SixTONESの15thシングル「BOYZ」はソロ曲ありの充実作、その魅力を全曲レビュー

前作「バリア」からわずか3カ月、SixTONESの15thシングル「BOYZ」がリリースされた。

今年5月に結成10周年を迎え、全楽曲の中から厳選した66曲のストリーミング&ダウンロード配信をスタートさせたSixTONES(参照:SixTONESサブスク解禁記念、66曲レビューでデビューから現在まで振り返る)。サブスク解禁というビッグニュースの余韻がまだまだ続く中、彼らが新たに発表したのがテレビアニメ「WIND BREAKER Season 2」のオープニングテーマを表題曲とした「BOYZ」だ。10周年という大きなターニングポイントを迎えてから初めてリリースされるシングル「BOYZ」には“守りたいもののために戦う強い意志”が打ち出されているが、さらなる高みを目指すSixTONESの貪欲な姿勢も感じ取れる。カップリングには11thシングル「CREAK」以来約2年ぶりとなるジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹のソロ曲を収録。充実作となった「BOYZ」の全曲をレビューする。

文 / 寺島咲菜

SixTONESから少年たちに送る熱きラウドロック

表題曲「BOYZ」
[作詞・作曲:Ryo"tono"Nakamura / 編曲:Naoki Itai]

年齢を非公表にしているメンバーもいるが、成人期にあるSixTONESのシングル15枚目が「BOYZ」と聞いて、期待が膨らんだ。楽曲を聴いて、少年時代に立ち返ったような反骨のエネルギーを感じたし、成熟した彼らが少年たちにぶつける熱烈なメッセージにも読み取れた。デビューから5年、結成から10年が経過して初のシングルとして発表された「BOYZ」を、SixTONESの新章を示すステイトメントのような作品として受け止めたファンも多いのではないだろうか。

まず飛び込んでくるのは、鋭利なギターとパワフルなドラム。激情を表すようなラウドロック調のサウンドが耳を刺激する。歌詞の主人公は「失うものなんてない 守るべきものもない」と暗澹たる日々を憂いながらも、「I know 最後の砦は We are boyz」「誰かを守る強さを この⼼臓に宿して」と守りたいものの存在に気付き、迷いや恐怖を振り払って未来へと猪突猛進していく。守るべき人の大切さを歌っている点では前作「バリア」に通じるものもあるが、「BOYZ」では仲間の存在を力に変えて、果敢な挑戦へと踏み出す姿がつづられている。「たとえ無謀だと ⾔われても構わない」「根拠も何もない」というフレーズには少年らしい青さがにじむ。6人が歌声を重ねるのはサビの一部と楽曲を締めくくる「Climb to the top」のみ。ラストのフレーズからは他を圧倒する迫力を覚え、心を射抜かれた。

作詞作曲はSixTONESと初タッグとなるRyo"tono"Nakamura。ロックバンドGenius Napのボーカルギターとして2002年にデビューしたのち、作詞・作曲・編曲家、サウンドプロデューサーとして活躍し、これまでに西野カナや大原櫻子、Knight A - 騎士A -の楽曲制作に参加している。一方、編曲を務めたNaoki ItaiはSixTONESのキャリアには欠かせない存在とも言え、「NEW ERA」「僕が僕じゃないみたいだ」「共鳴」「Good Luck!」「ふたり」「ここに帰ってきて」「バリア」などさまざまな楽曲に作家として名を連ねている。

マンガ家・にいさとるの同名コミックを原作としたテレビアニメ「WIND BREAKER Season 2」のオープニングテーマでもある「BOYZ」。不良が集まる風鈴高校の生徒たちが街のために戦うこのアニメのオープニングを「BOYZ」が熱く盛り上げる。ちなみに、シングル初回盤Aのジャケットには学ラン姿のSixTONESのイラストが。アニメのキャラクターデザインを手がけ、総作画監督を務める川上大志が描き下ろしたものだ。

SixTONES「BOYZ」(初回盤A)ジャケット

SixTONES「BOYZ」(初回盤A)ジャケット

菅田将暉もボーカルで参加

初回盤Aカップリング「憧憬のアーチ(Hokuto Matsumura)」
[作詞・作曲:Masaki Suda、Shuta Nishida / 編曲:Shuta Nishida]

