ナタリー PowerPush - たむらぱん
「京騒戯画」監督と語らう表現論
たむらぱんのデモでニュートラルな状態に戻った
──「ココ」というタイトルもすごく印象的でした。場所を指す“此処”にも取れるし、“個々”みたいなイメージもあって。
たむらぱん 「京騒戯画」を最初に観たときの印象として、“留まる場所を探す”とか“求める”っていうテーマがあるんじゃないかなって思ったんです。居場所としての“ココ”には温かいイメージもあるんだけど、そういう言葉にどうして“それぞれ”みたいな意味も含まれるんだろう?って考えちゃって。
──家族という概念もそうかも。
たむらぱん みんなで生活していく中にも“1人である”ということには変わりがないと思うんですよね、存在としては。そのギャップについても考えたし、人はどうして場所に執着することがあるんだろう?とか。中身が伴ってなくても、状況だけがあればいいと思うこともあるし……って巡ってるうちに「地球は丸い」というところにつながったんですよ(笑)。丸く収まるようにできてるのかもなって。
松本 その一連のことを2週間くらいで考えて、形にしてくれたっていうのがすごいですよね。
──松本さんは最初に「ココ」を聴いたとき、どう感じました?
松本 いや、それはもう……。そうだ、本当にありがとうございました。
たむらぱん あ、とんでもないです(笑)。
松本 本当にすごくいい曲をいただいて。泣けるんですよね、この曲を聴いてると。私、オープニングのコンテも一度自分の中で決定稿にしたものがあったんですけど、何度も曲を聴いて描き直したんですよ。
たむらぱん 私の友達もみんな言ってるんですけど、本当によくできてるんですよ、このオープニング。歌詞の流れだったり、アニメのストーリーともちゃんと合ってて。最後に地球も出てくるし(笑)。
松本 私、一応監督という立場にあるんですけど、作業が多いと精神的にどんどん追い詰められて、いろいろ見失ったりもするんですよ。たむらさんと会った頃もかなり煮詰まってたんですけど、デモをいただいたときにザワザワしていたものがスッキリしたというか、ニュートラルな状態に戻ったんですよね。「どうしたかったのか?」という原点回帰的なことができたというか。そういう意味でも「京騒戯画」のオープニングはたむらさんの曲がないと成り立たなかったと思うんです。だから、ちゃんとお礼を言いたくて。
たむらぱん いえいえ。こちらこそありがとうございます。
言葉だけが残っていればいい
──松本さんが「ココ」を聴いたときに感じた原点回帰って、どういうものだったんですか?
松本 「京騒戯画」を始めた当初は「好きにやれ」って言われてたんですね。ただ、最初に作ったのがいっぱいある話をギュッと凝縮したものだったから「わかんねえ」っていろんなところで言われて、「だったら説明しなくちゃ」って思ってしまって。さっきもチラッと言いましたけど、私は直接言葉で説明するのがあんまり得意じゃないんですよ。だから「どこまで説明すればいいのか」っていうのを考え始めたときに、自分の中で余計なものが増え過ぎちゃったんですよね。で、そのうちに「わかってもらうために作らなくちゃいけないのか?」って思い始めて。もちろん大前提としてはわかってもらうために作るんですけど、そのことを「京騒戯画」という作品にどうやって適応させていいかわからなくなったというか……。最初は自分の中に“何か”があるから作り始めるわけですけど、その“何か”がなくなっちゃったんですよ、途中で。そうなったら、あとはひたすら作業するだけになるし、それはホントにつらいことなので。
──今の話、たむらぱんさんも共感できる部分が大きいんじゃないですか?
