SixTONES「声」全21曲をレビュー|誇り高き6人の“声”は限りない可能性にあふれていた

2020年1月にデビューしたSixTONESはコロナ禍で音楽活動を行ってきたため、ステージにおいてファンの歓声を浴びることが難しかった。2023年、デビュー4年目の幕開けにリリースされた新作「声」は、彼らにとって3枚目のオリジナルアルバム。「歓声が消えた時代だからこそ、いつの日かまた熱い声を聞きたい。届けたい」という6人の強いメッセージが込められている。ひと口に“声”と言っても、歌声や声援だけでなく、意見、考え、評判などその意味はさまざま。SixTONESは“声”を広義に捉え、作家陣のONIGASHIMA、KOUDAI IWATSUBO、SAEKI youthK、Naoki Itai、YUUKI SANOらお馴染みの面々とともにロック、ヒップホップ、ジャズ、ファンクなどをジャンルレスに取り入れた3rdアルバムを完成させた。

音楽ナタリーでは「声」の初回盤A、初回盤B、通常盤に共通して収録されている13曲、初回盤A限定の2曲、初回盤Bのみの3曲、通常盤限定の3曲を合わせた計21曲の聴きどころを紹介する。

文 / 寺島咲菜

2022年11月、SixTONESのオフィシャルサイトに“不具合”が発生した。公開されていたシングル曲の試聴音源からボーカルのみが抜け落ちたのだ。その後、徐々に6人の歌声が聴けるようになり、完全に復旧したタイミングで突如発表されたのが3rdアルバムのリリース情報だった。「声」というタイトルの潔さには驚いたが、6人の強い自信や覚悟の表れだろうと想像ができた。これほどまでに直球のタイトルを提示できたのは2022年もジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹がドラマや映画、ミュージカル、バラエティ番組など多方面で活躍し、グループで「NHK紅白歌合戦」に3年連続出場するなど着実にキャリアを重ね、進化を遂げてきた自負があるからだろう。

SixTONESは2021年1月6日に「1ST」、2022年1月5日に「CITY」、そして2023年1月4日に「声」とほぼ1年のスパンでアルバムを発表してきた。「1ST」はグループにとって名刺代わりの作品、「CITY」は“街”をテーマに据え収録曲順に時間経過を表現したコンセプチュアルな作品となったが、「声」はどんな作品に仕上がっているのか。全21曲を収録曲順に紐解いていく。

全形態共通収録曲

01. Overture -VOICE-
[作詞・作曲・編曲:Hiroki Muto]

気迫に満ちたアカペラでスタートし、6人の力強い歌声とドラムロールやバスドラムのサウンドが重なる1分14秒の序曲。ボーカルを引き立てるシンプルなアレンジだからこそ、「群衆の一人でしかない僕の声を鳴らせ」といったメッセージが鮮明に浮かび上がる。京本のフェイクや田中のラップ、髙地のボイスパーカッションも聴き逃がせない。

02. Boom-Pow-Wow!
[作詞:Mayu Wakisaka / 作曲:Andreas Ohrn / Atsushi Shimada / 編曲:Atsushi Shimada]

「声」のリード曲で、メンバーが出演するソニー「LinkBuds S」のCMソング。「ほら騒ぎな」「右からShout 左もShout 全員でShout」「声上げろ」とリスナーを煽り続ける、SixTONESらしさにあふれたワイルドなアッパーチューンに仕上がっている。ミュージックビデオで彼らは「ファンの方も声が出せるライブがしたい」と願い、観客に見立てた300体ものマネキンを前にハイテンションなパフォーマンスを披露。サビでは“X”を大きく6回描く、ハイカロリーなダンスを見せている。そんな彼らの念願が叶い、アルバム発売日である1月4日スタートのアリーナツアー「慣声の法則」では声出しが一部解禁される。ファンに高い人気を誇る「Special Order」「WHIP THAT」のように、ライブの起爆剤になることは間違いない。

