SHANK|結成15周年を経て磨かれた自由

SHANKが9月2日に新作CD「Candy Cruise EP」と、ライブBlu-ray / DVD「THE HEAVY CLASH at SHINKIBA STUDIO COAST」を同時リリースする。

4thミニアルバム「WANDERSOUL」から約2年ぶりのCD作品となる「Candy Cruise EP」には、配信シングル「Rising Down」を含む全5曲を収録。一方の「THE HEAVY CLASH at SHINKIBA STUDIO COAST」には、SHANKが1月に東京・新木場STUDIO COASTで行った結成15周年ツアー最終公演の模様が収められる。

音楽ナタリーではこの2作の発売を記念して、SHANKの庵原将平(Vo, B)と松崎兵太(G, Cho)にインタビュー。新作にまつわるエピソードや、結成15周年を経て感じたことなどについて聞いた。

取材・文 / 矢島大地 撮影 / 山川哲矢 撮影場所 / 下北沢SHELTER

テーマがより明確になった

──今日は、ひさしぶりのライブハウスで撮影とインタビューをさせてもらってます。ここ数カ月で生活から活動のサイクルまで何もかもがガラッと変わったと思うんですが、「Candy Cruise EP」はライブ感のある音源で、より一層タイトでシンプルな楽曲が増えたと感じました。

松崎兵太(G, Cho) 前作(「2018年9月発売の4thミニアルバム「WANDERSOUL」)から制作のスタイルを変えて本格的にDTMで曲を作るようにして、これまでにあった音の違和感とか音のぶつかっている部分を削ごう、というテーマがより明確になったのが今回だと思いますね。だから「タイトになった」というのはそういう部分かもしれないです。細かく聴くと、これまでとは違うところが多いんじゃないかなって。

──オケは非常にシンプルで、リズムのバリエーションやメロディの幅はどんどん広がっていると感じたんですけど、今おっしゃったようにバンドのシェイプアップ的な作品を作ろうっていう青写真が先にあったうえで取り組んでいったんですか?

庵原将平(Vo, B)

庵原将平(Vo, B) これまで作品をリリースしていくうちに感じていたことなんですが、考え込んで作った曲は自然とライブでやらなくなっちゃうんですよ。

──考え込んだ分気持ちよさが半減する、みたいな感じですか?

庵原 そうそう。だから、そのときに自然に出てきたものを大事にしたいなと改めて思って。「このメロディは〇〇っぽいな」と思ったら作り直してきたし、誰にも似てないものを作ることはこれまでも大事にしてきたんですけど、「〇〇っぽいね」と思ってしまったら、それを違う形に作り直すというより、潔く捨てて別の曲を作るようにしたんです。バーンと浮かんだものを形にしたほうが気持ちがいいから。それに今回は兵太が自分でトラックを送ってくれて、その中からイメージの浮かびやすいものをピックアップして作れたんで。それもあって、自然とバリエーションが出た気がしてますね。

──スタジオで音を出しながら作っていくのではなくDTMで曲を作っていくと、むしろバンド内での音楽的なコミュニケーションが増えるっていうこともあるんですか? より一層混ぜることができるようになってきたというか。

庵原 それはあると思いますね。逐一言葉でやりとりがあるわけではないんですけど、「こことここの音が当たってるんだ」というのがパソコン上で明確に見えるようになったので。その分、言葉を交わさずとも曲を作っていくうえでのやりとりはスムーズになったっすね。だから今回は兵太にメロディを付けてもらったり、自分が作ったりっていう部分の混ぜ方をもっと推し進められたと思って。それも根底にあるのは作ることに飽きたくないという気持ちで。より一層バンドとして新鮮なものを作れるようになったんじゃないかなと思います。

松崎兵太(G, Cho)

松崎 変なところを削ぐために使っていた時間を、細かい詰めの部分に使えるようになったのがデカいよね。その時間があるから出せるタイトさというか、キメが細かくなった。そうすることで、自然と出てきたものをより一層気持ちよく鳴らせるようになってきたんだと思いますね。で、俺個人はむしろ「〇〇っぽい」っていうところから入る人間なんですよ。好きな曲や好きなバンドのポイントを、あえてそのまま原型として出して、そこからいじっていく。SHANKのライブに足りないものはなんなのかっていう部分に対して、自分がインプットしてきた好きなものの中からピックアップして、噛み砕いて出していく感覚です。自分がやりたいこと以上に、客観的にSHANKを見てる感覚があるといいますか。

──逆に言うと、兵太さんのトラックも多く生かされたという今作は、より一層SHANKを相対化できてきたことの表れでもある?

