SUPER★DRAGON「Concealer」インタビュー|9人のユートピアを求めて 10周年イヤー1作目で示す無比のアティチュード (3/3)

SUPER★DRAGONのノンフィクションを閉じ込める

──そして3曲目の「笑い話」は結成10周年を記念して制作された楽曲で、ツアー「SUPER X」最終公演でのサプライズ初披露は、すでにメモリアルな場面としてグループのヒストリーに刻まれているのではと思います。

古川 そうですね。「SUPER X」のツアーが6月から9月末までの長期間の開催で。始まったくらいの時期に「ファイナルをスペシャルなステージにしたいな」と思い、バラードを作って披露するのはどうかなという考えが浮かんだので、提案してみたんです。そういうタイミングで披露する新曲は、普通に考えたらファンの皆さんに「ありがとう」を伝える曲にするのがキャッチーな着地点なのかなと想像するんですけど、そうじゃないほうがウチららしいかなと。

池田 そうだね。

池田彪馬

池田彪馬

古川 もちろん、BLUEに対する感謝を当たり前に持ったうえで、みんなに向けた曲にするよりは、SUPER★DRAGONのこの10年をどう自分たちで咀嚼して1曲に閉じ込めるか、ということにチャレンジしてみたかった。自分たちのことを包み隠さず歌うのがきっと自分たちのためになるし、何よりBLUEにとってもうれしいことなんじゃないかなと思ったんです。制作はかなり大変というか、いろいろストーリーがあったのですが、妥協せずにやり切れました。ノンフィクションを閉じ込めるという作業を一貫してできたので「いい曲できたな」って感じです。

──作詞のクレジットはSUPER★DRAGONとなっていますが、作業はどのように?

古川 正確に言うと、マイクを持つ5人(古川、ジャン、田中、池田、松村)が自分のヴァースを自分で管理運営、みたいなスタイルで作っていきました。その中で、例えば僕だったら玲於に話を聞いたり、ダンサーも交えた歌詞のミーティングをやったりという時間も作って。そういった場でしゃべった音声を録音して、トラックの中に入れたりもしています。

古川毅

古川毅

──後ろに薄く入っているメンバーのしゃべり声はそういったところから取っているんですね。

古川 ほかにも動画の素材とか、いろんなところから持ってきました。そんな感じで、全員の視点や気持ちを組み込んでいった。もちろん書き手のエゴが入る部分もありますけど、同時に代弁者でもあるという。シビアなスケジュールの中でそれぞれ書き上げていったんですが、1人ひとりリリックが提出されると、そのたびに感動してました。このエネルギーは尊いものだったなと思います。

ジャン 僕は颯から「SUPER★DRAGONの10年に思うこと」を聞いたんですけど、返ってきたのがほぼ“俺の好きなところ30選”みたいなLINEで(笑)。めちゃめちゃ俺のこと褒めてくれてて……。

志村 そうなの!?(笑)

ジャン 「ジャンのこういうところに助けられた」「ジャンのここが面白い」みたいな。

一同 へえ~!

飯島 いや(笑)、僕はジャンとの思い出を箇条書きにしていったんですよ。

ジャン だから俺はそれを読みながら、とてもいい気持ちだったんですけど。

志村 あはははは! いい気持ちで書いてたんだ。

ジャン 「こんなことを思ってくれてたんか」と。そうやってそれぞれがダンサーとコミュニケーションを取ったり、あとは僕のスタジオで彪馬、洸希と最初のデモ作りをやったり。楽しく制作できた記憶がありますね。

志村玲於

志村玲於

ジャン海渡

ジャン海渡

僕らの日常の出来事だから

──これはダンサー陣に伺いたいのですが、完成した歌詞の中で特に気持ちが乗るフレーズはありますか?

飯島 僕は「俺のふざけた Photos 消すな一生」が好きです。「ふざけた Photos」って、特にジャンのふざけた……。

ジャン “かわいげのある”、ね?

飯島 かわいげのある写真を(笑)、メンバーがすごい撮ってて。グループLINEに今でも昔のやつを流すんです。

飯島颯

飯島颯

柴崎楽

柴崎楽

伊藤 「ふざけた Photos」を送り合う日が定期的にあるんです。

松村 送られてくるの、ジャンか玲於のどっちかじゃない?

