ナタリー PowerPush - TAMTAM

新世代ダブバンドを徹底解剖

#2 TAMTAM kuro & junet kobayashiインタビュー

現在ナタリーで展開中のTAMTAMPowerPush企画。第2回目となる今回は、本日4月23日にメジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」がリリースされたことを記念してメンバーのkuro(Vo,Tp)とjunet kobayashi(B)を直撃する。

TAMTAMの正式メンバーは5人。しかし彼らには第6のTAMTAMと呼ぶべきサポートメンバーがいる。それがTAMTAMのインディーズ盤をリリースしていたレーベルmaoのオーナー、石本聡だ。彼らは石本を、ライブ中の演奏や音源に、まさに“ライブ”で空間系エフェクトを施すエンジニア・ダブPAとして招き入れている。平均年齢20代中盤の若いアーティストたちが、ダブPAまで擁する“ガチ感”の高いダブバンドを志向するワケは? そして“ガチ”のダブバンドがメジャーデビューに至ったその道のりは? 2人に詳しく聞いた。

取材・文 / 成松哲

ガリ勉クラスでルーツレゲエとUKダブにハマる

──いわゆる今のJ-ROCKシーンにおいてTAMTAMってけっこうユニークな存在な気がするんです。

junet kobayashi(B) まあそう思いますよね(笑)。

──第6のメンバーとしてダブPA・石本聡さんまでいるダブバンドが今メジャーデビューするのってある種痛快だなって。そもそもの話なんですけど、お2人のダブとの出会いって?

kuro 私は高校まで北海道にいて中学生の頃から洋楽全般をさらってたんですけど、高校になってからスカとかレゲエとか、ルーツレゲエとか、あとUKのダブとかが耳にグッと入ってきて。HMV ONLINEなんかでそのへんのCDを取り寄せて、みたいなことをやってました。

──当時、周りに話の合うお友達っていました?

kuro 男の子が多かったですけどいましたね。女の子と別に仲良くしてなかったわけではないんですけど、音楽の話はやっぱり男の子とのほうが合うことが多くて。ヒップホップが好きでDJを趣味でやってるとか、そういうブラックミュージック好きな男の子たちがたまたま近くにいたので、ヒップホップを借りながら、こっちはレゲエを貸すみたいなことをやってました。

──けっこうエッジィな高校生活ですよね。

kuro でもクラブにすごい通ってるイケイケな感じでもなく、ガリ勉クラスにいて(笑)。本当にヘッドホンだけで聴いてるって感じではあったんですけど。楽器も中学時代に吹奏楽部でトランペットをやったことがあるくらい。軽音部でバンドをバリバリみたいな経験はないですし。

食事時、THA BLUE HERBが流れる家庭

──junetさんは?

junet 僕は長崎出身なんですけど、単純に兄の影響で中学の終わりくらいから音楽を聴き出すようになった感じですね。ほとんどJ-POPなんかは通らないまま、急にR.E.MとかRadioheadとかAphex Twinとかデトロイトテクノとかヒップホップをドーンっと叩きつけられたというか。当時はまだ「REMIX」とか「SNOOZER」とか「STUDIO VOICE」とか、そういう雑誌があったし、長崎の田舎の本屋にも置いてあったので。それを読んだ兄がメシのときに急にTHA BLUE HERBを流したりしてました(笑)。

──メシのBGMとしてはまあ不似合いな選曲ですねえ(笑)。そういう流れでレゲエやダブにも出会う?

junet そうですね。あるときボブ・マーリーとaudio activeを同時に叩き込まれまして(笑)。それが2007年前後だったんですど、ちょうどその頃、ダブステップの超古いの、ブリアルの初期の作品とか、あとグライムなんかも出てきてたので「ダブってカッコいいじゃん」って一気にハマった感じですね。

──楽器の経験は?

junet なかったです。

「歌い始めたのはなりゆきなんです」

──そしてkuroさんもボーカリストとしての経験はなかったわけですよね。なのに今やメジャーバンドとして活動している。

kuro(Photo by HayachiN)

kuro メンバーとの出会いは大学に入って上京してからなんですけど、私、大学に上がったときはサークルとかに入る気は全然なくて。ただなんとなくトランペットは再開したいなと思ってたんです。小学校、中学校までで辞めちゃってたので。で、せっかく高校時代にスカなんかを知ったんだからっていうことでスカバンドを探してみたんですけど、けっこう目上の人のやってるバンドしかなくて。「メンボネット」とかを見てみたんですけど(笑)。

──リハーサルスタジオに貼ってある「当方ギター~」なんてチラシではなく。イマドキの若い子のメンバーの探し方だ(笑)。

kuro そしたらそこで出会った人が「スカとかレゲエとかカリプソとかダブとかが好きな大学生のコミュニティがあるよ」ってとあるサークルを紹介してくれて、本格的なプレーヤーになったって感じですね。

──もともとボーカリスト志望ではなかった?

kuro ペットしかやる気なかったですね(笑)。ただ、そのサークルで今のTAMTAMにつながるバンドを始めたばっかりの頃にドラヘビ(DRY&HEAVY)の「New Creation」をカラオケ気分というか、リハーサル気分で歌ってみたら……。

junet 「おっ、いい声してんじゃん」「えっ、トランペット? 歌のほうがいいじゃん」みたいな話になり(笑)。

kuro だから歌い始めたのはなりゆきなんです(笑)。

Contents | TOP
#1 スピードスターレコード レーベル長 小野朗インタビュー
#2 TAMTAM kuro & junet kobayashiインタビュー
#3 ラジオDJが語るTAMTAMの魅力
メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」 / 2014年4月23日発売 / 1620円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64103
メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」
収録曲
  1. クライマクス
  2. デイドリーアンドマリー
  3. シューゲイズ
  4. フリー
  5. バイマイフューチャー
  6. トゥナイト
タワーレコード限定シングル「クライマクス & REMIXES」 / 2014年3月5日発売 / 324円 / NCS-10065
タワーレコード限定シングル「クライマクス & REMIXES」
収録曲
  1. クライマクス
  2. クライマクス 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)REMIX
  3. クライマクス junet kobayashi REMIX
TAMTAM(タムタム)

kuro(Vo, Tp)、yuthke suzuki(G)、tomomi kawamura(Key)、junet kobayashi(B)、affee takahashi(Dr)の5人からなるダブバンド。2008年12月に結成され、2011年11月に自主制作盤「Come Dung Basie」をリリースする。2012年5月にはHAKASE-SUN(LITTLE TEMPO)をプロデューサーに迎えた初の全国流通作品「meteorite」を発表し、高い評価を得る。2013年12月には音楽雑誌「ミュージックマガジン」の特集「ベストアルバム2013」日本のレゲエ部門で1位を獲得。ライブではダブPAの石本聡を帯同し、リアルタイムのディレイ、リバーブ処理を施した独特のパフォーマンスを展開している。2014年4月にスピードスターレコーズよりメジャーデビュー。

TAMTAM with 6Visualists


2014年4月25日更新