SUPER★DRAGON「New Rise」インタビュー|9年目のメジャーデビューで新たな世界へ (2/3)

やれることが相当広がったタイミング

──2018年から2020年くらいまでの3年間はどうでしょう。この時期は今やキラーチューンとなっている「Untouchable MAX」(2019年2月リリースのアルバム「2nd Emotion」に収録)や、グループ内ユニットであるファイヤードラゴンとサンダードラゴン、それぞれのミニアルバム「TRIANGLE」(2019年12月)がリリースされた頃ですね。

古川 徐々に9人の自我が芽生えてきて、それこそ「SWEET DEVIL」(2018年8月リリースのシングル)のカップリングで、僕たちの好きなサウンド感の曲をスタッフがすくい上げてくれたり……みたいなことが増えてきたタイミングでしたね。翌年には2ndアルバム「2nd Emotion」を背負ってのZeppツアーがあったんですが、メンバー的に大きな成長を実感したツアーだったので、それもかなり思い出深いです。小中学生の若い自分たちに見合った少年らしさ、みたいなそれまでの表現から、だんだんとソリッドに。表現の幅を広げるフェーズに入ったのが、2018年くらいだったと思います。やれることが相当広がったタイミングだったのかな。

ジャン海渡 そうだね。先ほど挙げていただいた「TRIANGLE」ではファイヤードラゴン(志村、古川、ジャン、飯島)とサンダードラゴン(伊藤、田中、池田、松村、柴崎)に分かれてツアーもやりましたけど、ファイヤーはバックダンサーを、サンダーはバックバンドを初めてつけるという挑戦もありましたし、それぞれに既存の楽曲をアレンジしてライブでの見せ方を追求していく作業自体も過去になく挑戦的で。グループ全体としてだけではない、ユニットとしての力もより強化されたと思いますし、この経験で培われたものは今の自分たちにも生きていると思います。

ジャン海渡
ジャン海渡

ジャン海渡

色や魅力を再度整理していく期間だった

──そして、コロナ禍に差しかかる2020年から今に至るまで。スパドラは、コロナ禍においても場所設定や演出に工夫をこらした配信ライブをされていたのが、個人的にはすごく印象に残っています。

松村 コロナ禍で対面のライブができないのは、スーパーつまんなかったですけどね。それはきっと、世界中のアーティストたちが思っていたことだとは思うんですけど。エンタメで生きている俺らばっかり食うやんみたいな。みんな息苦しそうだったけど、そんな中で配信ライブをやって、演出でいろいろと遊べたのは普段のライブとは別モノの感覚で。今振り返ると、あの状況だからこそできたことだし、コロナ禍を抜けたあとも自分たちの活動に生かせる経験でもあったので。そういった意味では、新たな発見はめちゃくちゃありましたね。

──ミクスチャーロックの枠にとらわれないような音楽性の広がりも見られたタイミングかとは思うのですが、そのあたりについてはいかがでしょう。

古川 「君は1000%」「ダーリング」のカバーも4thアルバムの「Force to Forth」(2022年3月リリース)も新曲の毎月連続リリース企画(2022年)も、いろんな取り組みに真摯に向き合っていくことによって、自分たちの色や魅力みたいなものを再度整理していく期間だったのかなと思います。それをきれいに整理していった先で完成したのが「mirror」(2023年3月リリースの5thアルバム)だと思うし。実験をずっとしていたな、みたいな感覚がありますね。

古川毅
古川毅

古川毅

新しい環境でも常にクリエイティブでいたい

──そして、2024年1発目の曲として、メジャーデビュー曲「New Rise」が完成しました。

ジャン メジャー1発目のシングルということで、新しい場所に僕らの曲が届くチャンスでもありますし、今までついてきてくれたBLUEもより期待感を持ってくれているタイミングだとも思うので、制作にあたっては入念に話し合いを重ねました。ポニーキャニオンのスタッフの皆さんとも初めて音楽について話をして、そのうえで用意していただいた候補曲を絞っていく作業をしたんですけど、「New Rise」を聴いたとき「これいいね」となったんです。もとの曲はすべて英語詞だったんですが、トラックがいいし、スパドラらしいミクスチャー要素がありつつも縦ノリを重視したヒップホップ感が強めで、フックパートも同じフレーズを繰り返すループフックが耳に残って。印象的なフックはメジャー1発目の曲の大事な要素だと思っていたので、そこのよさを含めてかなりスムーズに決まりました。「この曲で勝負できる」とスムーズに決まること自体が自信につながるので、うれしかったですね。

