FIVE NEW OLD初のベストアルバム「FiNO is」が3月19日にリリースされた。
FIVE NEW OLDは2010年に兵庫県神戸市で結成された、HIROSHI(Vo, G)、WATARU(G, Key)、SHUN(B)、HAYATO(Dr)からなるバンド。活動当初はポップパンク路線だったが、2014年に発表したシングル「HOLE」を境にジャズやR&Bの要素を取り入れた音楽性に変化していった。2018年には、Number_iなどのプロデュースを手がけるソングライター / アレンジャーとしても活躍するSHUNがバンドに加入し、現在の体制に。「FiNO is」はそんな彼らの結成15年の歩みを凝縮した1枚だ。
「FiNO is」には「Hole」をはじめとしたライブ定番曲の再録バージョンや近年発表されたタイアップソング、そしてSixTONESへの提供曲「Takes Two」のセルフカバーなどの全19曲が収録され、バンドの歴史をたどりつつ、FIVE NEW OLDの新たなモードも堪能できる。音楽ナタリーではFIVE NEW OLDにインタビューし、15周年を迎えた感慨やベスト盤の再録のエピソードなどを聞いた。
取材・文 / 酒匂里奈撮影 / 梁瀬玉実
15周年は10周年以上にやってやるぞ!
──「FiNO is」は結成15周年を記念した初のベスト盤ということで、まずは「結成15周年おめでとうございます」とお伝えしたいのですが、FIVE NEW OLDに明確な結成日はあるのでしょうか? オフィシャルサイトでは特に公表されていませんよね。
HAYATO(Dr) たぶん2010年7月の後半だったと思います。
HIROSHI(Vo, G) なんとなく7月23日のイメージ。
HAYATO あっ、そうそう。
HIROSHI でも「なんでその日なの?」と言われたらわからない(笑)。
HAYATO 7月23日とか25日とか、そのあたりだったと思います。
──7月23日か25日ということで(笑)。では改めて結成15周年イヤーということで、節目を迎えた率直な思いを聞かせてください。
HIROSHI シンプルにこのバンドが15年続いたことがうれしい。趣味ではなくプロとして続けてこれたことが何よりありがたいです。
WATARU(G, Key) 15年って長い時間だと思うんですけど、体感としては短かったですね。周りの方々に恵まれて、ここまで続けてこられた。この15年目を境に、FIVE NEW OLDの音楽を聴いてくれる人をより増やしていきたいですし、ベストアルバムがその入口の1つになっていると思います。
HAYATO 僕たちは結成10周年イヤーとコロナ禍が被っていて、思うように祝いきれなかったところがあるんです。なので、「15周年は10周年以上にやってやるぞ!」という思いがありました。ベストアルバムがリリースできることが決まってさらにやる気になったし、僕たちがベストアルバムを出せる世界線に生きていることがうれしくて。FIVE NEW OLDを作った本人としては、もともと10周年をめがけて走ってきたところ、それを超えて15周年を迎えられるとは想像してなかったです。
──Number_iなどのプロデュースを手がけるソングライター / アレンジャーとしても活躍するSHUNさんがバンドに正式加入したのは2018年ですが、それからの日々を振り返っていかがですか?
SHUN(B) まずは「15周年おめでとうございます」と3人に伝えたいです。関わり始めてから8年、一緒にやってきて思うのは「あの曲を聴いてます! 好きです!」と言ってくれる後輩が増えてきたし、関わってくれる人たちも増えて、同時に責任感が増してきたこと。ここ最近のインタビューで「今年はがんばるぞ」という決意を話してきたんですけど、たった今話しながらちょっと気持ちが変わってきていて。もうちょっと遊びながら音楽を作る15周年でもいいんじゃないかと思い始めました。なんというか……真面目になりすぎてる感じがしたので(笑)。お祝い的な雰囲気を楽しみながら、初心を忘れずに次のステージに向かう1年にできたらいいなと思ってます。
広く愛される「Liberty (feat. ODD Foot Works)」
──15周年というところがありつつとは思いますが、ベストアルバムを制作することになったきっかけは何かあるのでしょうか?