たむらぱん そうですね。以前は無駄な部分をなくしたいと思ってたんですよね。歌詞にもメロディの各楽器に対しても、全部に意味を持たせなくちゃって。ある程度そういうことをやってきて、「自分の中で一番大事な部分を残したら、あとは削ぎ落としてもいい」というほうに行きたいと思うようになって。今回のアルバム(「love and pain」)はまさにそういう感じなんですよね。
──実際、音数がかなり抑えられている印象があります。
たむらぱん 自分にとっての音楽の形がなんとなくわかってきたんですよね。言葉が音になってるものが好きなんだなって。考えてみると、いつも歌詞を読みながら聴いてたし。「それが一番の大元なのかな」って気付いたときに、音をどんどん減らして、言葉だけが残っていればいいと思えるようになったというか。
松本 歌だけでも、組み合わせは無限にありますよね。言葉のチョイスにしても、歌い方にしても。歌う人ってすごいなって思います。歌う人って言い方もザックリしてますけど(笑)。
たむらぱん (笑)。でも、ホントにそうですよね。
松本 私は「アニメにはあんまりセリフはいらない」と思ってるんですよね。映像があるんだから、そこで見せられる部分はなるべくそうしたいっていう。たとえば子供が転んでたとして、「あ、子供が転んでるね。かわいそう」って言ってるだけの人よりも、セリフもなくバッとそこに行って助けてあげる人のほうが魅力的だと思うんですよ。「かわいそうだ、助けよう」って言いながら走ってるのはおかしいし(笑)。どっちかなんですよ、やっぱり。
たむらぱん そうか(笑)。面白いですね。
松本 あと、本当に大事なことは言わないで、余計なことばっかりセリフにしちゃうんですよね。余計な言葉を積み重ねることで、初めてその人が見えてくることもあると思うし……。だって、普段から決めゼリフばっかり言ってるわけじゃないですから。
たむらぱん ハハハハハ(笑)。確かに!
- ニューアルバム「love and pain」/ 2013年12月18日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3675円 / COZP-822~3
- 通常盤 [CD]2940円 / COCP-38339
CD収録曲
- love and pain
- くそったれ
- music video life
- 第2ステージ
- 手が目が
- ココ(album ver.)
- 近くの愛情
- only lonely road
- こんなにたくさん
- やってくる
初回限定盤DVD収録内容
TAMURAPAN ワンマンライブ全国ツアー 2012.11.30 @Shibuya-AX
- ふれる
- ラフ
- ゼロ
- 十人十色
- ぼくの
- でもない
- new world
- ハイガール
- でんわ
- 知らない
- おしごと
- 直球
- ニューシングル「ココ」/ 2013年10月23日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD2枚組] 1575円 / COCC-16794~5
- 通常盤 [CD]1050円 / COCC-16793
CD収録曲
- ココ
- 自分を
初回限定盤CD収録内容
京騒戯画特典ラジオCD
- オープニング
- 京騒戯画って?
- たむらぱんをむかえて
- エンディング
ライブ情報
インストアライブ
- 2014年1月12日(日)東京都 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
START 15:00 - 2014年1月18日(土)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店6F
START 14:30
※イベント特典:「特典引換券」または「イベント参加券」をお持ちのお客様は、終演後にたむらぱん本人から「love and pain」ポスターをプレゼント!
"love and pain TOUR"
- 2014年2月12日(水)大阪府 大阪BIG CAT
OPEN 18:30 / START 19:30 - 2014年2月13日(木)愛知県 名古屋BOTTOM LINE
OPEN 18:30 / START 19:30 - 2014年2月21日(金)東京都 Zepp Tokyo
OPEN 18:30 / START 19:30
たむらぱん
作詞・作曲・アレンジはもちろん、アートワークまで手がけるマルチアーティスト・田村歩美のソロプロジェクト。2007年からMyspaceにおいて自ら楽曲プロモーションを開始し、日本初の「Myspace発メジャーデビューアーティスト」として、2008年4月に1stアルバム「ブタベスト」をリリースする。また自身の活動に加えて、松平健の「マツケンカレー」や、アイドルグループのbump.y、私立恵比寿中学などへの楽曲提供、さらにロッテ「Fit's」CM曲の歌唱など、多岐にわたる活動でその才能を発揮している。2013年10月にアニメ「京騒戯画」のオープニングテーマとして書き下ろした「ココ」をリリース。12月には6thアルバム「love and pain」を発売する。
松本理恵(まつもとりえ)
1985年生まれ、アニメーション演出・監督。2006年の「ふたりはプリキュア Splash Star」で演出助手としてデビュー。2010年公開の映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」ではシリーズ初の女性監督を務める。現在TOKYO MXテレビ / BS朝日テレビおよびニコニコ動画にて放送中のアニメ「京騒戯画」の監督を担当。