前作「ガラス花」でアイナ・ジ・エンドとタッグを組んだ松村北斗のソロ2曲目には、菅田将暉と西田修大が参加した。松村はアーティスト / 俳優として豊かな才能を持つ菅田に憧れ、そのファッションにも魅せられて菅田のフォトエッセイ「着服史」を愛読しているという。菅田は松村のソロ作でキャリア初の楽曲提供にチャレンジし、自身のXに「魅力的な彼の声と心に携われて幸せな時間でした」と思いをつづっている(参照:菅田将暉 (@sudaofficial) | X)。西田は菅田やハナレグミ、藤井風、iriなどの楽曲制作にも携わり、音楽家からの信頼も厚いギタリスト。松村はそんな2人が作り上げたギターロック「憧憬のアーチ」と誠実に向き合い、新たな歌唱表現を模索した。歪んだギターがしばらく耳を支配したあと、聞こえてくるのは松村の無垢な歌声。どこかぶっきらぼうで素朴な質感のある低音ボーカルは菅田を意識しているかのようだ。力のこもったアカペラパート、衝動がほとばしるバンドアンサンブルの先に待っているのはラストのサビ。菅田もボーカルに加わったところでピークを迎え、「遥か(君は) 彼方へ(愛しいかい?)描いた(この景色) すべてが(すべてが)」と掛け合う展開でリスナーの興奮を誘う。なお松村北斗の名は北斗七星が由来となっており、歌詞にシンボリックに登場する「星の軌跡」「星座」「キラキラ星」「おおぐま座」などの言葉が、彼が歌う意味をより明確にしている。

髙地とそのファンは似ているのか

初回盤Aカップリング「にたものどうし(Yugo Kochi)」
[作詞・作曲:invisible manners / 編曲:Kotaro Egami]

「アイドル文化ならではかもしれないが、タレントとそのファンは似ている」という髙地優吾の視点をもとに生まれたのがファンへのラブレターのようなこの曲。ホーンやピアノが高らかに響く祝祭感に満ちたサウンドに心が躍り、「もう掴んで離さないんだbaby」「僕と君は必ずどこかで繋がってる筈さ」「ちゃんと⼼の奥で通じ合えているからさ」「ひとりきりじゃないさ You're my best friend」「どんな時も 繋がっていたいよ」というフレーズに胸がぽっと温かくなる。自然と心惹かれるハツラツとしたチャーミングな歌声は、髙地に与えられたアイドルとしての天賦の才なのかもしれない。髙地が全方位に振り撒くあふれんばかりの愛情はこの曲の強いエッセンスとなっている。作詞作曲を担当したinvisible mannersは平山大介と福山整からなる作家ユニット。これまでにももいろクローバーZや「ヒプノシスマイク」シリーズの楽曲で手腕を振るってきた。

ジェシーの神が降臨

初回盤Aカップリング「虹、僕(Jesse)」
[作詞:Jesse / 作曲:Koji Tamaki / 編曲:Tomi Yo]

前回のソロ曲「Never Ending Love」では堂本剛(KinKi Kids)が作詞作曲を手がけたが、「虹、僕」ではジェシーが自ら作詞に挑戦。そしてジェシーにとって神様のような存在である玉置浩二が作曲を担当するという、夢のタッグが実現した。アレンジは京本の楽曲「Desire」を作編曲し、aikoやあいみょん、槇原敬之、ゆずをはじめとする大物アーティストの楽曲制作に携わってきたTomi Yoが手がけた。鮮やかさと美しさに心を奪われ、手を伸ばしてみるも触れられない虹。そんなありようを人々の心にたとえている。アコースティックギターを主体としたオーガニックなサウンドで始まり、「地図を広げ翼広げて」というパートからはストリングスが楽曲全体を包み込みながら優しく響く。美しいアンサンブルと溶け合うのは、哀愁と温もりが同居するようなジェシーの歌声。魂の震えを感じさせるビブラートは感動を呼び起こし、フルートの音色も折り重なって静かな余韻を残していく。

舞台は荒んだ都会の街

初回盤Bカップリング「Night rider(Taiga Kyomoto)」
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲:Maria Marcus、Samuel Waermo、Rasmus Viberg、Atsushi Shimada / 編曲:Atsushi Shimada]

昨年9月にクリエイティブプロジェクトART-PUTを始動させ、4月に全収録曲の作詞作曲に参加した念願のアルバム「PROT.30」をリリースした京本大我(参照:京本大我「PROT.30」全曲レビュー|30歳という節目に改めて人生と向き合い、表現したかったこと)。「Night rider」ではボーカルに徹し、退廃的なムードのダンスナンバーを歌いこなしている。歌詞からイメージするのは、人々の思惑や欲望が絡み合う荒んだ都会の街。光を求めてさまよい続けるさまが、疾走感のあるビートに乗せて表現されている。強い意志を宿したボーカル、何かにすがるような弱々しい声、地を這うような低音のラップ、凛とした美しさを持つハイトーン──そのどれもが京本から発せられていることが、容易に信じられない。

“人生”を明るく照らす

初回盤Bカップリング「Life is...(Shintaro Morimoto)」
[作詞:EIGO(ONEly Inc.) and Dai Hirai / 作曲:Dai Hirai / 編曲:Dai Hirai and Haruhito Nishi(ONEly Inc.)]

