聴き手に任せますというのは今の時代には合わない

──今の使命感という話につながるかもしれませんが、SiMはMCもめちゃくちゃ熱くて、きちんと言葉でアピールする能力も高いですよね。90年代のインディーズバンドは音を鳴らせばわかるでしょ、というある種の不器用さがあったけど、MAHさんにはその思いを言葉で伝えることに対して照れがない。

Kazuki　男っすよね？ MAHは人にものを伝えるのがうまいんすよね（笑）。

MAH　90年代はそこまでネットが普及していたわけじゃないし、聴き手はそれぞれ裏を読もうとしてたと思うんですよ。俺も中高生のときにいろんな曲を聴いて、少ない資料からどんなバンドなのか、超調べてましたからね。でも今の子はそうやって調べないじゃないですか。ブックレットにちゃんと書いてあるのに、「これ誰々が歌ってます？」って質問してくる。そりゃ、そういった人たちに合わせていかなきゃいけないよなと。やるだけやって聴き手に任せますというのは今の時代には合わない。限りなくヒントだけは出して、答え合わせはしませんよという感じじゃないとダメなんだろうなって。それであのMCになってるんです。ほんとは俺もほぼMCなしで帰りたい。

──ははははは（笑）。

MAH　でもMCなしでやろうとすると、伝えたいことが伝わらないから。バンドマン同士なら、ライブを観ればわかると思うんです。でもそれがお客さんにまで伝わるかと言うと、そうとは限らないから。

Kazuki　俺もここ1、2年考えてるけど、1回頭を使わないと残らないのかなと思う。これは後付けだけど、FACTみたいに英語で歌ってたとして、それをカッコいいと思ったら歌詞カードを読んでくれると思うんですよ。で、そういう労力を使うことで、頭に残る気もするし。

ライブハウスとは違う場所にも届けたいという気持ちは強い

──FACTもメジャーデビューのタイミングで能面を付けたり、15周年記念サイト（参照：FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE）にビックリ仰天のPV「disclosure」（ドラム、ベース、ギター×3がそれぞれ「disclosure」を演奏する動画をアップし、5本を同時再生するとバンド演奏が完成する）をアップしたり、今の時代に沿ったアプローチをしてますよね？

Kazuki　能面に関しては海外でやるにあたって、単純に人種で毛嫌いされたくないからという理由で、あれにたどり着いたんですよ。みんな能面の裏に何か潜んでいるんじゃないかって考えてくれたけど、意外とないんですよね。

MAH　はははは（笑）。

Kazuki　こないだの15周年記念サイトのPVはディレクターの案なんですけど、デジタルなものをアナログなやり方できっちり合わせて1曲聴く。そこまで手間をかけて遊んだらあの曲は聴いた人の心の中に残るだろうし、 すごくいいアイデアですよね。そういうアトラクションは増やしたほうがいいなと思うんですけど、実はそれが一番できるのはライブなんですよ。時間作って、チケット取ってという手間をかけないと、絶対味わえないわけだから。ただ、ライブに来られない人もいると思うから、ナマで見せること配信で届けることの2つの方法を使おうと。そうやってライブハウスとは違う場所にも届けたいという気持ちは強いんです。