音楽ナタリー Power Push - スカート
2016年の澤部渡
「スピッツの後ろにいたあの人の正体は?」
──「CALL」は4月20日に発売されましたが、その前後にも重要なトピックがありましたよね。まずアルバム発売直前の4月14日にNHKラジオ第一「すっぴん!」のインタビューコーナーに出演します。さらに発売直後の22日にはテレビ朝日系「ミュージックステーション」で、スピッツの演奏に口笛とタンバリンで参加するという。どちらも全国放送です。
そうそうそうそう(笑)。「すっぴん!」は、木曜日の番組MCを務めている麒麟の川島(明)さんと藤井隆さんのイベントで一緒になって、そのときにご挨拶したのが縁で出演することになったんです。
──「Mステ」では澤部さんの名前が紹介されなかったことが逆に大きなインパクトを残して、翌週の「Mステ」では「スピッツの後ろにいたあの人の正体は?」という異例の扱いでさっそく取り上げられました。あのあと、街を歩いて声をかけられるようになりませんでした?
や、それがぜんぜんないんです。美容師さんに「スピッツで口笛吹いてませんでした?」って聞かれたくらいで(笑)。
──家族の反応は?
さすがに「Mステ」だからと録画して観てました。「Mステ」は子供の頃から観ていたので、むしろ小っ恥ずかしくて、親に「どうだった?」とは聞けなかったですね。
──内心はドキドキしてるのかもしれないけど、澤部さんはこういう大舞台でいつも堂々としてますよね。ラジオでしゃべっているときも、10年くらいレギュラーでやってるんじゃないかと思えるほど貫禄があって。
なんなんでしょうね? めちゃくちゃ緊張してるんですけどね。でも、ラジオはずっとリスナーとして聴いてるから、ラジオでの所作はわかってるのかも。それに自分を当てはめただけなんじゃないかという気はします。
Negicco、SMAP、資生堂……そして「ラッパーとして参加」
──5月から6月にかけて東名阪で行われた「CALL」のリリースツアーでは新曲も披露されて、あのときタイトルの決まっていなかった新曲がシングル「静かな夜がいい」になりました。スカートがバンドでのワンマンで地方行くことはあんまりなかったと思うんですが、このときの大阪や名古屋の反応はどうでしたか?
チケットもほぼソールドアウトで、ライブもすごく盛り上がって、ちょっとびっくりしました。ただ、そろそろ夏フェスの話が来てもいいだろうと思ってたんですけど、オファーはまったく(笑)。だったらシングルのレコーディングを8月から始めちゃおうと。なので、6月くらいで「CALL」リリースについてのもろもろは一区切りでした。
──夏には川本真琴さんとのバンド「川本真琴withゴロニャンず」のアルバムリリースもありました(参照:川本真琴withゴロニャンず、メンバー共作の1stアルバム詳細発表)。そして9月には、去年に引き続きNegiccoのKaedeさんのバースデーイベントでサポートを務めて(参照:NegiccoのKaede、24歳の誕生日に月の下でソロコンサート / Negicco Kaedeが東京と新潟で生誕ソロコン、演奏はスカート)。Kaedeさんがスカートの“顔”Tシャツを愛用していることから、Negiccoファンの間であのTシャツがバカ売れするという現象もありました(笑)。
ああやってこれまで今まで接点がないと思っていたフィールドで受け入れられたのは不思議ですね。Negiccoの場合はそれが顕著というか。
──NegiccoのNao☆さんが作詞を手がけた南波志帆さんの楽曲「真夜中のヘッドフォン」に、ラッパー澤部渡が参加しているという情報も先日発表されました(参照:南波志帆のヘッドフォン付きシングルにNegicco Nao☆、さよポニ、スカート澤部)。
南波さんモデルのヘッドフォンに付くCDで「コーラスとラップをしてほしい」というオファーでした。これは自分でもめちゃくちゃ笑いましたね(笑)。ニュースを見た母親からも「ラッパーとして参加」という1行だけがメールで送られてきました。でも、さすがに僕がラップをやるのはレーベルとしてどうなんだろうと思って社長にメールしたら、すぐに「いいんじゃないでしょうか!」って返事がきました(笑)。
──「SMAP×SMAP」の猫特番(「SMAP×SMAPプレゼンツ『やっぱり猫が好きすぎて…』~芸能人猫自慢グランプリ~」)のBGMを作ったり、資生堂のWebムービーに新曲「キミの顔」を書き下ろしたりという外仕事もありました。
資生堂の仕事は個人的にはでかかったですね。詞を先にもらってそこに映像の演出プランの秒数を当てはめて制作したんですけど、あれは楽しくやれたなあ。
スピりに行った沖縄の鍾乳洞でまたも暗雲
──いい形でのライブが組まれたり、いいコラボが実現したり、いろいろと活動の幅が広がってる印象がありますが、中でも「えらいところまで来たな」と感じた瞬間を挙げるとしたら?
去年の暮れだと鈴木慶一さんの45周年ライブの舞台に上がれたことですけど、今年はやっぱり「Mステ」ですね。
──では2016年の出来事でもっとも大変だったのは?
意外としんどかったのは、シングルのレコーディングですね。ベーシックからダビングや歌録りまで、全部を4日間でやったんですけど、1日中ギリギリまで自分を追い詰めて、また翌日も……みたいなことを4日間続けてたら、さすがに精神的にも体力的にもしんどかったですね。
──でも、それはレコーディングの環境がよくなった分、朝から晩まで時間をかけていろいろ追求できるようになったということでもありますよね。
そうなんです。ありがたいことにレコーディングでやれる選択肢が増えたので、大変とはいえすごく充実していたんです。ただ、プライベート面では11月に沖縄に行ったあたりから、また流れがおかしくなってきて。「たまにはスピりたい」と言って鍾乳洞にみんなで行ったんですが、到着したら沖縄に絡んだ曲がレゲエアレンジでかかっていて(笑)。で、入ってみたらその鍾乳洞が本当に観光地モード全開で。隙あらばお土産を買わそうとする感じだったもんだから、スピりに行ったのに、まったくスピれずに帰ってきて……そのへんからまたいろいろと悪い感じになっていきました。風邪は全然治らないし、喘息にもなったし、札幌行ったら飛行機飛ばないし。「これはいよいよお祓いだ」と思ってたんですが、そのあとは特に何もなく今日まで過ごしています。
次のページ » 好きな人にフックアップされ続けてきた
CD収録曲
- 静かな夜がいい
- 雨の音がきこえる
- おれたちはしないよ
- いつかの手紙
DVD収録内容
2016年5月27日 渋谷WWW “CALL”発売記念ワンマンライブより
- いい夜
- ストーリーテラーになりたい
- さかさまとガラクタ
- ともす灯やどす灯
- おばけのピアノ
- CALL
- シリウス
- 回想
スカート 1st Single「静かな夜がいい」発売記念ワンマンライブ “(できれば)静かな夜がいい”
2017年1月28日(土)東京都 WWW
スカート
シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。昭和音楽大学卒業時よりスカート名義での音楽活動を始め、2010年12月に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」をリリースした。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2014年12月にはアナログ12inchシングル「シリウス」をカクバリズムより発表。2016年4月にはカクバリズムよりオリジナルアルバム「CALL」、11月には初のCDシングル「静かな夜がいい」を発売した。澤部はスカートでの活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴ほか多数のアーティストのライブでサポートを務める。またトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴withゴロニャンずには正式メンバーとして所属している。