愛をテーマにした前回のソロ曲「Love is...」を提供した平井大は、森本慎太郎が高校時代から憧れていたアーティスト。平井が続投した新たなソロ曲「Life is...」でも人生という普遍的なテーマが据えられた。シンセサウンドを基調としたポップなサウンドの上には「朝から小指をぶつけたり 優しくされて泣いてみたり」と日常の1コマを切り取ったようなフレーズが並ぶ。森本が高らかに歌い上げる「どんなキミでもいいよ きっと全部正解だ」「誰かが⾔う色がボクのとは違くても それはそれで新しい色だ」というメッセージを聴けば、未来に期待してもいいかも……そう思えるはず。塞ぎ込んでいた心にぱっと光が差し込む、森本の声にはそんなパワーが宿っている。

田中とT.Kuraの相性は

初回盤Bカップリング「No Cap(Juri Tanaka)」
[作詞:D&H(PURPLE NIGHT)、JUNE、Juri Tanaka / 作曲:T.Kura、D&H(PURPLE NIGHT)、JUNE、Juri Tanaka / 編曲:T.Kura]

SixTONESのラップ担当としてグループの音楽性を豊かにしてきた田中樹が「レコーディングは人生でトップレベルで大変でした」と語ったのが「No Cap」。タイトルにはスラングで“嘘ではない”“本当だ”という意味がある。自らも作詞作曲に参加し、作家陣には安室奈美恵やEXILE、Awichらの楽曲を手がけてきたR&BプロデューサーT.Kuraの名前も。田中は重低音の効いたトラックを多彩なフロウで乗りこなしながら、「見える全て俺のもの」「数えきれない Moolah」と堂々とセルフボーストする。声色は一貫してクールだ。「ステップを踏むごとに ダイヤ星落とす」というリリックも聴き逃がせないフレーズで、ステージでアイドルとしての輝きを放つ田中を連想させる。SixTONESとして確かなキャリアを積み上げてきたからこそ説得力を帯びる言葉が詰まっている。

“恋怪獣”がやってきた

通常盤カップリング「怪進撃」
[作詞:MiNE / 作曲:MiNE、Kota Sahara / 編曲:Kota Sahara]

これまでSixTONESは「うやむや」や「PARODY」でボーカロイド調の楽曲との相性のよさを証明してきたが、「怪進撃」がボカロテイストのラブソングであることに驚いた。タイトルの印象から「ABARERO」のような激しいロックチューンをイメージしていたからだ。この曲の主人公となっているのが「恋怪獣」とはなんともユニーク。恋敵にバトルを仕掛けながら“キミ”と結ばれようと悪戦苦闘するさまがコミカルに描かれている。大胆にエフェクトのかかった無機質な声が、トラックと一体化するようにリズミカルに響く。作詞作曲は、「Strawberry Breakfast」「WHIP THAT」「STAMP IT」などSixTONESの人気曲を手がけてきたMiNE。作編曲に携わったKota SaharaはKAT-TUNの楽曲「A MUSEUM」の作曲に参加している。

SixTONESだ、道を開けな

通常盤カップリング「So What」
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲・編曲:Josef Melin]

SixTONESの楽曲「Drive」「Hello」も手がけたONIGASHIMAとJosef Melinによるタッグで新たに制作されたのが、英詞と日本語詞が交錯する「So What」。ビビッドなホーンサウンドでイントロから一気にリスナーを惹き付け、躍動するビートの上でラップも交えつつ多彩なボーカルが放たれる。タイトル通り「So What?」と大胆に挑発する姿勢が貫かれ、「もう話題の中⼼」「時代を変えてく」「道を開けな We gotta go」という強気なラインもSixTONESが歌えばさまになる。この曲からあふれ出るのは、6人のポップスター然としたまばゆいエネルギーだ……とごちゃごちゃ感想を書いても、彼らから「So What?」と一蹴されそうだ。まずはあなたの耳で魅力を感じてほしい。

リリースから3カ月で変化

通常盤カップリング「バリア -Sweet Retro Soul Remix-」
[リミックスプロデュース:Takashi Yamaguchi / 作詞・作曲:Zembnal]

発売からわずか3カ月、14thシングルの表題曲「バリア」は“Sweet Retro Soul”バージョンに生まれ変わった。愛する人を守り抜く強い覚悟が歌われたこのラブソング。オリジナルは生楽器のゴージャスなアンサンブルが印象的だったが、リミックス版では軽快なカッティングギターやパーカッションが存在感を出し、きらめくような電子音がプラスされている。全体的にマイルドな雰囲気に変化したことで、キザなフレーズがより甘く聞こえる。

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2018年10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。同年4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。最新アルバムは2025年1月にリリースした「GOLD」、最新シングルは6月発売の「BOYZ」。同年5月にはこれまで発表した楽曲のうち66曲のサブスクリプションサービスでの配信がスタートした。