SUPER★DRAGONが3月23日にニューアルバム「Force to Forth」をリリースする。
スパドラにとって4枚目のオリジナルアルバムとなる今作は、「3rd Identity」(2019年8月)のリリースから約2年半の中で9人が着実に成長、進化を遂げてきたことを裏付ける作品となった。メンバーはアルバムに収録されたほとんどの楽曲の制作にプロデュースや作詞で参加。タイのアーティスト・Anatomy Rabbitや韓国人トラックメイカーのNAMELESSとのコラボレーションも行い、「ミクスチャーユニット」を標榜する自身の表現の幅広い可能性を全10曲に詰め込んだ。
メンバー自身も「名刺代わりの1枚」と胸を張る今作が完成するまで、SUPER★DRAGONは何を考え、どんな行動をしてきたのか? 音楽ナタリーでは3つのグループインタビューで9人の思いを探る。また、特集最後にはメンバーによる収録曲の解説とコメントを掲載。彼らがこのアルバムに込めた熱い思いを受け取ってほしい。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 笹原清明
古川毅×伊藤壮吾×田中洸希
「“名刺代わりの1枚”ができるまで」
僕らの居場所を守っていく意識
──4枚目のオリジナルアルバム「Force to Forth」が完成しました。「3rd Identity」からの大きな進化を感じられる作品になりましたね。
古川毅 はい。僕らにとって名刺代わりの1枚ができたと思います。前作からの2年半で自分たちのやりたいことがここまで具現化できるようになったことが何より自信になりましたし、これから僕らがやるべきことも明確になってきた中で「これがSUPER★DRAGONです」と、皆さんにこの作品で“自己紹介”ができることがうれしいです。
伊藤壮吾 これまでのスパドラのイメージに沿った曲もあれば、「こんな曲もやるんだ」というものもあって。聴いてくれる方それぞれが好きな曲を見つけてもらえるラインナップになったと思います。
田中洸希 「3rd Identity」をリリースしたあとに世界の状況が変わって、コロナ禍の中で、自分たちの中にもいろんな感情が渦巻いていて。そんな中で完成させたアルバムは、やっぱり思い入れがすごく強くなりますね。なので皆さんにも1つひとつの曲をじっくりと聴いてもらいたいなということは、完成した段階で強く思いました。
──コロナ禍というお話がありましたけど、困難なことが多い状況の中でもスパドラはしっかり歩みを進めてこられたんじゃないでしょうか。見せ方にこだわった配信ライブもそうだし、楽曲制作の面でも、メンバー発信で何かを生み出そう、思いを届けようという意志が感じられる活動をされているなと思っていました。
毅 僕ら自身がスパドラのことを大好きなので、「居場所をちゃんと守ろう」という意識は、いろんな出来事を通して強く感じていたかもしれないです。自分たちが将来やりたいことのために、今やるべきことをやろうと。オンラインライブや楽曲制作、1つひとつを大事に、変に浮足立たないように。自分たちらしくしっかり地盤固めをして、居場所を守っていく意識がありました。2021年には「BLUE」というファンネームを発表して、ファンの皆さんとのつながりも大事にしつつ……今の状況から抜けたとき、さらに大きな一歩を踏み出すための下準備というか。気持ちを整え、コントロールする作業をみんなでしてこれたのかなあと。なので、今回のアルバムにはそういう思いも凝縮している気がしますね。
──我慢の2年半だったと思いますが、その中でチームの士気が落ちたり……みたいなことはなかったですか?
洸希 なかったですね。逆に、リモートで集まって「ファンのみんなに会えない分、何をしよう?」と話し合ったり、BLUEに向けて俺たちはどんな楽しい発信ができるかを常日頃考えていたんです。そう振り返ると、こういう期間があったからこそ自分たちのことをもっと考えるようになったと思うので、むしろチームが結束するための大きな機会になったんじゃないかなと思います。
──2020年9月には、メンバーの皆さんがイチから制作に携わった「Burning in the nights」がリリースされました。このあたりから、メンバー自身が楽曲制作面でクリエイティビティを発揮する流れが加速したように思います。
毅 自分たちでコンセプトを決めたり、メンバーによっては作詞に参加したりという作業は「3rd Identity」でもやっていたことではあるんですけど、最初は1人2人が自分たちの曲について考えていたのが4人5人になり、6人7人になり、9人全員になり……という変化は、このあたりだったかなと思います。曲に限らずですけど、メンバーそれぞれがスパドラのクリエイティブに向く姿勢が変わっていった。「自分たちで生み出していかなきゃ消耗していくだけだよね」っていうのが僕らのスタンスだし、自分たちで自分たちの生かし方をやっとつかめてきたという感覚があるのかもしれないです。
BLUEは僕らにとってなくてはならない存在だ
──アルバム制作の流れにもつながると思うので、昨年の活動についても少し振り返れたらと思います。
壮吾 一昨年にはまったくできなかった有観客公演がようやくできるようになったのがうれしかったですね。「我慢した甲斐があったなあ」と……BLUEのみんなの声は聞けないけど、ここまで来られてよかったなという安心感がありました。
──4月に開催された「NEO CYBER CITY」が、ファンの皆さんとの再会を果たす公演となりました。
洸希 「NEO CYBER CITY」はめちゃめちゃ心に残ってます。2020年にオンラインライブをたくさんやってきた中で自分たちは1つ新たな見せ方を見つけられたんですけど、「NEO CYBER CITY」ではそういう経験を生かすことができたと思っていて。自分は体調不良で本編に出られなかったんですけど……ファンのみんなの前でひさびさにライブをしている8人の姿にグッときましたし、「やっぱこれだよな」って。2020年に僕らが「足りない」と感じていたものが、みんなの前でライブをしたことで満たされて、自分の中の安心感がすごかった。あの(ペンライトが光る)青の景色を自分の目で確認して、BLUEは僕らにとってなくてはならない存在だなと再確認しました。
──自分たちのライブを客観的に観るという経験は、これまでになかったですよね。
洸希 死ぬほど悔しかったですし、新曲の披露もあったので「一緒に歌いたかった」という思いももちろんあったんですが、「やっぱスパドラのライブってめっちゃいいな」と心から思いました。リアルタイムで客観的に観ることなんて、そうそうないことなので……いや、でもやっぱり「みんないいなあ」って思ってましたね(笑)。
未知のものと混ざり合っていこう
──「Force to Forth」の制作は、いつ頃スタートしたんでしょうか。
毅 去年の夏ですね。7月のファンクラブツアーの最中に「X」の楽曲制作に入ったのがきっかけです。
──その時点で、アルバム全体のテーマはあったのでしょうか?
