ジャン海渡×池田彪馬×松村和哉
「メンバーのクリエイティビティ」
理想を実際に表現できる実力が伴ってきた
──「Force to Forth」に収録されているほとんどの楽曲の制作に、メンバーの皆さんが携わっていることにまず驚きました。
ジャン海渡 6年間スパドラの活動を続ける中で昔からクリエイティブでいたいという思いはあったけど、「スパドラの音楽ってこうだよね」と僕ら自身が考える理想を実際に表現できる実力が伴ってきたのかなと思います。メンバーは普段からリリックを書いたりトラックを作ったりしているし、以前と比べたら想像力もより深く、細やかになっているので「そろそろ表現できるよね」と。そういったムードの中で今僕らが作りたいアルバムについて話し合ったら、どんどんイメージが膨らんでいき、今回の作品にたどり着いた感じです。おっしゃったように、「Force to Forth」ではたくさんの曲でみんなの作りたいものを形にする作業ができました。そういう意味では今後よりいっそうクリエイティブな表現をしていきたい僕らにとっての“スタート地点”とも言えるアルバムなので、形にできたことがうれしいです。
──前作「3rd Identity」からの成長、進化が著しいですよね。
松村和哉 ボーカルチーム(毅、ジャン、洸希、彪馬、和哉)は楽曲制作に携わるという面で成長があったと思うし、個人的にはダンサーチーム(玲於、颯、壮吾、楽)もここ最近の成長がすごいなと思ってます。
池田彪馬 「3rd Identity」で9人それぞれが1曲ずつコンセプトのプロデュースを担当するという経験をしてから、己のことを見つめる意識が強くなったと自分は思っていて。そこから自粛期間などもあって自分と向き合う機会が増えたからこそ、新たな気付きもありました。それが結果としてそれぞれの成長につながったのかなとも思いますし……やっぱり、ここ数年の状況の中でグループ活動ができることのありがたみを再確認したので。自分たちの活動に対しての責任みたいなものが、行動に反映されてきたのかなと思います。
思い描いた理想を無駄なく表現できた
──アルバム制作がスタートしたのは昨夏だと伺いましたが、皆さんは「Force to Forth」でどのような表現をすることを目指して曲作りを進めていきましたか?
ジャン 「love or like (Tokyo) w/Anatomy Rabbit」のデモが早い段階で上がっていたんですけど、それを聴いた時点で、個人的には「新しい攻め方のアルバムになるのかな」と感じていました。Anatomy Rabbitさんはタイで人気のアーティストなのできっと海外の人も聴いてくれることになるだろうし、いろんな方面にアプローチできる曲を集めたいなと。もちろん僕らが長年培ってきたスパドラらしい音楽性も忘れたくないので、僕ららしい曲と今までにないニュアンスの攻めた曲をバランスよく配置できたらと考えました。そこからはメンバーとプロデューサーとで試行錯誤して、制作を進めていった感じですね。
──ジャンさんは特に多くの曲で制作に関わっていますね。
ジャン 自分はメンバーの中で音楽制作のリーダー的な立ち位置なので「いい音楽を作らなきゃ」という責任感がもちろんあるし、全員が満足してレコーディングに臨めるような曲を作りたいなと思っていました。アルバム制作が決まった段階でトラックメイカーのGeek Kids Clubに声をかけて作ったのが1曲目に収録されている「Welcome to my hell」なんですけど、この曲ではGeek Kids Clubのトラックに僕がメロディと詞を付けたんです。“ジャン節”というか……個人的な癖が残っている曲も、メンバーが歌を担当することによってスパドラらしい色に染まっていくということを感じられた流れが、僕的にはすごく印象に残ってます。
彪馬 ジャンくん、制作に入る前から「こういう曲を作りたい」みたいな話はしてくれてたんだよね。その時点で見えている方向性は自分も一緒だったので完成を楽しみにしていたんですけど、ジャンくんのメロディとリリックが乗った曲を聴いたとき、すごく新しさがあってワクワクするなと純粋に思いました。新鮮さを感じられるこの曲が作品の1曲目にあるのは、いい導入だと思っています。
──和哉さんは「2U」の作詞にジャンさん、洸希さんと参加しています。
和哉 ラッパー3人(ジャン、洸希、和哉)の曲を作りたいねということで、この曲のビートは「X」と同じ時期くらいに上がってきていたんです。「じゃあ3人で書くか」となったものの、当初は方向性がなかなか定まらず……アルバムに収録することを目標にしっかり考えてみようと、3人でリリックの内容を話し合って制作を進めていきました。僕自身は、この曲に関しては「ナメられないように」と考えていたというか。自分たちは本職のラッパーではないけれど、ヒップホップシーンの人にも認めてもらえるような曲になればいいという気持ちを持って書きましたね。
──そうだったんですね。実際かなり攻撃的な曲に仕上がっていたので驚きました。UKドリルというジャンルもそうだし、ラップのスキル的にも、皆さんが今まで鍛錬してきたものがここで爆発しているように感じて。
ジャン 確かにそうですね。リリックもかなり遊んでいて、いろんなメッセージを込めているので、そういったギミックを発見してもらえる楽しみもあるかなと思います。
──和哉さんの高速ラップパートも圧巻ですね。
和哉 自分で書いておいて、レコーディングはとても苦戦しました(笑)。
──彪馬さんが関わった曲についても伺っていいですか?