03. Good Luck!
[作詞:YUUKI SANO / 作曲:YUUKI SANO、Taishi Noguchi / 編曲:Taishi Noguchi、Naoki Itai]

8thシングル「Good Luck! / ふたり」の表題曲の1つで、ジェシーが初単独主演を務めたドラマ「最初はパー」の主題歌。「飾らずいきましょう」「ありのまま進め」と聴くものすべてを肯定する、SixTONESの楽曲の中でも抜きん出て明るい王道アイドルポップスだ。ドラム、ベース、ギター、ストリングス隊、ホーンセクションが織りなす華やかなアンサンブルはリスナーを瞬く間に高揚させる。「最初はパー」はジェシーと市川猿之助がプロの芸人を目指すストーリーも話題となったが、キャスト陣が「Good Luck!」を踊るエンディングも反響を呼び、GANMIが手がけたキャッチーなダンスはSNSを通じて広がりを見せた。

04. Outrageous
[作詞:HIROMI / 作曲:Baby Scent、MoonChild、27 / 編曲:Baby Scent]

Snow Manの岩本照、ラウール、佐久間大介のユニット曲「ADDICTED TO LOVE」も提供したHIROMI、Baby Scentらが手がけるエレクトロチューン。森本による滑らかな英詞パートで幕を開け、SixTONESの豪快なボースティングによって、他を圧倒するような存在感が示されている。サビに挿し込まれる男臭い合いの手は、楽曲の世界観をより一層盛り上げる。

05. ふたり
[作詞・作曲:YUUKI SANO、Haruka Yanagawa / 編曲:Naoki Itai]

8thシングルの表題曲の1つで、京本の単独初主演ドラマ「束の間の一花」の主題歌。2~4曲目のアッパーなムードを一転させる、珠玉のピアノバラードだ。無情にも過ぎゆく時間の中でささやかな幸福を実感する“ふたり”の姿が描かれている。ギターやピアノ、ストリングスの芳醇なサウンドと6人の澄み切ったボーカルは聴き手の心にじんわりと染みわたる。

06. 共鳴
[作詞・作曲:SAEKI youthK / 編曲:Naoki Itai、SAEKI youthK]

SixTONESは記念すべき“6”枚目のシングルで、ロック、ジャズ、ヒップホップなどを盛り込んだボーダレスなサウンドに挑戦した。その表題曲であった「共鳴」はテレビアニメ「『半妖の夜叉姫』弐の章」のオープニングテーマとして書き下ろされたが、「奈落の淵で轟かす共鳴」「ギリギリに立ってんだって 分かってるのに それでも選んでしまった 夢と誇り」という歌詞からは彼らの反骨心が、「この座組なら昂然」「どんな苦悩だって 毅然としていられる…孤独じゃないってだけで」のフレーズからは固い絆がうかがえる。「役者は揃ってる」のパートで“6”を指折り数えるメンバーの姿には胸を打たれたファンも多いだろう。

07. 人人人
[作詞・作曲・編曲:SAEKI youthK]

6人が出演するエイブルのテレビCMソング。手のひらに人と書いて“飲み込む”行動には緊張をほぐす効果があると言われている。エンタテイナーとしてステージに立ち続けてきたSixTONESも、肩書きを外してしまえば1人の人間。大舞台の前には“ドウカシソウ”な自身の平常心を取り戻すため、古くからのおまじないに頼ることもあるだろう。松村の言葉を借りれば「わざわざ聴かせるべきではない内容を赤裸々に歌っている」のがこの曲。提供者であるSAEKI youthKのメロディアスなキーボードや、Official髭男dism「Bedroom Talk」にもアレンジで参加した有賀教平のワウギターを経て、メンバーがラップのマイクリレーを展開する構成はとても新鮮だった。締めくくりとなる「何があったって Show time yeah…」は彼らを育てたジャニー喜多川氏のモットー「Show Must Go On」とリンクする。