毅 ざっくりとした構想として、「海外のアーティストとコラボしたいね」という話は出ていました。これは「君は1000%」「ダーリング」(2021年4月リリース)を出した段階ですでにあったイメージなんですが、自粛期間だった2020年が“守り”の年になったので、2021年からは外に視野を広げて、未知のものと混ざり合っていこうと。僕らがこれまで掲げてきた「ミクスチャーユニット」という肩書きを再解釈しつつ、もっと自分たちのスタイルをクリアにして新たなアルバムで提示できたらいいよねという思いがありました。なので「X」も“いろんなものが混ざり合う”がテーマになった曲ですし。
──なるほど。
毅 ただ、「X」の制作はかなり時間に追われていました。ツアー最終日の翌日にレコーディング、みたいなスケジュールだったので、歌詞をライブ終わりの新幹線で必死になって書いたり。「自分たちで作詞したい」と言い出した身なので、モタモタしていられなくって(笑)。ホテルでは、隣のジャン(海渡)の部屋からジャンと和哉がラップしている声が聞こえてきたりもしましたね。
週5くらいで思いますよ
──ちなみに、アルバムタイトルは「前進する力」という意味の受け取り方で合っていますか?
毅 そうですね。ポジティブエネルギーというか、「もう内向きじゃなくていいよね」と。僕らだけじゃなくみんな、己を見つめる時間をこの2年間でたくさん持ってきたと思うので。今まで直面したことのない現実に探り探り向き合うしかなかったと思うんですけど、今度はそこからどうやってアグレッシブに展開していくか。この作品を通して、聴いてくれる人の後押しができればいいなという思いがこもっています。
──先程毅さんが「僕ら自身がスパドラのことを大好き」とおっしゃっていましたけど、実際に「Force to Forth」からは皆さんのスパドラに対する情熱や愛が強く感じられました。それほどまでグループ活動に愛を持って取り組めるのには、どんな理由があるんでしょう。
毅 愛に理由なんかないですよ……。
洸希 あはははは!
壮吾 ちょっと何? キメちゃって……(笑)。
毅 あはは。そこらへんは、ウチの壮吾さんがバシっと。
壮吾 そうだな……僕は鉄道が大好きで、小さい頃からホントにずっと鉄道にしか興味がなかったんです。でも、今の自分を客観的に見ると、“片足鉄道、片足スパドラ”で立っている感じなんですよ。それだけ好きになれるものが鉄道以外にできたっていうことが、自分の中ではけっこう驚きで。それだけメンバーみんながいい人ですし、好きなんですけど……それはなんでなんだろうなあ?
洸希 メンバーみんな、ほかのメンバーのことが大好きなんですよね。好きだからこそ指摘もできるし、好きだからこそ褒め合える。そういう関係性が自然とチームの団結につながっているのかなと思います。
──素敵ですね。日々過ごしていても、「いいグループだな」と思う瞬間はあったりします?
毅 全然、週5くらいで思いますよ。
壮吾・洸希 あはははは!
──ほぼ毎日ですね(笑)。
毅 冗談抜きに週5くらいで思う瞬間はあるんじゃないかな。今回のアルバム制作の中でも、それぞれのポテンシャルの高さに「このメンバーが集まってるの奇跡やな」と思ったりもしたし。自分に足りないものを誰かが埋めてくれたとき、「グループっていいな」と思うんです。自分たちの活動に明確な“正解”がないからこそ、その正解をみんなで見つけにいく作業も楽しい。そうやって楽しむ中で生まれた作品や僕らのアクションをBLUEのみんなが支持し、応援してくれるのも本当にありがたいことだと思います。なんというか、すべてがつながっていますよね。自分たちが自分たちのことを誇れる、好きでいられる要因は、そういうところにあるのかなと思います。