彪馬 僕が関わったのは「Pioneer (Keep It Real)」と最後の「-Tweedia-」ですね。「Pioneer (Keep It Real)」については、以前から「こういう楽曲をやりたい」と思い描いていたアイデアを……歌詞の世界観や自分が考えていることを細かく作曲家さんに伝えたんです。デモが上がってからも何度もやりとりして、こだわりたいところは妥協せずに作り上げることができました。自分的には、思い描いた理想を無駄なく表現できた曲になったなと思っていて。エレクトロというジャンルも音サビもスパドラ的にはひさびさだったので、いいテイストになったかなと。
ジャン そうだね。
彪馬 「-Tweedia-」は最初に毅くんとどんな世界観のバラードを歌いたいか話し合って作った曲なんですが、自分が知っていたブルースター(別名:Tweedia)という花が、すごくSUPER★DRAGONに合うなと思ったんです。BLUE、スターという言葉もそうだし、花言葉も「信じ合う心」「幸福な愛」とすごくいい意味合いだったので、この花をモチーフにしようと。僕らの持ち歌は攻撃的な曲が多いけど、この曲はBLUEに寄り添う形で歌を届けられたらと思って作った曲です。
──「SIX DAY」ツアーの最終日での初披露も印象的でした。
彪馬 最終公演のラストに披露したので気持ちもすごく入りました。BLUEの皆さんが僕らと目を合わせて聴いてくれていることを実感しながら、自分は歌詞に込めた思いを届けたいという気持ちで歌えたので、いい届け方ができたかなと思います。
この曲のために自分がいる
──アルバムを聴いていても、今こうしてお話を聞いていても、皆さんが自分のクリエイティビティを思い切り発揮して今作の楽曲制作に参加したことが伝わるのですが、自分発信でスパドラの曲を創作するとき、発想の源になるのはどんな思いやエネルギーなんでしょう?
ジャン 自分が曲を作るときは、“瞬間瞬間を大事にする”というか。混じり気なしにその曲の創作に向き合えるように、自室で作りたい曲のイメージに沿った色の照明を点けるんです。そうしたうえで、トラックを流して30分くらい目をつむり、浮かんだ感情を書き留める。「Welcome to my hell」のときはピンク、「2U」のときは赤でした。一見「何やってんの?」っていう感じかもしれないけど(笑)、それが自分にとっては一番没頭できるやり方なんですよね。
和哉 僕は……自分を出すことも大事だと思うけど、このアルバムの曲に関しては自分云々よりも曲の世界観を第一に置いて考えていました。「この曲のために自分がいる」みたいな考え方ですね。それが自分の表現の出発点だったと思います。例えば「2U」には「本気で世の中をよくしたい」という思いで向き合ったし、伝えたいことを明確に書けたと思っています。
彪馬 これは自分が大切にしていることなんですけど、スパドラを好きでいる自分を常に頭に置いておくというか。グループのことを好きじゃないと、ありのままを表現できないと思うんです。自分が「好きだな」と思うのと同じくらいほかのメンバーも愛を持って活動しているし、そういった9人の気持ちを忘れずに……メンバーの思い、僕らに携わってくれる人の思いを大切にしていると、表現にも自覚や責任が伴ってくると思っています。
──ありがとうございます。では最後に、アルバムが完成しての今の思いを教えてください。
ジャン アルバムができたとき、すべての曲に対して自分たち自身が満足して「いい作品になったね」と言い合えることが大切だと思うんですけど、今回の作品はこれまでのアルバムの中でも特に好きだし、やっぱり達成感も思い入れも大きいです。それは、9人全員の思いがそこにあるからなんですよね。例えば制作中、俺が思いつかないようなテーマを彪馬が提案してくれたりしたんですけど、彪馬が考えていることはほかの8人も同じように考えていることなんです。そうやってそれぞれのアイデアや思いが折り重なってできたアルバムが、自分は大好きですね。
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志村玲於×飯島颯×柴崎楽「“BLUE”とライブ」