ナタリー PowerPush - たむらぱん
丁寧に紡いだ6年の軌跡 “呪術的”ベスト「tamuLAPIN」
たむらぱんがキャリア初のベストアルバム「tamuLAPIN」をリリースする。
2007年のデビュー以来、際立ったポップセンスと深いメッセージ性を備えた歌詞によって高い評価を得てきた彼女。「世界・ふしぎ発見!」エンディングテーマ「ラフ」、アニメ「京騒戯画」オープニングテーマ「ココ」などのシングル曲をはじめ、これまでに発表された楽曲の中から26曲が厳選された2枚組の本作には、2008~2013年の彼女の軌跡が色濃く刻み込まれている。
今回ナタリーではたむらぱん本人にインタビューを実施。ベストアルバムの成り立ちを中心に、彼女の音楽観、人生観、この先のビジョンまで幅広く語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
スーパープレミアムなアーティストしか出せないと思ってた
──メジャーデビュー6年目にして、初のベストアルバムですね。
来ましたね、そういう時期が(笑)。小さい頃、ベスト盤って本当にスーパープレミアムなアーティストしか出せないものだと思ってたんですよ。だからちょっと不思議な気もするんですけどね。今の時点では“総まとめ”とか“集大成”という感じでもないし……。もちろん、きちんと自分も関わりたいなとは思っていましたけどね。
──シングル曲はもちろん、これまでにリリースされた6作のアルバムからもかなりピックアップされていますが、まるで新しいオリジナルアルバムのような印象もありますね。
そうですね。できあがってみるとまとまりもいいし、私自身もなんとなく「7枚目のアルバム」というイメージがあって。2枚組になってるんですけど、最初はキャラを分けようと思ってたんですよ。簡単に言うと「明るい」「暗い」みたいな。でも、私の曲って1曲の中にすごく高低差があるというか……。
──1つの曲の中にいろいろな感情が含まれてますよね。
だから、パキッと分けるのがすごく難しかったんですよね。で、1枚目はなんとなく楽しげ、2枚目はなんとなく悲しげというか、落ち着いた雰囲気の曲を集めてみようと思って。ちょっとフワッとした感じになっちゃったんですけどね(笑)。
──「明るい」「暗い」とか「前向き」「後ろ向き」みたいな分け方ができないのも、たむらぱんさんの音楽の特徴なのかも。曲順については?
最近の曲と昔の曲では質感とかもかなり違ったりするので、混在させたくなかったんですよね。道筋をたどるというか、時系列にしたいという気持ちもあったから、現在から過去に向かってさかのぼる感じにして。
──最新の曲から始まって、過去に戻っていくイメージ?
そう。新しい曲のほうがなじみがあるだろうし、そこから昔の雰囲気に戻っていくほうが聴きやすいかなって。あと、いきなり過去に戻るのは大変というか、私自身「あんまり昔の曲を聴きたくないな」っていうのもあって……。普段めったに(過去の曲を)聴かないですからね。ライブの前に歌詞やアレンジを確認するときくらいかな、昔の曲を聴くのは。
──でも、ベスト盤を作るときは聴かざるを得ないですよね?
それを目の前に突き付けられるのが怖かったんです。でも実際にちゃんと聴いてみると、昔の自分に感心することのほうが多かったんですよね。言葉の選び方なんかも「これ、どうやって作ったんだろう?」と思ったりもしたし、「うらやましいな」って感じることもあって。使ってる楽器やアレンジも、予想以上にちゃんとしていたというか。ずいぶん平和な話なんですけど(笑)、自分がこういうふうに楽しめるってことは初めて聴く人もたぶん楽しいんじゃないかなって。
“好き”は表現できるエリアが小さい
──歌詞の内容についてはどうですか?
