ナタリー PowerPush - ソノダバンド
コンセプトなし&勢い重視で「火の玉」完成
ソノダバンドが待望のニューアルバム「火の玉」をリリースした。これは、より自由な活動を求めて自主レーベルを設立した彼らの新たな船出を告げる1枚。24chアナログテープレコーダーでレコーディングされた「The Coast Session」「幸せはぬるま湯」や、和楽器とのコラボによる「討入前夜」など、新たな挑戦が多数詰め込まれた意欲作だ。
このアルバム発売を記念し、ナタリーではメンバー6人にインタビューを実施。コンセプトがないまま制作されたという新作について話を訊いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 佐藤類
「どういうアルバムですか?」と訊かれると困る
──前作「疾走(はしれ はしれ)」はソノダバンドのロックな部分に焦点を当てた作品でした。今回はその反動か、非常にバラエティに富んだ内容になりましたね。
園田涼(Key) そうですね。前作にもちろん後悔はないし、いいアルバムだと思うんですけど、今振り返ってみるとちょっとね、息が詰まるというか、よくも悪くも熱意がすごすぎるところはあって(笑)。今回はもっと肩の力を抜いて作ったアルバムですね。
──前作は肩に力が入っていた?
園田 デビュー盤の「ルネサンス」を出したときに、やっぱり僕たちみたいなインストバンドは、現実問題としてやってることが伝わりにくいんだなって感じたんです。だから前作は、例えばシンプルなエイトビートだったりっていう、わかりやすいフォーマットを詰め込んでみた。「これだったら文句なくロックでしょ」っていうものをやってみたんです。
──今回の新作には、そういったわかりやすいフォーマットはないですね。
園田 そうなんです。このアルバムについては、実はあんまりしゃべることがないんですよね(笑)。精一杯やったっていうのは胸を張って言えるんだけど「どういうアルバムですか?」って訊かれると困るっていう。不思議な感じなんです、僕にとってこのアルバム。
──かといって「ルネサンス」の頃に戻ったという感じでもないですよね。
赤股賢二郎(G) 確かに、そういう感覚はないですね。
熱田哲(Violin) 演奏面で、もっとライブ感を出したいっていうのはありましたけど。アナログテープを使って一発録りをしてみたり。
園田 とりあえず打ち込み全盛の時代に、ちょっとこう中指を突き立ててみたというか。
赤股 っていうのもあるんですが、まあやたらと作りこむよりも、単純に生楽器が6人集まって演奏するっていう、そこを一番ストレートに表現してみたかったんですよね。
ズレた演奏が味になる
──一発録りの魅力というのは?
牧瀬崇之(B) 例えばちょっと音がズレたりとかもあるかもしれないんですけど、タイミングが合ってたりきれいに弾けてることが音楽において必要な要素だとは必ずしも思わないので。1回の演奏に集中して、全部を込めてやるほうが僕の場合はいいものになるみたいですね。
小山田和正(Dr) 雰囲気重視というか、そのときにどういう気持ちで演奏したかが大事だと思ってたところはあります。突っ込んだ感じにしたいとか、落ち着いた感じにしたいとか、そういう楽譜であんまり表せないような表現をうまいこと録音できたらいいなっていうのは思ってました。
──あまり完璧を求めずに。
橋本怜(Cello) まあ楽譜どおりには弾きますけど、でもやっぱり完璧に再現できるわけではないですから。特にチェロやバイオリンはフレットもないし。そういう部分も愛してもらえばいいかなって。
──でも楽譜自体は今までどおりあるわけですよね。
橋本 うーん、あんまりがんばると僕はダメなんですよ(笑)。だから気楽な感じでやろうと思って。ちょっと正確じゃないところが味になることもあるし、だからあんまり何も考えずに弾くようにしました。
熱田 僕の演奏で言うと、音程がズレてたりするところもあるんですけど、そこは意図してやってる部分もあって。正確な音よりも自分の出したい音を出すほうが大切だと思ってますね。
──園田さんはその楽譜を書いている立場ですがどうですか?
園田 確かに楽譜は書いてるんですけど、その音符を生の楽器が音にして出すとイメージと違うっていうことは多々あるんで。そういうときはプレイヤーの解釈を尊重しようと思ってます。それも「疾走(はしれ はしれ)」の反動かもしれないです。あのときは結構こだわって、うるさく言ってたから。
収録曲
- 火の玉
- Royal Straight Flush
- 幸せはぬるま湯
- 討入前夜
- きえてなくなりたいぼくたちのために
- The Coast Session
- Ringojuice
- トーキョー=ストロール
- 沈む瀬
- 浮かぶ瀬
ソノダバンド
園田涼(Key)、熱田哲(Violin)、橋本怜(Cello)、赤股賢二郎(G)、牧瀬崇之(B)、小山田和正(Dr)からなる6人組インストゥルメンタルバンド。2006年に大学の音楽サークルで結成。都内ライブハウスを中心に活動を開始し、インディーズで2枚のミニアルバムを発表。2010年3月に米テキサス州オースティンで開催された「SXSW」に出演し、現地の音楽ファンの熱狂的な支持を得る。同年5月に初のフルアルバム「shiftrise」をリリースし、10月にはFlyingStar Recordsよりアルバム「ルネサンス」でメジャーデビュー。その後も精力的なライブ活動を重ね、2011年11月にはEMIミュージック・ジャパンからアルバム「疾走(はしれ はしれ)」を発表。2012年には自主レーベル・C7 Recordsを設立し、同年12月にアルバム「火の玉」をリリースした。