ナタリー PowerPush - ソノダバンド

合い言葉は「ロックでいこう!」2ndアルバム「疾走」リリース

自分の思いを押し付けたくなった

──このアルバムが完成したことで、ソノダバンドが名実ともにロックバンドになったという実感はありますか?

園田 さっき「ロックバンドが自分で『ロックです』って言わねえだろ」って話もありましたけど、もう新しい言葉作ってくれよっていう感じですよね。フュージョンって言われてもそれはそれで腹立つし。

インタビュー風景

小山田 腹立つね!(笑)

園田 まあ腹立つけど(笑)、でも40代50代のおじさんに「いいねえ君たち! 昔のフュージョンを彷彿とさせるね!」とか言われても、それはそれでいいかなみたいな感じもあるんですよ。彼らの中で昔聴いてたそういう音楽とつながる部分があるから、そういう言葉で褒めてくれてるんだろうなって。

小山田 そういう要素もないとは言えないしね。

──言葉どおりの意味で言えば「ミクスチャーロック」なんだけど、ミクスチャーロックっていうとまた別のものになってしまいますからね。

一同 そうそう!

──クラシックやジャズの要素がなくなったわけじゃないし。

園田 あと世界観ってことで言えば、今回は僕の中でかなり意識的に“日本”に寄せてるところはあります。

──その“日本”というのは和のテイストという意味ではなく?

園田 ではなく。同時代のいわゆるJ-POPやJ-ROCKをすごく意識して曲を書きました。今年、地震が起こった数日後にアメリカに飛んだんですけど、向こうに行くとみんなめちゃくちゃ優しいんですよ。空港のいかつい黒人のおっさんまで「おまえら家族は大丈夫か?」とか「大切な人は無事か?」とか言ってくれて。そういう経験があって、自分の中に「そうか自分は日本人なんだな」っていう意識が芽生えてきたんですよね。

──その経験が今回のアルバムにどんな影響を与えたんでしょうか?

園田 「ルネサンス」の頃は曲名も「タンゴなんとか」みたいのが多かったし、自分が今まで聴いてきたいろんな世界の音楽のエッセンスをこの6人で表現しようっていう意識があった。でも今はだんだんエゴが出てきたというか、自分の思いを押し付けたくなったんです。

──その考え方がまさにJ-POP的なのかもしれませんね。ひとつの思いを聴く人と共有するという。

園田 インストでシンプルなことをやるか複雑なことをやるかっていうのは、恋愛に例えれば、「あなたが好きです」って一言で臆面もなく言い切ってしまうのか、スーツ着てバラの花束持って回りくどい言葉で告白するのかみたいな、そんな違いだと思うんです。

──じゃあ今回はストレートに「好きです」って?

園田 まあ、それが進化なのか退化なのかはわかりませんけど(笑)。

一同 あははは(笑)。

園田 でも自信がついたんだと思います。ただ普段着で面と向かって「好きです」って言えるようなところに来たのかなって、そんなイメージです。

ライブで曲がどう変わっていくのか楽しみ

──では最後に改めて一人ひとり、このアルバムの手応えについて伺いたいんですが。

インタビュー風景

赤股 個人的に自分のプレイで気に入ってるのは1曲目の「sayonara(さざ波に寄せて)」ですね。イントロの出だしから、ギターをかき鳴らすカッコよさっていうのが表現できたと思うんで。パワーコードをシンプルに鳴らしてるだけなんですけど、去年のソノダバンドだったら絶対ありえないようなフレーズだと思うんですよ。

──ギターの音色もこれまでにない感じですよね。

赤股 ディストーションにさらにファズをかけて下品な感じの音にしてみたんです。シンプルなカッコよさが表現できた気がしますね。

──橋本さんは?

橋本 今回のアルバムには結構コーラスが入ってるんですよ。自分たちの歌が世に出せるようなものではないっていうのはみんな思ってるんですけど、そういうのをあえて入れちゃったのが手応えのひとつかなっていうのはありますね。

──コーラスを入れるのは、インストバンドとしては反則じゃないんですか?(笑)

橋本 でも入れたかったんですよね(笑)。

──熱田さんは?

熱田 今回ミックスがすごいんですよ。最初に「上陸セヨ」っていう曲をミックスしたのを聴かせてもらって、自分たちが思い描いてたその曲のイメージと全然違う方向だったんですけど、それがものすごくカッコよくて。その印象が強いので、そこはぜひ聴いてもらいたいですね。

赤股 すごいいいギターを借りて弾いた演奏が、ミックスによってトンネルの中で録ったみたいな感じになって(笑)。でもいい音で録ってるからこそ、ああいう無茶なエフェクトかけてもちゃんと抜けてくるんですよね。

──牧瀬さんはどうですか?

牧瀬 ベースのことで言えばバラード以外は全部歪ませてて、それくらい音にはこだわって作りました。「デマゴーゴス」っていう曲では、我ながらナイスアイデアでベースをダブルにしたんですよ。左と右で。そこをぜひ聴いてほしいです。

──小山田さんは?

小山田 このアルバムでシンプルなロックっていう方向が見えてきたし、精神性みたいなものが曲に込められているので、これが始まりっていう感じがするんですよね。だから今はライブがしたいです。曲に発展性があるから、ライブでどう変わっていくのか楽しみですね。

──ソノダバンドって初めて観たときからから完成度の高いバンドでしたけど、「ルネサンス」の路線のまま完成度をさらに高めて緻密になっていってもどこかで行き詰まっていたんじゃないかと思うんです。だから今回こういう方向に舵を切ったことで、改めてワクワクする感じがあります。

園田 「ルネサンス」のあとにこの「疾走」ができたっていうのは僕らメンバー以外の人には不思議に思われるかもしれないですけど、僕は「ルネサンス」を作った時点でなんとなくこういうところに行けるんじゃないかっていう気はしてたんですよね。ある意味「疾走」でひとつ目指してるものができたっていう実感があって。でもまだまだ行けるだろうっていう気持ちも同時になぜかあるんですけど。

──じゃあ次の作品では、もしかしたらまたガラッと路線が変わるかもしれない?

園田 そうですね。でも今回イヤというほど意識した曲の強度であったりシンプルさであったりっていうのは、やっぱり根本に持っていたいと思います。

インタビュー風景

メジャー2ndアルバム「疾走(はしれ はしれ)」 / 2011年11月9日発売 / 3000円(税込) / EMI Music Japan / TOCT-28000

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CD収録曲
  1. sayonara(さざ波に寄せて)
  2. はしれ、はしれ
  3. デマゴーゴス
  4. Manic Street
  5. 千鳥足のススメ
  6. 素晴らしき朝帰り
  7. 上陸セヨ
  8. ねじれた手紙
  9. 道草のススメ
  10. 出たとこ勝負
  11. Catch The Rainbow!
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ソノダバンド

園田涼(Key)、熱田哲(Violin)、橋本怜(Cello)、赤股賢二郎(G)、牧瀬崇之(B)、小山田和正(Dr)からなる6人組インストゥルメンタルバンド。2006年に大学の音楽サークルで結成。都内ライブハウスを中心に活動を開始し、インディーズで2枚のミニアルバムを発表。2010年3月に米テキサス州オースティンで開催された「SXSW」に出演し、現地の音楽ファンの熱狂的な支持を得る。同年5月に初のフルアルバム「shiftrise」をリリースし、10月にはFlyingStar Recordsよりアルバム「ルネサンス」でメジャーデビュー。その後も精力的なライブ活動を重ね、2011年11月にはEMIミュージック・ジャパンからアルバム「疾走(はしれ はしれ)」を発表。