HIROSHI ここ最近、今になって「Liberty (feat. ODD Foot Works)」(2018年1月リリースのアルバム「Too Much Is Never Enough」の収録曲。リリース当時のタイトルは「Liberty feat. 踊Foot Works」)が著名人の方、ファンの方、いろんな方から注目されていて。それがなんだか不思議だなと。アルバムを出すときにも、特段「Liberty」単体のプロモーションをやっていたわけでもないし。そういう現象があって、まずこの曲をもう一度録り直してみようという流れになったんです。
──そのときはベストアルバムを作るという話ではなく、ただ曲を録り直してみようという?
SHUN 同時に話が進んだ感じです。ほかの曲も再録してみたらどうなるんだろうね、という話になり、そこから「再録曲を含めたベスト盤ってどう?」という話につながって。
HIROSHI 「そういえば来年15周年だね。じゃあベスト盤作ってみるか」みたいなね。ほのかに始まりました(笑)。さっきHAYATOが言ったみたいに、コロナ禍に10周年を迎えて、そのときの余熱があるような状態だったからこそ、15周年で「よしやるか!」と踏ん切りがついたというか。過去の曲を再録することによって、新しい曲を作るのとは違うプロセスで「FIVE NEW OLDってなんだろう?」と再確認できて、それでタイトルが「FiNO is」になりました。実は最初は「再録って意味ある?」と思ってたんですけど、いざやってみたら成長が感じられました。こういう機会でもないと自分たちのことを振り返れないので、改めて1曲1曲を愛おしく感じましたね。
再録の醍醐味をダイレクトに感じられた
──「FiNO is」を聴かせていただいて、再録曲に関してはより柔らかさが増したというか、いい意味で肩の力を抜いたような感じで、バンドが円熟してるんだろうなと感じました。皆さん個々人もそうですし、バンド自体がいい歳の重ね方をしてるんだろうなと。
HIROSHI ありがとうございます。
──収録されている19曲はどんな基準で選んでいったのですか?
HIROSHI ライブの定番曲を中心に選びました。リリースに紐付いていないときのワンマンのセトリって、わりとベストっぽくなりがちなところがあると思うんです。その感覚でみんなで選んでいきました。
WATARU 例えば「Please Please Please」はEP(2019年3月リリースの「WHAT'S GONNA BE?」)でもアルバム(2019年9月リリースの「Emulsification」)でもカップリングとして入れていた曲ですが、ライブでは外せない曲なのでベストにも入れようとなって。
HAYATO 収録した19曲のほかにも、もう何曲か入れたいと思った曲はあるんですけど、再録することを考えたときに時間が足りなかったり曲数のことを考えたりして難しかったです。
HIROSHI 全体のボリュームやバランスは考えたね。改めて名刺代わりの1枚になったと思います。
──では皆さんの中で特に思い入れがある曲を1曲ずつ聞かせてください。
SHUN 「Liberty (feat. ODD Foot Works) [Re-Recorded]」ですね。オリジナルバージョンのリリース当時、僕はまだ正式メンバーではなかったのですが、メンバー3人とODDでセッションしながらスタジオで作った曲で。当時はアレンジャーという立ち位置で関わっていたので、今回の再録ではベースを弾かせてもらって感慨深かった。再録にも参加したペコちゃん(ODD Foot WorksのPecori)があえてフロウを変えなかったと言ってたんですが、それでもめちゃくちゃ成長を感じました。僕らもそうですけど、ODDも一緒に成長してるのがわかったので、再録の醍醐味をダイレクトに感じられた1曲という意味で思い出に残っていますね。
WATARU じゃあ次、僕言うていいですか? 僕は「Ghost In My Place [Re-Recorded]」(オリジナルバージョンは2016年6月リリースのEP「Ghost In My Place EP」収録)。ライブでピアノを弾くようになったのがこの曲からなんですよね。この曲をきっかけに、FIVE NEW OLDとしても自分としても、演奏スタイルや楽曲のテイストが変わっていった。「Too Much Is Never Enough」のときにアルバムバージョンも出してますけど、今回はそれとはまた違う感じというか、あえてオリジナルバージョンに近い感じの、エレクトロなアレンジになっていて。FIVE NEW OLDの歩んできた道を振り返りながらコンポーズしたので、自分的にはかなり思い出深い1曲です。
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思いっ切り歌謡曲みたいにしちゃおう