ナタリー PowerPush - Salyu

新しい挑戦に満ちたシングル「青空 / magic」

Salyuがニューシングル「青空 / magic」を7月13日にリリースした。salyu×salyuという新プロジェクトのあとに発表する作品として注目を集めていたが、完成したシングルは良質なポップスナンバーが楽しめるものとなった。収録曲のうち「青空」はMr.Childrenの桜井和寿が提供。もう1曲の「magic」は、プロデューサーの小林武史による楽曲だ。

今作で、ポップスボーカリストとしての自分に向き合い、新しい表現に取り組んだと語るSalyu。それはどんな挑戦で、彼女はどこを目指したのか。このインタビューから、Salyuの表現者としての真摯な姿勢を感じ取ってほしい。

取材・文/小野島大

ギタリストのメロディとピアニストのメロディの違い

──今回のシングル、反響はいかがですか。

意外だったっていう感想を聞きますね。すごくストレートな楽曲だったっていうことと、あと「新しいですね」っていう意見が結構多いなと。

──ふむ。それはご自分としてはあまり考えてなかったような反響だったりするんですか?

いや、でもそういうもんかなって。今まで小林武史さんに楽曲を提供していただくことが多かったんですけど、やっぱりピアノの方から出てくるメロディですよね。salyu×salyuで経験した小山田さんとの制作ですごく思ったのが、ギタリストから出てくるメロディ感と、ピアニストから出てくるメロディ感って全然違うってこと。ギタリストってたぶんギターを弾きながら曲を作るんだろうなぁって思うんだけど、桜井さんはその上ボーカリストだから、歌いながら作られると思うんですよね。なので、ブレスコントロール感が違う。小林さんのほうがロングトーンが多かったりね、線が長いっていうか。小林さんの場合はもしかすると、メロディを歌いながら作っていく方じゃないからかもしれないけど。

──鍵盤で作るということ?

いや、ブレス感がないんですよね、結構。ピアノのメロディとして成立してるから。

──あるベテランのボーカルの人に訊いたら、ピアノで作った曲はいろんな意味で歌いにくいというようなことを言ってましたけど。

ライブ写真

難しいっていうことはあるかな。どこでブレスのタイミングを作るか、そういうのがまた表現の1つになってくることもあると思うんだけど。今回桜井さんが提供してくださった「青空」は、ギターを鳴らしながらメロディを言葉と同時に詰めていって作られたと思うんですね。だからなんていうか、私も今までとはすごく違った感覚っていうのがあって。

──なるほど。確かに今までと少し歌い方が違いますよね。歌ってて違う手応えがあったわけですか?

そうですね。ふふふ(笑)。ダンサーで言えば、振り付けが違うみたいな感じが(笑)。

──振付師が変わったら振り付けもまったく変わったみたいな。

うん。きっと求められてる“美”も違ってくるし、あとはスタンバイしてる筋肉みたいなものが「おっ、違うぞ」って感覚がすごくあって。

──ああ、普段と違う筋肉を使ってる感じ?

心の筋肉もそうだし、ブレスコントロール感っていうこともあるし。

「Split The Difference」の打ち上げで制作が決まった

──桜井さんの歌を、salyu×salyuの直後に出すシングルとして決めたのはいつ頃だったんですか。

いつ頃決まったんだったかなあ。曲自体は1年ほど前にいただいてたんですよね。もっと言えば、桜井和寿さんに楽曲を提供していただきたい、歌詞を書いていただきたい、一緒に制作をしたいってアプローチしだしたのって、もう4年ほど前になりますよ。

──身近な人だからもっと気軽に書いてくれそうな気がしますけど、そうでもないんですか? (笑)

はい。でもその4年っていう期間はいろいろな意味で、私にポップスボーカルとしての成長を促してくれたし、すごく大事な期間だったと思うんです。

──4年間実現しなかったのは何か理由があったんですか?

あったと思います。「今はタイミング的に難しい」っていう理由で丁重にお断りされてたんです、何度か(笑)。

──ああ、一応表向きは(笑)。

うふふふ。それが、去年の春頃に行われた「Split The Difference」っていうMr.Childrenのスタジオライブに私もゲストとして呼んでいただいて、1曲一緒に歌わせていただく機会があったんですね。で、イベントがすべて終わったあとスタジオ内でささやかな打ち上げがあったんですけど、その場で「今のタイミングだったら書けますよ」って言ってくださって。とてもありがたいことだなって思って「じゃあぜひ制作しましょう」ってことで、そこから具体的に「青空」っていう楽曲の制作が始まっていったんです。

──結果的にこのタイミングになって、いかがでした? salyu×salyuも含めていろんな経験をされたあとで、桜井さんの楽曲にアプローチすることになったわけですけど。

そうですね。salyu×salyuの次っていう意味でsalyu×salyuと比較した場合に、まったく違うものではありましたね。

ニューシングル「青空 / magic」 / 2011年7月13日発売 / 1050円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89334

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CD収録曲
  1. 青空
  2. magic

アーティスト写真

Salyu(さりゅ)

2001年公開の映画「リリィ・シュシュのすべて」に、Lily Chou-Chou名義で楽曲を提供。2004年6月に小林武史プロデュースのシングル「VALON-1」で、Salyuとしてデビューを果たす。2006年にBank Band with Salyuとして「to U」、2008年にはWISEとのコラボによる「Mirror feat. Salyu」をリリースするなど、他アーティストのコラボにも意欲的。自身のオリジナルソロ作品もコンスタントに発表し、2008年11月には初のベストアルバム「Merkmal」をリリース。2009年2月には初の日本武道館公演も成功させた。

2010年3月にソロとして3枚目となるアルバム「MAIDEN VOYAGE」をリリース。2011年からは新プロジェクト「salyu x salyu」としての活動を開始し、Cornelius=小山田圭吾との共同プロデュース作品「s(o)un(d)beams」を完成させた。同年7月、小林武史プロデュースのニューシングル「青空 / magic」を発売。収録曲「青空」を桜井和寿(Mr.Children)が提供したことでも注目を集めている。