと言うとちょっと違う。僕はアルバムっていうものが好きなんですよ。
──アルバムという作品形態そのものに思い入れがある?
中野 あります。音楽で社会に革命を起こすことはできないけれど、聴き手にパーソナルな革命を起こすことができるくらいのすごい力が、アルバムというアートフォームにはあると思うから。
──3分のポップソングではなく、1時間近くあるアルバムだからこそできることがあると。
中野 そうです。それに僕は、10年経っても20年経ってもそこに聴く価値を持たせることができるのもアルバムの役割だと思っていて。自分はそういうものを作っていきたいんです。客観的に自分たちを見ても、そういうタイプのアーティストなんだろうなって思うんですよね。刹那的に今を切り取っていくタイプのアーティストではなくて。でも、それは今回の作品を作った後に改めて思ったことであって、そういうことを念頭に作っていたわけじゃないんですけど。
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- ニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」2015年2月4日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+CD-ROM] 3780円 / SRCL-8688~9
- 通常盤 [CD] 3240円 / SRCL-8690
CD収録曲
- SHINE
- ONLY BLOOD
- COMPLICATED
- A HUNDRED SUNS
- VANISHING
- BACK IN BLACK
- THE MOTH(attracted the flame)
- BLIND BIRD
- OVERCOME
- STAIN
- EMERGENCE
初回限定盤CD-ROM収録内容
- SAMPLING DATE DISC A HUNDERED SUNS -STEM-
BOOM BOOM SATELLITES(ブンブンサテライツ)
中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」を、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、海外ツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2013年1月にはオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表。自身の楽曲のパーツを提供し、リミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開するも、川島の脳腫瘍治療のため5月の日本武道館公演までライブ活動を休止。11月に同公演の模様を収めたCD+DVD / Blu-ray「EXPERIENCED II -EMBRACE TOUR 2013 武道館-」をリリースした。2014年3月はワンマンツアー「TOUR 2014 STARTING OVER」を実施。その後4度目の発症となる川島の脳腫瘍の治療と並行し、数々のフェスやライブイベントに出演。2015年2月には2年ぶりのオリジナルアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」をリリース。3月にレコ発ライブをEX THEATER ROPPONGIにて開催し、5月には全国ツアー「FRONT CHAPTER Vol.4」を展開する。