Tani Yuukiインタビュー|現在進行形で広がる“多面態”とその核にある歌う覚悟 (2/2)

片寄涼太の音楽活動が報われた

──「もう一度」はストリーミング総再生数が1億回を超え、Taniさんの新しい代表曲になっていると思いますが、歌詞はコロナ禍がモチーフになっていますよね。

WHITE BOXという音楽グループでYouTubeの動画を撮ったりしながら活動していたことがあって、たびたび制作合宿をやってたんです。ソロ活動は自分と向き合わなくちゃいけないことがほとんどですし、そうやって誰かと一緒に物を作る空間が支えになってたんですよね。それがコロナ禍で集まれなくなってしまって。自分にとっての楽しい場所が取り上げられてしまったことをそのまま書いた曲なんです。

──誰しもに共通する経験ですね。

だから、この曲を聴きたくないっていう人もいると思うんですよ。そのときのことを思い出したくないから。でも人間は忘れていく生き物なので、僕の中では当時のことを教訓として歌っていける曲になったんじゃないかと思います。

──乗り越えるために、曲として残していくと。

ライブも声出し解禁になって、いろんなことが次のステップに向かっていく中で、歓声が上がるライブをみんなで待ちわびるような曲でもあると思うんですよね。捉え方の振れ幅がすごく広いんじゃないかな。

──このアルバムにはセルフカバーも2曲収録されています。楽曲提供する時点では、セルフカバーすることは想定していましたか?

MAISONdesに提供した「Cheers」は僕が今まで作った楽曲の中でダントツでクオリティが高いと思っていて、セルフカバーしたいなと前から思ってました。ビールのタイアップソングだったので、350ml缶にかけて3分50秒で終わるように作ったんですけど、諸事情あってMAISONdesのバージョンは3分53秒なんです。細かい部分が味になると信じているので、こだわりとしてセルフカバーは3分50秒にしました。

Tani Yuuki

──「神は細部に宿る」という言葉もありますもんね。

そうですね。マンガの伏線じゃないけど、聴いていて気付いたらうれしいじゃないですか。

──GENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太さんに提供した「運命」についてはいかがですか?

この曲は片寄さん主演のドラマ(「運命警察」)の挿入歌なので、ドラマの世界観に合わせて、歌詞に登場人物の名前を入れたりもしていて。片寄さんからは「これまでの12年間の音楽活動が報われました」とメッセージをいただけるくらい大事に歌っていただいているので、すごくありがたいです。

──お二人がコラボレーションしたMVも公開されました。

それぞれの「運命」のMVを作ることになって、お互いのストーリーがリンクしたり、画面がシンメトリーになっていたりするんですけど、今までそういうMVは観たことがないくらいの新しい映像になっているので、ぜひ観てもらいたいです。

Tani Yuukiの中の優里を呼び起こしたら

──初回限定盤のDISC 2にはほかのアーティストによるリミックスも収録されています。スタッフも含めてどんどんTaniさんの音楽制作に関わる人が増えていっていると思うんですが、それについてはどう思っていますか?

もっと増やしていかないとなと思っています。ずっと一緒にやっているアレンジャーさんはすごく信頼していて、お互いの好きな方向性をわかりきっている感じなんですけど、そういう人をもっと増やしたいとも思っていて、今回「多面態」や「マーメイド」はまったく新しい人にアレンジをお願いしました。

Tani Yuuki
Tani Yuuki

──チームが大きくなると、小回りが効かないもどかしさも出てくるんじゃないかと思うんですが。

やっぱり初めての人だと、コミュニケーションがうまくいかない部分もありますね。「自分でやったほうが早い!」と思っちゃったりもしますけど、それも必要な代償というか。結果的には納得のいく形になりましたし、ちょっとずついい落としどころを見つけていけたらと思いますね。やっぱり、サポートしてくれる人はどんどん増やしていきたいです。

──ミュージシャン同士の交流も広がっていると思うんです。優里さんのYouTubeチャンネルで川崎鷹也さんと鍋を突いてらっしゃったり。

あ、観てくださったんですか(笑)。

──そういった中でインスピレーションを受けることもあると思うんですが、最近だとどなたからの影響がありますか?

