ナタリー PowerPush - Salyu
新しい挑戦に満ちたシングル「青空 / magic」
小林さんの楽曲は「ただいまー」って感じ
──今回カップリングは小林さんの曲ですね。小林さんの曲は今まで散々歌い慣れていらっしゃると思うんですけど、桜井さんとの違いは感じました?
うん、そうですね。もちろん感じますね(笑)。歌詞の世界観から全然違うから。あとは……小林さんの楽曲っていうのは「ただいまー」って感じがありますね。結構すぐツボが見つけられるんですよ。やっぱりもう経験を重ねてきてるので。
──うん、なんか息の合うパートナーっていう。
うんうん。ですね。
──桜井さんが作る曲や歌詞の世界観とは違うものだと思いますが、お互いのすり合わせって考えましたか?
えっとね、「magic」自体は「めざにゅ~」のテーマソングとして去年の秋から放送されていて、「青空」のレコーディングに入る前に録ったんですね。なのでちょっと自分的には(笑)過去に制作した作品になっていて、リリース直前に精神的な意味でのすり合わせをできる機会があまりなかったんです。でもすごく、シンボライズされた良質なポップミュージックっていうベクトルは、この2曲にすごく共通してると思ってて。salyu×salyuで小山田さんとやってきた音楽もポップスだけど、また違う美意識と世界観と自我みたいなものがあったからこそ、私の感覚としてはオルタナティブな感覚で取り組めたんです。今までやってきた時間と体があって、一方もう1つのものとして表れた、オールディーズを思わす世界観だったり、こういった作品っていうのが、すごく自分にとってはもう1個の別のアートっていうか。そういう感覚はこの2曲ともありますね。
──それはやはり、いろんな曲をいろんなアプローチで歌える喜びみたいなものを感じつつやってたってことでしょうか。
そうですね。
──言い方はちょっと軽いですけど、いろんな服を着て楽しむとか、この服にはどういうふうに合わしていけばいいんだろうとか、そんなふうなこと考えながら女の人が鏡の前でポーズを取るのに近かったりするんですかね。
うん、そういうこともあると思います。服を着て、それに似合うポージングとその日のアクセサリーをコーディネートしたいんでしょうね。いろんな服を着て、よりその服が魅力的に見えるようにするかっていうのにすごく興味があるんですね。そういった意味でお洋服とも近いと思うし。
──女の人でも、これっと決めたら同じような服ばっかり着てる人っていますよね。いっつも真っ黒な格好してる人とか(笑)。そういう人とはSalyuさんは違うってことですよね。
そうですね。
──いろんな服を着てみたいし、いろんな自分でいろんなものを表現してみたい。
そういう感覚ですね。
次のアルバムのテーマは「一から作り上げていく感覚」
──アルバムも早く作りたいってさっきおっしゃってましたけど、もう具体的な構想とかあるんですか?
えっと、徐々にですけども始まっていくっていう時期でして。まだ具体的にはなってないんですけれども、どういうものにしていこうかっていうことは今年に入ってから小林武史さんと何度もすり合わせてて。……まだ具体的に見えてはいないんですけれども、方向性としては、今から徐々に新曲を上げていくっていう感じですね。
──今回の桜井さんの曲は、何かの鍵になりそうな感じがあるんですか?
あると思いますよ。次のアルバムのテーマになってるのが、「一から作り上げていく感覚」っていうことなんですよ。そこを強調したいんですね。一から作り上げていく感覚っていうのは、私にとっては新しいものになるっていうこともあると思うし、今までになかった表現になるっていうこともあると思うし。お米を買ってきてご飯を炊くっていうよりは、苗から植える感じ(笑)。一から作っていく感覚と、丁寧さと。
──それは、自分自身が今まで培ってきたスキルであるとか、セオリーであるとか、そういうことをナシにして一からまた作り上げていくということに近いですか?
んー、たぶん、小林武史さんっていうプロデューサーとSalyuっていうアーティストの楽曲っていうタッグにおける、新しさっていうことだと思いますね。
──なるほど。でも過去にいろいろやってきたからこそ、新しいアプローチを一から考えるのは、結構難しそうですね。
でも私としてはね、かなり新しいですよ、「青空」のアレンジも「magic」の発声も(笑)。
──「magic」のほうも、新しい感じがあった? 慣れ親しんだというよりは。
うんうん。もちろんメロディが持ってる癖とかは自分も馴染みがあるけれども、結果編曲やその楽曲が持つ印象が変化してきてるなっていうのは、すごく感じるんですよね。Salyuがデビューした頃の「landmark」とか「TERMINAL」っていうアルバムから、今の「青空」「magic」っていう楽曲は、すごく変化してきてるって感じてるんですね。salyu×salyuっていうプロジェクトが出現した以上、やっぱりSalyuもそこを意識したものにきっとなっていくし、Salyuっていうボーカリストが今どういうサウンドに包まれて見えるべきなのか、歌っていくべきなのかっていうことも変化していける。そういう意味で、今までにはない新しい印象の作品になるのではないかと。
Salyu(さりゅ)
2001年公開の映画「リリィ・シュシュのすべて」に、Lily Chou-Chou名義で楽曲を提供。2004年6月に小林武史プロデュースのシングル「VALON-1」で、Salyuとしてデビューを果たす。2006年にBank Band with Salyuとして「to U」、2008年にはWISEとのコラボによる「Mirror feat. Salyu」をリリースするなど、他アーティストのコラボにも意欲的。自身のオリジナルソロ作品もコンスタントに発表し、2008年11月には初のベストアルバム「Merkmal」をリリース。2009年2月には初の日本武道館公演も成功させた。
2010年3月にソロとして3枚目となるアルバム「MAIDEN VOYAGE」をリリース。2011年からは新プロジェクト「salyu x salyu」としての活動を開始し、Cornelius=小山田圭吾との共同プロデュース作品「s(o)un(d)beams」を完成させた。同年7月、小林武史プロデュースのニューシングル「青空 / magic」を発売。収録曲「青空」を桜井和寿(Mr.Children)が提供したことでも注目を集めている。