初回限定盤では歌詞カードを手書きしてるんですけど、自分の歌詞を書き写してるときにいろいろと思うことがあって。まず、恋愛の曲が少ない(笑)。
──ホントですよね(笑)。「愛しい」とか「会いたい」とか、そういうストレートな恋愛ソングってまったくないし。
そうなんですよね(笑)。例えば“好き”ということを表現するときも、そのまま“好き”って言うんじゃなくて、“嫌いじゃない”って言いたくなったりとか。「いつまでもじゃない永遠にさよなら」(「第2ステージ」)っていう歌詞があるんですけど、それも“いつまでもじゃない永遠”に“さよなら”することで、超スーパー永遠になるんだってことだったりするんですよ。そういう表現の方法は昔から全然変わってないですね。なんて言うか、はっきり言えない部分にこそ本当を感じるんですよ、私は。
──シンプルに“好き”と歌うだけでは、すくい切れない感情があるということ?
うん、そうですね。“好き”ってすごい素直な言葉だけど、表現できるエリアが小さい感じがしちゃうんです。そういうことも改めて感じましたね、今回。
──あと、どの曲にもたむらぱんさん自身の人生観が込められてますよね。「生きるとは?」「働くとは?」という哲学的なテーマを自分の言葉で表現してるというか。
恋愛ソングっぽく聞こえる曲でも、展開の中で人生観が絡んできちゃうんですよね(笑)。だから、「ある人には恋愛の曲に聞こえて、ある人には仕事のことを歌った曲に聞こえる」ということが起きるんだと思うんだけど。それもずっと同じかもしれないですね、昔から。
- ベストアルバム「tamuLAPIN」/ 2014年3月26日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 4095円 / COZP-900~2
- 通常盤 [CD2枚組] 3150円 / COCP-38479~80
CD収録曲
DISC 1
- ココ(single ver.)
- new world
- おしごと
- 直球
- ファイト
- フォーカス
- マウンテン
- SOS
- ジェットコースター
- ちょうどいいとこにいたい
- ハレーション
- 責めないデイ
- ぶっ飛ばすぞ
DISC 2
- love and pain
- 第2ステージ
- でんわ
- ぼくの
- しんぱい
- 白い息
- バンブー
- ラフ
- ズンダ
- ゼロ
- ちゃりんこ
- キースとモモ
- 回転木馬
初回限定盤DVD収録内容
- love and pain
- ラフ
- 白い息
- バンブー
- しんぱい
- ファイト
- new world
- フォーカス
- でもない feat.Shing02
- ぼくの
- 回転木馬
- ゼロ(morimoto×tamura Remix ver.)
TAMURAPAN “drawdraw music” TOUR
- 2014年6月7日(土)東京都 VACANT
OPEN 16:00 / START 17:00
※SOLD OUT - 2014年6月8日(日)東京都 VACANT
OPEN 16:00 / START 17:00
※SOLD OUT - 2014年6月15日(日)京都府 元立誠小学校講堂
OPEN 16:00 / START 17:00
チケット一般発売中 - 2014年6月22日(日)東京都 Super Deluxe
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット一般発売日:3月29日 - 先行予約はこちら (3月22日まで)
絵画の展示は開場時および終演後に会場内にて観覧可能。
下記日程では無料観覧も実施。
- 2014年6月8日(日)東京都 VACANT
10:00~14:00 - 2014年6月15日(日)京都府 元立誠小学校 木工室
10:00~17:00
たむらぱん
作詞・作曲・アレンジはもちろんアートワークまでを手がけるマルチアーティスト・田村歩美のソロプロジェクト。2007年からMyspaceにおいて自ら楽曲プロモーションを開始し、日本初の「Myspace発メジャーデビューアーティスト」として2008年4月に1stアルバム「ブタベスト」をリリースする。また自身の活動に加えて、松平健の「マツケンカレー」、アイドルグループのbump.yや私立恵比寿中学、豊崎愛生、剛力彩芽、中川翔子などへの詞曲提供、ロッテ「Fit's」CM曲の歌唱など多岐にわたる活動でその才能を発揮している。2013年10月にアニメ「京騒戯画」のオープニングテーマとして書き下ろした「ココ」をリリース。2014年3月、デビュー作から6thアルバム「love and pain」までの楽曲より選曲された2枚組ベストアルバム「tamuLAPIN」を発表する。