それこそ優里くんですね。曲を作るときにふと「優里くんが作りそうな曲のタイトルはなんだろうな」と思ったんですよ。ファンタジーの世界のお姫様の名前みたいな感じかなとか、そこから考えて出てきたのが「マーメイド」というワードだったんです。

──Taniさんの中の優里さんを呼び起こしたんですね(笑)。

「マーメイドだったら最後は泡になって消えちゃうだろうな」とか、連想ゲームで曲を作ったんです。だから、この曲だけアルバムの中でもファンタジー色が強いんですよね。優里くんの「かくれんぼ」のキックの感じとかミックスがすごくよくて。エンジニアさんに参考として聴いてもらったくらいなんで、優里リスペクトの1曲ですね(笑)。

──ある意味、曲のコスプレというか。

そうそう! そんな感じですね。まだまだ全然決まってないですけど、次のアルバムはテーマを絞ったものにしたいと思ってて、その糸口になりそうな予感がしています。

──4月にはZeppツアーが始まります。ライブからTaniさんが受ける影響については先ほども話に出ましたが、今回のツアーはどんなものになりそうですか?

最初のワンマンライブはコロナ禍だったこともあって60人限定だったんです。そのときの1曲目だった「生きる偉人たちよ」も今作に入っているので、あのライブに来てくれてた人にも喜んでもらえると思います。前回のツアーもそうだったんですが、以前よりパワーアップしたものを見せられるんじゃないかなという気がしています。楽曲の多面性と演出の多面性、両方を見てもらえると思います。今までよりもさらにカラフルというか、「Life goes on」みたいな今までで一番洋楽っぽいメロディの曲もあるし、新しいTani Yuukiをそのまま見せられたらうれしいですね。今回のツアーから演出にも関わらせてもらってるので、準備の段階からすごく楽しいんです。とにかく、僕自身がめちゃくちゃ楽しみにしています(笑)。

Tani Yuuki

──チームが広がったからこそ、Taniさんがいろいろなセクションにアイデアを出せるようになったわけですね。

意識的に変えていかなくちゃと思ってる部分もあるんですよね。この1年は無理矢理にでも視野を広げていきたくて。その決断をしながら走り切ろうかなと思ってます。うちの事務所は音楽に特化しているわけじゃないので、その分、スタッフさんと一緒に作り上げてきた思いがすごく強いんです。何をどうやればいいか、何ができるかがわかってきた感じがするんですよね。スタッフさんとの会話の質が上がっているのを肌で感じています。

──クリエイティブが明確になっていると。

「もっとここをこうしたい!」ということを自分たちなりに噛み砕いて言語化できるようになっていると思います。

──音楽を作るにあたって、すごくいい状況ですよ。

そうですね。ありがたいことにとてもいい環境でやらせてもらっていて、さらによくするためにみんな動いてくれてます。それを僕が裏切るわけにはいかないんで、ここががんばりどきだなって。「いつまでがんばらないといけないんだ……」と思いつつも(笑)。ゴールはないし、正解もないですからね。

──やっぱり“歌う”という結論にたどり着きますね。

歌うことが、次の曲のきっかけになったりしますから。できる限り歌っていきたいです。

Tani Yuuki

ツアー情報

Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”

  • 2023年4月6日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年4月14日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2023年4月16日(日)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2023年4月23日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2023年5月6日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2023年5月20日(土)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2023年6月1日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama

プロフィール

Tani Yuuki(タニユウキ)

1998年生まれ、神奈川県茅ヶ崎出身。配信シングル「Myra」「W/X/Y」がティーンを中心に支持され大ヒット。その優しく切ない歌声と、恋愛に思い悩む日常を描いた歌詞がSNSで人気を集めている。2021年12月に初のアルバム「Memories」を配信リリースし、2022年4月にはタワーレコード限定でCD盤を発表。2023年3月に2ndアルバム「多面態」をリリースした。4月から6月にかけてZeppツアー「Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”」を行う。

 

着用衣装
ニットスウェット(サイドスロープ)、シャツ(KICS DOCUMENT.)、パンツ(KHONOROGICA)、ネックレス(NORTH WORKS)、ピアス(PLUIE)

問い合わせ先
・HEMT PR 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-31-8 FKビル3F(03-6721-0882)
・PLUIE TOKYO 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-18-10 海老名ビル3F(03-6450-5777)