志村 そう、だいたいイジられるのはここの2人なんだよ。

古川 玲於の場合はネットに落ちてる写真ね。世に出てる写真が面白いという(笑)。

飯島 そうやって僕らの日常の出来事を表した歌詞だから、聴きながらもクスッとなれる感覚があります。

志村 俺は1つだけを挙げるのは難しいや。ここにある歌詞、全部がお互いのことを表しているので、何について書いているのか全部わかるし、「これはあのときのことだな」となるので。

古川 そのうえで何かあるんじゃないの?

志村 いや、歌詞が全部重いのよ。全部がパンチラインだから。

──例えば「3年前の長月」などシーンがぐっと絞られる描写もあって、聞き手としては「ここで何かがあったんだな」と思いますが、メンバーはもちろんその内容まで共有しているわけですよね。

松村 ええ。このときには殴り合いが……。

松村和哉

松村和哉

ジャン でっちあげです(笑)。

古川 全部が伝わるべきだと思って書いているわけではないんですよね。もちろん、みんな深読みしたり考察したいだろうなと想定していました。BLUEにもいろんな受け取り方があると思いますし、まあそれはそれとして、想像すること込みで楽しんでほしいです。なのでサビは逆に、普遍的な内容になったらいいなと。全部僕らの“自分たちごと”に重なるんですけど、人によっては家族のこと、友達のことを重ねられるのかなと思いながら書きました。まあ、10年間本当にいろんなことがあったので。曲にすることによってやっと消化できたような感覚になるトピックもいくつかありました。そういう意味でも、自分たちの歩みを1回整理し直すような、そんなタイミングになったのかなと思います。

自分たちの理想、ユートピアを実現できるように

──「人に言われて知った これは『奇跡』」という歌詞も、すごくリアルだなと思いました。結成から10年間、9人体制という形を変えずに歩んできたことを周囲は「すごい」「奇跡だ」と称えると思いますが、それはあくまで周りが相対的にSUPER★DRAGONを見たときの所感であって。主体としてSUPER★DRAGONを生きている皆さんにとっての実感は……。

ジャン 何も思わないのが正直なところで。

松村 マジでなんも思わないね。

伊藤 ほかのグループで活動した経験がないですし、自分はSUPER★DRAGONしか知らないという意味では、ずっとこれが当たり前で10年やってきたんですよね。これがすごいことだって、僕は10周年に向かっていく中でやっと理解していったような感覚です。それも「あ、これって実はすごいのかな」くらいの感じですけど。

伊藤壮吾

伊藤壮吾

──SUPER★DRAGONはこれからもSUPER★DRAGONらしく進んでいくんだろうな、ということは楽曲からも感じ取りつつ……最後に今見据えている9人の未来について、聞かせてもらえたらと思います。

古川 目先の目標だと日本武道館でのワンマン実現というのがありますけど、きっとこれからも今までのようにいろんなチャレンジをしていくと思います。そのたびに自分たちが大事にしたい軸を持ち、しっかり地に足をつけつつ、柔軟に表現ができたらいいですね。自分たちの理想、ユートピアを実現できるように楽しくやっていけたらいいなと。うん、楽しくやれたらいいかな。その気持ちがあったから、ここまで続けてこられたとも思うので。みんなで遊ぶような感覚で活動を楽しんで、それが誰かに届いて、この間のツアーファイナルみたいな感動的な瞬間がたまに訪れて。そういうことがあるから僕らはずっと、SUPER★DRAGONを続けていられるんだと思います。

プロフィール

SUPER★DRAGON(スーパードラゴン)

志村玲於、古川毅、ジャン海渡、飯島颯、伊藤壮吾、田中洸希、池田彪馬、松村和哉、柴崎楽の9人からなるミクスチャーユニット。2015年9月に結成され、2016年11月にシングル「Pendulum Beat!」でCDデビューする。2017年1月に1stアルバム「1st Impact」を発表。2019年には2月に2ndアルバム「2nd Emotion」を、8月に3rdアルバム「3rd Identity」をリリースした。2022年3月に4thアルバム「Force to Forth」を発売し、5月から12月まで、毎月新曲を配信する企画を実施。2023年3月には5thアルバム「mirror」をリリース。神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでのワンマンライブを成功させた。2024年3月にシングル「New Rise」でポニーキャニオンからメジャーデビューし、9月にはメジャー2ndシングル「Downforce」を、2025年6月にメジャー1stアルバム「SUPER X」を発表。12月にドラマ「悪いのはあなたです」エンディング主題歌をリード曲とするシングル「Concealer」をリリースした。