ナタリー PowerPush - TAMTAM
新世代ダブバンドを徹底解剖
「ダブだけどレゲエじゃない。でもダブ」
junet さっきの音楽性の話を続けると、TAMTAMって実はベースが特に特徴的だと思うんですよね。レゲエのベースって基本的に4弦なんですけど、僕5弦ですから。
──確かにライブを観てビックリしました(笑)。
kuro だからもう狭義のレゲエでなくていいのかなって思っていて。レゲエであることにこだわっていたら、自分たちの好きな音楽ややりたい音楽ができなくなっちゃうことに気付いたので。いつの頃からか「ウチらダブバンドだよね」っていう話になっていたというか。UKとかにもダブは飛び火しているんだし、ジャマイカにこだわらなくてもいいよなってことに。
junet 例えばDub Syndicateとか聴いてみると「お前、これダブって言ってるの?」って感じじゃないですか(笑)。ドラムもベースも1mmもレゲエじゃねえじゃんみたいな感じというか。でも、なんかダブ感はありますよね。
──確かにON-U SOUND系のダブをレゲエの文脈だけで語っちゃうのって片手落ちですよね。
junet むしろデトロイトテクノやヒップホップを聴いていた僕らに近いスタンスでレゲエ発祥のダブをやってるわけですから。「ダブだけどレゲエじゃない。でもダブだからいいじゃん」みたいな。いつの間にかそういう自覚がそれぞれに芽生えていたんでしょうね。
インディーズヒーローになりたいわけでもない
──当時からダブPAは石本さんですか?
kuro 最初はDIYでした。スネアの横にKORGのKAOSS PADを置いておいてドラマーがスネアを叩いた瞬間、自分でヒュッってパッドを回してエフェクトをかけたりとか、ハコの人に「よきところでボーカルにディレイをお願いします」ってお願いしたりとか(笑)。
junet 僕がキーボードの子にディレイを渡して「これ踏んで」って頼んだりとか(笑)。
──じゃあ石本さんとの出会いは?
junet バンドが始まってカバーとオリジナルを混ぜてライブをやってた頃「ライブ音源ばっか配っててもしょうがないでしょ」ってことになって、とりあえずデモ音源を作ってダブのイベントなんかでどんどん配ってたんです。で、kuroと一緒に先輩が出てるイベントに行ったら、ちょうどその先輩が石本さんのレーベル(mao)のバンドでギターを弾いてて「あっ、ウチのダブPA、レーベルの社長だから紹介してあげるよ」って会わせてくれたんです。ただそのとき石本さんすごいぶっきらぼうで。デモを渡しても「あっどうも」って感じだったから心が折れかけてたんですけど(笑)、あるとき「次のライブ行くから」っていうメールがきて……。
kuro 「あのおっちゃん来るんだ、怖いねえ」って(笑)。
junet でもその怖いおっちゃんが、レコーディングの仕方を教えてくれた上に「オレにダブPAやらせてくんない?」って言ってくれて(笑)。それでできあがったのが自主制作の「Come Dung Basie」だったんです。
──で、3枚のオリジナルアルバムや、12インチ、ダブワイズ盤、ライブ音源などをインディーズでリリースして、ついにメジャーデビュー、と。メジャーデビューってやっぱり目標でした?
kuro 私は目標じゃなかったですね。
junet 僕もメジャーは考えてなかった。もっと大きなステージでいろんな活動をしたいなとは思ってたんですけど、メジャーはたぶん違うだろうな。最初の話じゃないんですけど、ダブとかクラブミュージックとかが好きなウチらは受け入れられないだろうな、って思っていたので。
kuro ただ単純に聴いてくれる人を増やしたいっていう目標はもちろんあったので、断る手はなかったですね。
junet うん。インディーズヒーローになりたいわけでもなかったし、音楽は続けていきたかったし、そういう機会をもらえるのであれば喜んでって感じではありましたね。
PowerPoint片手に音楽性をプレゼン
──メジャー1stミニアルバム「For Bored Dancers」なんですけど、インディーズ時代と基本的なトーンは同じ。本当に“ガチ感”の強いダブアルバムで……。
kuro 最初私たちに「お前らカッコいいよ!」って声をかけてくれたレーベルの人的には、めっちゃオーガニックな感じの売り出し方をしたかったらしいんですよ。
──ああ、それこそレゲエ的側面、ワールドミュージック的な側面を打ち出したアプローチで。
junet そうですそうです。でもそれでスタートしても絶対に僕らがうまくやれるわけがないと思っていたので、石本さんがPowerPointで作った10ページくらいのプレゼン資料を手に説明しに行きました(笑)。そうしたら「あっ、ごめんごめん、やりたいのはダブだったのか。じゃあそっちで行こう!」っていうことになり。
kuro よくよく考えたら、スピードスターってこだま(和文)さんとかUAさんとかレゲエ、ダブ系の方々もけっこういらっしゃるから理解があったんでしょうね。「レゲエやダブでメジャーデビューはない」っていうのは私たちが勝手に思ってただけ。実はけっこう自然な流れだったのかなって思ってます。あと、なんでインディーズ時代からトーンが一緒かっていうと、悪い言い方をするならそれしか知らないんですよ(笑)。どんな音楽をやっても、気分がダブになっちゃう。
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- #1 スピードスターレコード レーベル長 小野朗インタビュー
- #2 TAMTAM kuro & junet kobayashiインタビュー
- #3 ラジオDJが語るTAMTAMの魅力
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」 / 2014年4月23日発売 / 1620円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64103
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」
収録曲
- クライマクス
- デイドリーアンドマリー
- シューゲイズ
- フリー
- バイマイフューチャー
- トゥナイト
収録曲
- クライマクス
- クライマクス 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)REMIX
- クライマクス junet kobayashi REMIX
TAMTAM(タムタム)
kuro(Vo, Tp)、yuthke suzuki(G)、tomomi kawamura(Key)、junet kobayashi(B)、affee takahashi(Dr)の5人からなるダブバンド。2008年12月に結成され、2011年11月に自主制作盤「Come Dung Basie」をリリースする。2012年5月にはHAKASE-SUN(LITTLE TEMPO)をプロデューサーに迎えた初の全国流通作品「meteorite」を発表し、高い評価を得る。2013年12月には音楽雑誌「ミュージックマガジン」の特集「ベストアルバム2013」日本のレゲエ部門で1位を獲得。ライブではダブPAの石本聡を帯同し、リアルタイムのディレイ、リバーブ処理を施した独特のパフォーマンスを展開している。2014年4月にスピードスターレコーズよりメジャーデビュー。
2014年4月25日更新