松崎 ああ、そうかもしれないですね。

庵原 バンドとして自然に出たもの、こねくり回さず純度高く表現できたものを作りたいっていうのは、前作からの2年くらいでさらに意識するようになったかな。だからこそDTMで作ることによって新鮮さを求めたところはあったのかもしれないよね。

左から庵原将平(Vo, B)、松崎兵太(G, Cho)。

自分たちなりの新しさ

──ライブでの解放感やフィジカルな高揚を大事にされているバンドだと承知しているし、そういう意味で、自分自身の衝動性や快感が削がれないものを求めているところもあるんですか。

庵原 それもありますし、今言われたようなフィジカルなライブをするバンドの音楽って、とっくにやり尽くされているじゃないですか。新しいものを作ろうとしても難しい。それでも、自分たちから出てくるものをどう昇華して、作品ごとに新しさを見出していくか。音楽の歴史としての発明じゃなくても、できるだけ自分たちにとって新しいものを作りたいっていう気持ちが特に強いんですよね。

──それはとても大事ですよね。実際、90年代でロックバンドの音楽は完成したという論説もあるように、オーセンティックな編成での発明はなかなか難しい。でも一番大事なのは音楽史の中で新しいかどうかよりも、実際にプレイしている自分たち自身として毎回アップデートしている実感を持てるかどうかだと思うんですよ。今のはそういう客観的な視点を持っているというお話だと思ったし、だからこそ伺いたいのは、15周年を経て、SHANKはどんな位置付けのバンドだと思えたのかっていうことで。

手前から庵原将平(Vo, B)、松崎兵太(G, Cho)。

松崎 俺が思うのは……SHANKってどうしてもメロコアとかメロディックパンクに位置付けられることが多くて。で、最初にメロディックパンクの代表格として思い浮かぶのはやっぱりHi-STANDARDだと思うんです。そこから20年近く“メロディックパンク”がジャンルとして連なってきたわけですけど、でも実は、Hi-STANDARDが一番いろんなジャンルを消化してたバンドなんですよ。好き放題にいろんな音楽を消化して、それをパンクロックにしているからすごかったわけじゃないですか。

──はい。「MAKING THE ROAD」(1999年6月に発売されたHi-STANDARDのアルバム)だって、いわゆるパンクロック以外の要素が多いし、それをパンクロックにしたアルバムだから半端なかったわけですよね。

松崎 そうそう。なのに、どこかで“メロコア”というジャンルが凝り固まって、音楽的にもシーン的にも狭いジャンルになってしまった。なんであんなに広かった間口がこんなに狭くなってしまったんだ?という違和感を覚えることが年々増えてきたんですよ。それは当然、僕ら自身がそのシーンにがっつり属していた時期があったからこそわかることなんですけどね。だとしたら、やっぱり狭いところからは逸脱したいんです。だってそもそも、ロックバンドの自由さとか間口の広さが好きで始めたわけですから。メロディックパンクのシーンに属してたら、本末転倒だなって思ってしまうんですよ。人が勝手に俺らのことをメロディックパンクって呼ぶのもいいし別に拒絶もしないけど、当然、俺らはパンクだけを聴いて育ってきたわけではなくて。今まで聴いてきた音楽を自由にアウトプットできたほうがそれこそ自然だし、無理がないってことじゃないですか。そう思ってやってきたからこそ、いわゆるメロディックパンクと呼ばれるジャンルの中でも、かなり自由に音楽をやれるようになったのがSHANKというバンドの位置付けな気がします。