──歌詞に関しては、今までと変わらずにジャンさんと和哉さんの名前がクレジットされていることが、BLUEの皆さんにとってはうれしいことなのではと思います。

ジャン 新しい環境でも「常にクリエイティブでいたい」という僕たちの気持ちをスタッフさんが尊重してくれて、変わらずにリリックを書けたのはとてもありがたいです。メジャー1発目の曲ということで、やっぱり俺と和哉にはつづりたい言葉、蹴りたいヴァースがあって。よりたくさんの人が聴いてくれるであろうことを考えて、「爪痕残そうぜ」みたいな、とにかくヤバいヴァース書こうみたいな気持ちがありましたね。だから制作も楽しかったです。パート分けを話し合ったうえで、それぞれにお気に入りのヴァースを持ってきて……普段なら僕の家で作業するんですけど、珍しく僕の家が不調だったので和哉の家で作業して。

志村 「家が不調」って何……?(笑)

田中 あはははは!

古川 幽霊でも出たか?

ジャン 俺の家のマイクが壊れちゃいまして。和哉の家に行きました(笑)。

松村 さっきおっしゃったように、メジャーデビュー曲にも僕らの名前がクレジットされていることはBLUE的にもうれしいことだろうし、歌詞を聞き流すものじゃなく読むものとして捉えてくれるであろうことはわかっていたので。自分は文字として読むとより面白くなるようなリリックを意識しましたね。英語でも日本語でもいろんな遊び方ができたなという実感があるので、たくさん読んで考えてみてほしいです。

松村和哉
松村和哉

松村和哉

どのフレーズもわかるんですよ。「このときのことを言ってるんだな」と

──実際リリックを読ませてもらって、力強い言葉選びに今のSUPER★DRAGONの意志が詰まっていると感じました。

古川 制作に入るまでの2人のモチベーションだったり、この作品に懸ける並々ならぬ思いみたいなものはすぐ近くで感じていたので「本当に頼れるな」と仲間として思っていたんですけど、いざ完成形を聴いたときには、ちょっとビックリしました。彼らがこれまで培ってきたものにプラスして、新しいビートの乗り方にチャレンジをしていたり、進化も確かに感じられて素晴らしいなと。そういうラッパーがいてくれることが、このグループの価値を上げていると思います。

飯島 僕が特にグッときたのは、ジャンのラップの「過去の不安も今ではfun」というところ。ここを読んだとき、今の僕らの気持ちを代弁してくれているような感覚になりました。特にコロナ禍……それ以降もなんとなく、スパドラがこの先もっと成長するためにはどうするべきかをすごく考えて、少なからず不安を感じていたんです。だけど、そういうムードが今回のメジャーデビューをきっかけに変化して、今はすごく自信を持って、自分自身楽しんで活動ができているから。自分の思いとすごく重なるパートですね。

飯島颯
飯島颯

飯島颯

柴崎 和哉のリリックを読むと、同い年でここまで濃い言葉を書ける和哉は本当に自分と同じ年数生きてる人なのかな?といつも思います。自分のことも、グループのこれまでのことも客観視して、1つひとつの歌詞に気持ちを乗せていることがわかるので、ラップを聴きながら踊っていても気持ちがすごく乗るんですよ。

志村 やっぱり、どのフレーズもわかるんですよ。「このときのことを言ってるんだな」というのが。実際詳細を説明されているわけじゃないけど、どれも僕たちが経験したもので、それを1つ残らず、嘘なく書いてるなって。だからどれを取っても刺さるフレーズしかないというか。すごいなと思います。

古川 自分は特に、2番の頭のジャン和哉の掛け合いがめちゃくちゃ好きなんです。「芯はぶれずに俺ら龍(流)でBibbidi-Bobbidi-Boo」のふざけ方とか、めちゃくちゃジャンっぽいなあと思うし。そこにすかさず「We need a BLUE light 真っ赤な嘘に用ない」と色の対比が来るのもよくて。このフレーズに関しては、僕らは嘘を届けたくない、しっかり真実を伝えていきたいという気持ちがこもっているんですよね。フィクションの中にもノンフィクションを絶対入れ込むことは、僕たち意識的にやっているので。まあ、そういうことを含めて……“最後に笑うことにfocus”したいなって思います。

一同 (一瞬の沈黙)

松村 あの、俺の歌詞でスベるのやめて?

一同 あはははは!

ジャン ちなみになんですけど、「俺ら龍(流)で」で「龍」と「流」をかけたのは、楽のアイデアなんですよ。彼が以前、番組のインタビューか何かでそう言ってて。

古川志村 そうなんだ!?

田中 あー! 確かに言ってた。

田中洸希
田中洸希

田中洸希

柴崎 そうそう。「龍」にかけてコメントする、みたいな機会があって。

松村 楽からのサンプリングだ。

ジャン 「使ってもいい?」って、楽に聞きましたから。

柴崎 はい、許可取りされました(笑)。