ナタリー PowerPush - TAMTAM
新世代ダブバンドを徹底解剖
「クライマクス」=TAMTAM史上最も振り切ったロック
──メジャーだからあえて、みたいな戦略は考えなかった?
junet いや一応考えたんですよ、これが(笑)。アルバムの中の「クライマクス」って、リード曲だし、タワレコ限定のシングルとして先行発売されることもあったから、オレの中では超ロックに振り切って作ったつもりでしたし。これまでのTAMTAMの中でも特にポピュラリティあふれる曲にしようと思って。
──へっ!? 確かにアルバムの中では一番キャッチーかな、とは思いますけど……。
junet って、たいていの人から言われるんです(笑)。「いや、これいい意味でオカシイよね」「だってドラム、ステッパーズじゃん。裏打ち入ってるじゃん」「いやいい曲だけど、これ君が思ってるほど、ロックじゃないから」って。で、僕は僕で「マジっスか!?」ってなるという。
kuro しかもメジャーっていうことを特に意識したのは「クライマクス」だけですから。ほかの5曲に関してはほぼしてない(笑)。
junet ここに盛り上げどころを作ろうみたいなことを考えながら曲を書いたりアレンジしたりはしましたけど、それも別にメジャーだからっていうわけでもないですし。基本的にはインディーズの頃から培ってきたいろんな要素を組み上げて作った曲でしかないんですよね。
kuro インディーズ時代の作品を改めて振り返ってみると「こういうことってTAMTAMしかやってないよね」っていうのがあるので、その長所みたいなものをより伸ばしてみた曲たちなんです。
「『ジャーラスタファーライ』ってノリじゃねえなあ」
──ただサウンドの肌合いは去年3月のミニアルバム「Polarize」とはけっこう違う。「Polarize」では電子音やサンプリング、シーケンスを強調しているイメージがあったんですけど「For Bored Dancers」はさっきのjunetさんの言葉じゃないけど、もっとロック感、バンド感が強い。
kuro ここのところライブを観る機会が多くて。いろんな方のライブを観ていると肉感的なステージをやってる人たちっていうのはジャンルの分け隔てなくカッコいいなって思ったのがひとつあると思うんですよね。
junet あと「Polarize」はちょっと実験的。ウチらとしては初めてシーケンスを強く打ち出してみたアルバムだったので。そのアルバムを経た結果、そのシーケンス感を生かしつつも、もっとロック感や生々しさを押し出しても大丈夫だな、っていう確信が得られたから、今回はこういう音の塊感の強いサウンドになったのかなって思ってます。
──で、作詞は全部kuroさんなんですけど、どの曲もどうにもあまりハッピーな感じがしないんですけども……。
kuro あはははは(笑)。なんかヒネくれているというか、なんかぶつくさ言いながら生きてるのが好きなんでしょうね(笑)。
──ただ「実体験をもとにしました」っていう詞でもないですよね。
kuro 言ってしまえば平々凡々とした25歳の女の子ですよって話ですから。別に日々これといったストラグルに会ってるわけでもないですし(笑)。逆にレゲエな生き方をしているわけでもないというか「ジャーラスタファーライ」ってノリじゃねえなあ、って感じもしてますし。だから音楽性の話と一緒で、普段好きで聴いていたり読んだりするものの影響が自然とにじみ出てるだけなんでしょうね。
ウチらのスタイルでやらなきゃいけない
──その好きな書き手って?
kuro キリンジの堀込高樹さんとか、大森靖子ちゃんとか、andymoriとか。あと四畳半フォークとか、浅川マキさんとか、そういうちょっと荒廃した世界観を歌う人と、あとはSF小説が好きなので。グレッグ・イーガンとか、カート・ヴォネガット・ジュニアとかってなんかピリっとした感じじゃないですか。そういうものの影響が折衷された結果の歌詞なんだと思います。
junet ただkuroという人が書いている以上、この人の中にある「人様には言えない何か」みたいなものが歌詞の中から漏れ出ているとは思います。メッセージの押し付けはしないんだけど、言葉の1つ1つからパラパラとこぼれ落ちてくるものはあるし、それはけっこう普遍的なテーマだったりはするので、そこには共感してもらえるのかなって思ってますけどね。
kuro うん。ある意味ソウルから出てきた言葉ですから。何かムリをしたりしているわけじゃなくて。好きな音楽をやってる人もだいたいそうですし。それこそ大森靖子ちゃんもそうだし、ドラヘビなんかはまさに作為を感じないじゃないですか。
──秋本武士さんなんてそれこそ別ユニットの名前がREBEL FAMILIA。まさにレベルミュージックの人だとは思うんですけど、本気も本気。言葉を選ばず言うなら、ある意味“素”で世の中のありように対抗しようとしてますもんね。
kuro だからカッコいいし、憧れますけど、レベルミュージックの人でもない私が自分を偽ってそれをやるかって言ったら……。
──逆に秋本さんに怒られると思います(笑)。
kuro たぶんそうですよね(笑)。
junet だからウチらもウチらで素というか、ウチらのスタイルでやらなきゃいけない。それこそある意味文化系的というか「ダブなんだけどレゲエじゃない。でもダブ」っていうスタイルで。最近気付いたんですけど、メンバー5人の考えるダブって全部違うんですよね。それぞれ5人にとってのダブっていう輪っかがあって、それを重ねてみると、当然重なり合わないところもあるんだけど、中心には絶対に重なるところがあって。それがTAMTAMっていう存在のことと「For Bored Dancers」っていうアルバムの音のことを指すんだろうなって思ってます。結局、全員の素を持ち寄った結果が今のバンドのありようと音になってるんです。
kuro だから最初に出会った頃からずっと一緒なんですよね。クラブミュージックが好きな人も、ポップスやロックが好きな人も、ワールドミュージックが好きな人も、ノイズが好きな人もいるんだけど、全員が「ダブっていいよね!」って言い合えている状態。その接点があるからこそ今もダブバンドでいられるし、こういうアルバムができあがったんだと思ってます。
TAMTAM - クライマクス(Live at JAMBORiii STATION 20140305 Ver.)
TAMTAM - 「シューゲイズ」 Live at JAMBORiii STATION 20140403 Ver.
- Contents | TOP
- #1 スピードスターレコード レーベル長 小野朗インタビュー
- #2 TAMTAM kuro & junet kobayashiインタビュー
- #3 ラジオDJが語るTAMTAMの魅力
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」 / 2014年4月23日発売 / 1620円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64103
- メジャーデビューミニアルバム「For Bored Dancers」
収録曲
- クライマクス
- デイドリーアンドマリー
- シューゲイズ
- フリー
- バイマイフューチャー
- トゥナイト
収録曲
- クライマクス
- クライマクス 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)REMIX
- クライマクス junet kobayashi REMIX
TAMTAM(タムタム)
kuro(Vo, Tp)、yuthke suzuki(G)、tomomi kawamura(Key)、junet kobayashi(B)、affee takahashi(Dr)の5人からなるダブバンド。2008年12月に結成され、2011年11月に自主制作盤「Come Dung Basie」をリリースする。2012年5月にはHAKASE-SUN(LITTLE TEMPO)をプロデューサーに迎えた初の全国流通作品「meteorite」を発表し、高い評価を得る。2013年12月には音楽雑誌「ミュージックマガジン」の特集「ベストアルバム2013」日本のレゲエ部門で1位を獲得。ライブではダブPAの石本聡を帯同し、リアルタイムのディレイ、リバーブ処理を施した独特のパフォーマンスを展開している。2014年4月にスピードスターレコーズよりメジャーデビュー。
2014年4月25日更新