08. Risky
[作詞:MiNE、Atsushi Shimada / 作曲・編曲:Josef Melin]

「Strawberry Breakfast」も手がけたMiNE(天才凡人)、Atsushi Shimada(天才凡人)、ヨセフ・メリンの3人が、刺激的なダンスナンバーを作り上げた。テーマは男女の危険な駆け引き。7曲目までポップチューンやバラードを歌ってきたSixTONESがミステリアスな大人の魅力を表現している。1番と2番で異なるメロディ展開やジェシー、森本、田中、髙地、京本、松村がソロで歌いつなぐサビのパートも聴きどころの1つだ。

09. Chillin' with you
[作詞:TSUGUMI、Marcello Jonno / 作曲:Taro Takaki、Christofer Erixon、Ricardo Burgrust / 編曲:Taro Takaki、Marchin、Kohei Kiriake]

緊迫感が漂う前曲「Risky」のムードから一変、「Chillin' with you」はそのタイトル通り、SixTONESが織りなす心地よいグルーヴによってリスナーをチルアウトさせる。“2人”の穏やかな日々がつづられた英詞がメインのラップは、スムースで耳馴染みがよく、削ぎ落とされたアレンジによってよりダイレクトに響く。アップテンポな楽曲の多い「声」の中で異彩を放っている。

10. SUBWAY DREAMS
[作詞:MiNE、Atsushi Shimada / 作曲:Phil Schwan、AVENUE 52、SQVARE、ALYSA / 編曲:ALYSA、Phil Schwan]

ジェシー、松村が出演している英会話・学習教室「ECCジュニア」のCMソング。軽快なギターカッティングでスタートするポップチューンだ。走る地下鉄に人生を重ね、「“涙”の後に“笑顔”という駅に着く」と信じる“主人公”の姿が、走行音を彷彿とさせる小気味いいビートに乗せて歌われている。また「ひとりひとりが“主人公”だから」というメッセージを強調するように、歌詞には「主人公」という言葉が3回、「主役級」が1回登場。誰もがヒーロー、ヒロインになりうるというエールが聴き手を勇気付ける。

11. PARTY PEOPLE
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲:P3AK、Albin Nordqvist / 編曲:P3AK、Naoki Itai]

デビュー前の2018年、YouTubeが世界的に展開する“アーティストプロモキャンペーン”に抜擢されたSixTONES。彼らが重要なコンテンツと捉えるYouTube限定で配信したのが「PARTY PEOPLE」だった。そんなグループ初のサマーソングが今回待望のCD化。開放的な夏の恋がホーン隊を含むバンドのファンキーなサウンドによって彩られる。GANMIが手がけた振りコピしやすいダンスにも目が離せない。

12. わたし
[作詞・作曲・編曲:SAEKI youthK]

松村北斗が出演したドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」の挿入歌。ハードな音楽性が浸透しつつあったSixTONESがそのイメージを覆したバラードソングだ。恋に揺れる“わたし”の繊細な感情が6人の情感豊かなボーカルで表現されている。作詞・作曲・編曲を担当したのは「共鳴」「人人人」「オンガク -声ver.-」も手がけるSAEKI youthK。「わたし」ではピアノをはじめ、すべての楽器を演奏する多才ぶりを発揮している。

13. Always
[作詞:MISAKO SAKAZUME、51Black Rat / 作曲:MISAKO SAKAZUME、Ryo Mizutani、51Black Rat / 編曲:Kokei“CO-K”Takafumi / Ryo Mizutani]

メンバーが一切出演しない出光興産のCMソングとしても話題のポジティブなバラード。雄大なメロディやギター、ベース、ドラム、ピアノ、ストリングスが紡ぐ流麗なアンサンブルは未来の限りない可能性を感じさせる。ソロパートを中心としたAメロ、Bメロを経て、温かなユニゾンへとつながる展開はリスナーを感動へと導き、ラストのフレーズ「信じる力にまた陽は昇る Always Always Always…」は生きる希望を与えてくれる。