新宿MARZでの衝撃的15分間

タイラダイスケ（FREE THROW）　僕がThe Flickersに出会ったのは新宿MARZで店長をやっていた2008年頃。当時MARZによく出てたバンドのメンバーのバースデーイベントがあって、1バンド15分くらいの持ち時間だったんだけど、そこでThe Flickersを初めて観た。

堀内祥太郎（B, Cho）　僕らはあんまり覚えてないんですけど、そのときのライブのことって覚えてます？

タイラ　よく覚えてるよ。ストイックなバンドだなって思った。バースデーイベントだからほかのバンドはお祝いのMCを挟んでたけど、The Flickersに関してはMCなしで。最後は安島くんが上半身裸になってステージから出て行ったっていうのが強烈だったな。

本吉“Nico”弘樹（Dr, Cho）　その1年後にもまた同じイベントに出させてもらいましたよね。

タイラ　そうそう。そのときのThe Flickersにはキーボーディストの女性がいて、4人編成になってたね。サウンド的な進化を感じたし、そのときは安島くんがキーボードの上に立ってギターを演奏してた。キーボーディストがいたのはどのくらいの期間だったっけ？

安島裕輔（Vo, G, Syn）　1年間くらいかな。その前に3人編成で活動していたのも1年くらいです。

タイラ　キーボーディストが抜けたことが打ち込みを導入するきっかけになったの？

安島　そうですね。4人編成のときに新しい曲を作ってたんですよ。でも突然脱退しちゃったから、シーケンサーを買ってなんとかしようと決めて。

タイラ　当時けっこう先までライブスケジュールが決まってて、しかもワンマンの直前にキーボードの子が脱退しちゃうっていう感じだったよね。

堀内　そりゃあ大変でした。本当に突然の出来事だったんで。でも安島くんは「（シーケンサーを導入して）もっと新曲作るぜ」って気合いを見せてたね。

安島　いなくなった次の日からもライブがあって、朝までスタジオで曲を作って、やれるところまでやって、未完成でも新曲2曲だけやって帰ってやるくらいの気持ちだった。

堀内　「今までやってた曲はやらない」っていうことにこだわってたよね。俺は「マジかよ……」って思ってたけど。

安島　そのときは「もう俺はギターも弾かない」って言って、口でドラムを歌うとか実験的というか、それまでの僕らからしたら前衛的な曲をいっぱい作った。実験的な曲を中心にした「Experimental Jet Set」っていうテーマでライブをやるようになったのはそのときの名残で。しっかり体制を立て直そうと前向きになってきてからシーケンサーを使って演奏するようになっていったんです。

新宿MARZでの思い出

タイラ　4人のThe Flickersも魅力的だったから、キーボードが抜けたって話を聞いたときはちょっと不安だったよ。でも3人に戻ってすごくサウンドがソリッドになった感じがして、結果的によかったんだなって。ライブ後、MARZの事務所でそんな話をしたね。

堀内　そうそう！ 覚えてますよ。

タイラ　メンバー抜けたのは大変だったけど、結果的にいい形に“戻った”っていう感じがしたね。安島くんは相変わらず毎回キレッキレなパフォーマンスをするし。

安島　うん。

タイラ　僕はライブハウスの店長をやってたとき、月に本当にたくさんのバンドを観るから、リアルなバンドなのかフェイクなバンドなのかってなんとなくわかる。The Flickersの場合は安島くんが突然何かの上に乗ったりとか、ギターをぶん投げたりとかしてるのを観て、ほかのバンドにはない気迫というかすごみを感じて、「感情むき出しってこういうことか」って思ったんだ。

安島　ライブ中に機材を破壊して全部終わりにしてやるみたいなのは本当いやだ（笑）。

タイラ　自分の機材でしょ？

安島　うん。もうそこで終わってしまえみたいな気持ちで毎回ステージに立ってた。

タイラ　常に完全燃焼と。

安島　今もそうだけど1本1本、夢中でやってただけで。

本吉　あと、当時は月20本くらいライブをやっていて、かなり多かったんですよね。ライブ終わったあとに深夜にスタジオ入って、またすぐライブみたいな。そんな活動をしてたから狂ったようなパフォーマンスになってたのかも（笑）。

KanakoとThe Flickersの出会い

タイラ　KanakoさんはThe Flickersのメンバーとはいつ知り合ったんですか？

Kanako（Syn）　ちょうどキーボードの子がいたときだから、2009年くらいかな。新宿JAMのイベントで対バンしたんだよね。

安島　うん。

Kanako　自分のバンドと当時のThe Flickersの編成がまったく同じだったんで、私は勝手にライバル視していて。

本吉　そうだったんだ。

Kanako　対バンの日、私が先に出番終わって、次のバンドはどんな感じかなって観に行ったら安島さんが叫びまくってて、お客さんはめっちゃノリノリだったの。それを観てすごく悔しい気持ちになったから、そのときはメンバーに話しかけなかった（笑）。

安島　はははは（笑）。

Kanako　一言も話してないはずよ。

安島　そうかもしれない。

Kanako　でもお互いに存在は覚えてて、2012年の「ROCKS TOKYO」で再会したときに初めて普通に話したんですよ。

堀内　Kanakoさん、あのときはさめざめでイベントに出てたんですよね。

Kanako　そう。ちょうどステージが同じで出番も近くて、楽屋で待機してたときに安島さんとちょっと目があったんだよね。

安島　キーボードがいなくなっちゃったときに、シーケンサーを買うと同時に代わりに弾いてくれる人を探そうと思って。そのときKanakoさんに連絡しようと思ったんだけど、初めて観たときからずっと覚えてたから。でもまあ話してないし連絡先知らないし。連絡取れないまま、シーケンサーに夢中になっていって3人での活動が続いてったんだけど、「ROCKS TOKYO」で会ったときに『手伝ってくれる人を探してKanakoさんに連絡取ろうとしたんだよ』っていう話をしたら、またいつか必要になったら声かけてって言ってくれて。

タイラ　それで今回は3年越しの再会ということになったのか。でもそうやって声をかけたのにすぐサポートに入ってもらわなかったのはどうして？

安島　そのときはまだ打ち込みを始めて間もない頃で、3人体制でCDを制作してる時期でした。だからメンバー入れるよりもシーケンサーに夢中……というか使いこなすのにいっぱいいっぱいだったんです。