音楽ナタリー Power Push - スカート
2016年の澤部渡
2016年4月、アルバム「CALL」(参照:スカート「CALL」インタビュー - 音楽ナタリーPower Push)を携えて、個性ひしめくレーベル・カクバリズムに仲間入りしたスカート。11月にはキャリア初となるCDシングル「静かな夜がいい」もリリースされた。自身の作品のみならず、テレビ朝日系「ミュージックステーション」でのスピッツとの共演などさまざまな話題を振りまいたスカート=澤部渡にとって、2016年はどんな1年だったのか。ゆっくりと振り返ってもらった。
取材・文 / 松永良平 イラスト / 西村ツチカ 写真提供 / カクバリズム
アルバム「CALL」完成前夜
──2016年のお正月はどう過ごしていましたか?
毎年、お正月は高校の美術部の同級生と一緒に初詣に行くんですよ。お参りする内容は「うまくいきますように」ですね。毎年それしかお願いしてないです(笑)。
──まだその時点では3rdアルバム「CALL」完成前ですよね?
そうでした。レコーディングは全部終わって、あとは歌録りとミックスだけって状態でしたね。歌詞も何曲か残ってたかな。
──いいアルバムを作っているという手応えはあった?
はい。2015年の最後にやったのが、アルバム用のストリングスのレコーディングだったんですよ。それがうまくいったので、すごくいい気分で新年を迎えました。
──年明け早々の1月7日には急遽、TSUTAYA O-nestでワンマンをやりましたよね。
確かひと月くらい前に決めたと思います。レコーディングばっかりやってたんで、ライブをひさしぶりにがっつりやりたいという気持ちが出てきて。
──そのライブのMCで「新しいアルバムが出ます」という話はしてましたけど、まだ「カクバリズムから」とは公にはされていなかった。そもそも「カクバリズムから出す」という話はどこから進行していったんですか?
2014年12月に12inchシングルの「シリウス」をカクバリズムから出したんですけど(参照:スカートの12inchシングルがカクバリから、ワンマン先行販売も)、その時点ではまだ所属するという話はまったくなかったんですよ。2015年の前半に角張(渉)社長と何度かお話をして決まりました。本音を言うと、2015年のうちにアルバムは出したかったんですよ。僕は27歳で死んじゃうと思ってたんで、死ぬ前に出したいなと(笑)。
人生で一番いいことが立て続けに起こった
──2016年2月になって、ようやくカクバリズムからアルバムの情報が告知解禁されました(参照:スカート、カクバリズムから3rdフルアルバム「CALL」)。
2015年は僕にとって最悪の1年だったんですよ。急性扁桃炎になって入院もしたし、入院してしまっていくつかライブをキャンセルしてしまったし。プライベートでもなんだか頭が回らなくなってぼんやりする時間が増えて、何をやっても手応えのない1年で(笑)。とはいえ、ちゃんと曲は書けてはいたし、録音してみたらいいものも残ってはいたんですけどね。その嫌な感じが晴れたのが、2015年の12月6日という自分の誕生日をレコーディングスタジオで迎えたことだったんです。そこで1つ厄が祓われたような気はしました。そこからがすごくて、自分の人生で一番いいことが立て続けに起こったんです。
──どんなことが?
そのあと12月12日に、tofubeatsくんのイベント([12+12(tofu+tofu)night] ~藤井隆 “AUDIO VISUAL” & tofubeats "POSITIVE" after party!)に出て、昔から好きだった藤井隆さんに初めてお会いして、そのあとによくしてもらえるきっかけができました。翌13日には、中学生の頃からファンで今はサポートメンバーで参加しているyes, mama ok?のライブがあって、16日にはスピッツのシングル(2016年4月発売の「みなと」)での口笛のレコーディングがあって、20日には鈴木慶一さんのミュージシャン生活45周年記念ライブにゲストミュージシャンとして招いてもらって、24日には川本真琴さんのライブにも出て、自分のアルバムのストリングス録りで1年が終わるという。「きっと2016年はいい年になるな」という予感は、そこですでにありました。
──2015年の後半といえば、TBSラジオ「SOUND AVENUE 905」のジングルを担当して(2015年10月~16年3月に放送)、毎晩のように澤部さんの声がラジオから聴けたという半年でもありました。
そうでした。プライベートは最悪だったんですけど、仕事面では順調になり始めていたんです。
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CD収録曲
- 静かな夜がいい
- 雨の音がきこえる
- おれたちはしないよ
- いつかの手紙
DVD収録内容
2016年5月27日 渋谷WWW “CALL”発売記念ワンマンライブより
- いい夜
- ストーリーテラーになりたい
- さかさまとガラクタ
- ともす灯やどす灯
- おばけのピアノ
- CALL
- シリウス
- 回想
スカート 1st Single「静かな夜がいい」発売記念ワンマンライブ “(できれば)静かな夜がいい”
2017年1月28日(土)東京都 WWW
スカート
シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。昭和音楽大学卒業時よりスカート名義での音楽活動を始め、2010年12月に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」をリリースした。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2014年12月にはアナログ12inchシングル「シリウス」をカクバリズムより発表。2016年4月にはカクバリズムよりオリジナルアルバム「CALL」、11月には初のCDシングル「静かな夜がいい」を発売した。澤部はスカートでの活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴ほか多数のアーティストのライブでサポートを務める。またトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴withゴロニャンずには正式メンバーとして所属している。