ナタリー PowerPush - TAMTAM
新世代ダブバンドを徹底解剖
「ハイスタ、全然弾けないんですよ」
──junetさんはなぜそこに?
junet もともと僕も僕で大学に入ったばっかりの頃はサークルには特に興味がなかったんです。Underground ResistanceとかTHA BLUE HERBにしか興味のない大学1年生だったので。
──中二病をこじらせて(笑)。
junet かなりツンツンしてましたね(笑)。「サークルとか興味ねえな」って感じで。ただ一緒に上京してきた友達が「そういえばjunet『レゲエ好き』って言ってたじゃん」ってそのサークルに連れて行ってくれて、そこは「オーガスタス・パブロの○○ってアルバム俺やっぱ好きなんだよね。あれいいよね」って言ったら「うん、いいよね」って返ってくる、共通言語を持ってる人たちが集まってたんです。「『Studio One Ska』っていうコンピをメチャメチャ聴いてます」って話をしたら「お前詳しいな」って言われるみたいな。で「なんか楽器弾けんの?」って言われて「いや、家にベースはありますけど、弾けません」って話をしたら「やっちゃいなよ」と(笑)。それがTAMTAMを始めたきっかけ。ホントkuroのボーカルと一緒で、偶然なんです。
──バンドは2008年結成。6年前の18歳の男の子と女の子が組んだ初心者レゲエバンド、ダブバンドは最初、どんな活動を?
kuro そのサークルの基本活動がレゲエとかスカをコピーすることだったので、マックス・ロメオの「I Chase The Devil」とか……。
junet Soul Syndicateとか、ホレス・アンディ「Ain't No Sunshine」とかをコピーしてました。だから僕ら、ハイスタとか全然弾けないんですよ(笑)。
──モロに“世代”ではありますよね。
junet なのに全然弾けない(笑)。
kuro 集まったメンバーがメンバーだったので(笑)。でもだからこそ、そのサークルとか、のちにやることになるライブハウスのレゲエ系のイベントみたいなコミュニティやシーンにはわりとすぐに溶け込めたんですけどね。
「若いのにレゲエ」と「まあ若いおなごだしなあ」
──それもそれでTAMTAMの面白いところだと思うんです。レゲエやダブにはある種アイリー(パトワ語で「イエーイ! 楽しい!」)的というか享楽的なノリがありつつ、またその一方で硬派なレベルミュージックという側面もある。
junet そうですね。
──でもkuroさんは高校時代ガリ勉クラスにいたと言っていて、junetさんは中二病をこじらせていた(笑)。皆さん、どちらかというと文化系なのかなっていう気がするんです。
kuro 全員、完全に音から入ったタイプなんですよね。こういう言い方をすると誤解されるのかもしれないけど、ダブは音楽の1ジャンルというか。いろんなジャンルの音楽をクロスオーバー的に聴いている全員が共通して好きなジャンル、話ができるジャンルにレゲエやダブがあったって感じなんです。
junet メンバーの中にはもちろんレゲエやダブの思想的な側面に興味がある人もいるとは思うんですけど、それ以前にレゲエやダブって音がカッコいいからいいじゃん、みたいなメンバーの集まりなんですよ(笑)。
──邪推かもしれないんだけど、それこそkuroさんが最初にアプローチしたスカバンドのような年長世代の中南米音楽ファンにはもっと原理主義的というか、精神性重視な人も多いんじゃないかっていう気も……。
junet あっ、でも先輩は意外とかわいがってくれましたね。ライブハウスではオリジナルと一緒に、さっき言ったSoul Syndicateとかマックス・ロメオとかホレス・アンディとかのカバーをしてたんですけど、ドラヘビのAO(INOUE)さんとかLIKKLE MAIさんとかから「お前ら若いじゃん」って声をかけていただいたりして。
kuro 若い子でレゲエをやってるのが珍しかったみたいで。ただ「レゲエイベントです」っていう感じのライブに出たりすると、確かにお客さんからのアゲンストがちょっとあったかもしれない。「まあ若いおなごだしなあ」みたいな扱いを受けたりとか(笑)。「もうちょっと歳をとってからやると渋くなるよ」って言われてみたり。実際私自身、レベルミュージック的な怒りとかを感じずにのほほんと生きてる子だったりするので「ちょっとレゲエが板についてないなあ」っていう気はしてましたし。
フランケンシュタインみたいな音楽ができあがってました
──で、実際現在のTAMTAMはマックス・ロメオのようなルーツレゲエ、ルーツロック的な音楽ではなく、もっと広義でのレゲエ、というかダブに舵を切っています。
kuro どこかのタイミングでパッとこうなったっていうことではないんですけどね。そういうルーツロック的なレゲエのコピーバンドから始めたこともあって、最初はなるべくレゲエのフォーマットに沿おうとしてたんです。ドラムはワンドロップじゃなきゃいけないとか……。
junet それかステッパーズみたいなドラムに、わりと間の多いベースと、鍵盤やギターの裏打ちが入って。楽器隊はメロディアスでカラフルというよりも、リズミカルで素朴。そこに歌が乗って、キメるところでダブワイズが入るっていう。わりと一般的なレゲエやダブをやってたんですけど……。
kuro 結局音楽の1ジャンルとしてレゲエやダブが好きなメンバーが集まったバンドだったので。ある程度曲の作り方がわかってきたら、自分たちが好きなほかのエッセンス、エレクトロニカやヒップホップっぽいビートを取り入れるようになって。で、なんか1つ要素を変えると、ほかの要素も変えたくなったりとかして、最終的にフランケンシュタインみたいな音楽ができあがってました(笑)。
- Contents | TOP
- #1 スピードスターレコード レーベル長 小野朗インタビュー
- #2 TAMTAM kuro & junet kobayashiインタビュー
- #3 ラジオDJが語るTAMTAMの魅力
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」 / 2014年4月23日発売 / 1620円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64103
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」
収録曲
- クライマクス
- デイドリーアンドマリー
- シューゲイズ
- フリー
- バイマイフューチャー
- トゥナイト
収録曲
- クライマクス
- クライマクス 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)REMIX
- クライマクス junet kobayashi REMIX
TAMTAM(タムタム)
kuro(Vo, Tp)、yuthke suzuki(G)、tomomi kawamura(Key)、junet kobayashi(B)、affee takahashi(Dr)の5人からなるダブバンド。2008年12月に結成され、2011年11月に自主制作盤「Come Dung Basie」をリリースする。2012年5月にはHAKASE-SUN(LITTLE TEMPO)をプロデューサーに迎えた初の全国流通作品「meteorite」を発表し、高い評価を得る。2013年12月には音楽雑誌「ミュージックマガジン」の特集「ベストアルバム2013」日本のレゲエ部門で1位を獲得。ライブではダブPAの石本聡を帯同し、リアルタイムのディレイ、リバーブ処理を施した独特のパフォーマンスを展開している。2014年4月にスピードスターレコーズよりメジャーデビュー。
2014年4月25日更新