ナタリー PowerPush - サカナクション

あの“革新的音楽体験”がもたらしたもの

7月28日(日)21:00より、WOWOWライブにてサカナクションのライブ特番「SAKANAQUARIUM2013 sakanaction」がオンエアされる。この番組では、5月19日に千葉・幕張メッセで行われ、最新鋭の音響システムや斬新な演出で話題を集めたワンマンライブの模様をお届け。ナタリーではこれを記念して山口一郎(Vo, G)にインタビューを行い、あの日のステージや音楽シーンにおけるサカナクションの役割について語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一 撮影 / 福岡諒祠

 
mixiチェック

音楽を伝えることの意味が増えた

──幕張公演から約2カ月経ちましたが、振り返ってみてどうですか?

山口一郎(Vo, G)

ライブの前に、自分たちのバンド名を冠した「sakanaction」という6枚目のアルバムを作って。(参照:サカナクション「sakanaction」インタビュー)制作時に目指した世界観や「表裏一体」というテーマを具現化して、作品としては完結することができたんですけど、そこからツアーでどういうライブ表現をするのかは実際やってみないとわからなかったんですよね。でも、今回のツアーを振り返ると、特に幕張2DAYSや大阪城ホールではチームサカナクションでさまざまな新しい挑戦をして。それを経て、音楽を伝えることの意味が増えたような気がしてますね。

──例えばそれはどういうことですか?

今までは「総合芸術」を意識して、どちらかといえばビジュアル面の演出に意識が行ってたけど、今回のツアーで「音楽体験」をキーワードにすることがすごく重要なんだなと思ったんです。「sakanaction」というアルバムをきっかけに、ライブに来てくれるお客さんの層がさらに広がって、今回のツアーは4歳から60代までの人が来てくれたんですよ。そこで小さな子に自分たちの音楽が届いてることに対する責任も感じたし、どんな音楽体験をさせてあげられるかによって、その子たちの今後の音楽偏差値にも関わってくるだろうなと思って。

──僕も幕張のライブを観て、「これは革新的な大衆音楽体験だ」と思ったんです。一郎くんが言うように、会場には幅広い年齢層やリスナーとしてさまざまな経験をしてきた人たちが集っていて。2万人のオーディエンスの中には、ディープに音楽を掘っている人も、普段はそこまで積極的に音楽に触れていない人も等しく共存していたと思うんですよね。

うん、そうですね。

──サカナクションというバンドが、そういった2万人のオーディエンスを集められること。そして、エポックメイキングな音楽体験を提供する気概を持っていることが問答無用に素晴らしいと思った。ある側面ではリスナーを啓蒙するという意味合いもあっただろうし。

でも、啓蒙とかそういった高尚なものではなくて、純粋にそこにいるすべてのお客さんと一緒に楽しみたいなと思ったんですよね。自分たちが楽しいと思ってることをリスナーにも楽しいと思ってもらえるような空間を提供したかった。その結果、それぞれのヒストリーに刻まれるような音楽体験をしてもらえたらなって。今回のツアーを終えて、そういったライブを追求していくことがバンドの新たな目標にもなったし。

──それは間違いなくサカナクションだからこそ追求できることですよね。

そうだと思うし、僕らが新しいチャレンジをして、それを面白いと思った人たちが真似してくれることもうれしくて。今回のツアーでZビームというレーザー演出を使ったんですけど、ツアーが終わって少し経ってから「ミュージックステーション」のスタッフの方が「番組でZビームを使わせてもらいました!」って報告してくれて。それがすごくうれしくて。自分たちがマイノリティの世界でがんばっている中で、オーバーグラウンドにいる人たちに影響を与えられるというのは重要なことだなって。常にそのマイノリティのほうから自分のアイデアを出していきたいというのはありますね。

クラブに行ったことのない人たちも「ハメる」ことができる音

──6.1chサラウンドシステムの導入はどのような流れで決まったんですか?

アルバム「sakanaction」ではバイノーラルレコーディングといって、360度の立体音響を楽しめるという技術を採用したんですね。

──そうでしたね。

山口一郎(Vo, G)

バイノーラルを採用することで、ヘッドフォンで聴くとその場にいるような音像を体感できるんですけど、ライブでもそれと同じような音像を作れたらいいなと思ったのがサラウンドシステム導入のきっかけですね。だけど、実際にサラウンドシステムを導入できる会場は限られる。実現できるとしたら幕張2DAYSと大阪城ホールしかなかった。Zeppクラスの規模でやるとチケット代が上がってしまうし、スタッフの人数も尋常じゃなくなるので。だから、全会場ではできないけど、幕張と大阪では絶対やろうと。あとはサラウンドシステムを導入してライブをやったらどうなるのか、自分たちはなぜサラウンドシステムを導入しようとしているのか。そのフィロソフィをチームで固めるだけでしたね。

──会場を取り囲む228本ものスピーカーからの音の鳴りを、最初に体感したときはどんなことを感じましたか?

実は僕らもプロデューサーも228本ものスピーカーが用意されてるなんてライブの数日前まで知らなかったんですよ(笑)。PAのサニーさん(佐々木幸生)が勝手に用意したくらいの勢いで。正直、幕張2DAYSでもあれだけの数のスピーカーを導入したらビジネス的には全然採算が合ってないんですよね。だから、配置されたスピーカーを見たときにゾッとしましたよ(笑)。でも、音の鳴りはやっぱりすごかった。普段ライブハウスにバンドのライブを観に行ってる人たちと、よくクラブで遊んでる人たちとでは低音の感じ方が違うと思うんですけど。

──根本的に音圧の質が違いますよね。

そう。僕もそうだけど、クラブによく遊びに行く人は「おなかが鳴る気持ちよさ」を知ってるんですよね。低音に対してこだわりのない人でもその感覚を一度味わったら「すごい!」ってなるはずだと思って。リハーサルで音を出したときにおなかが鳴る気持ちよさを体感できたので「よし、これはいける!」と思いましたね。クラブに行ったことのない人たちも“ハメる”ことができる音だなって。

サカナクションがこの夏出演するフェスも続々放送!
WOWOWライブ「現地より生放送!ROCK IN JAPAN FES.2013」

2013年8月2日(金)15:00~
2013年8月3日(土)15:00~
2013年8月4日(日)15:00~

WOWOWライブ「現地より生放送!SONICMANIA 2013」

2013年8月9日(金)22:30~

サカナクション
サカナクション

山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。ライブ活動を通して道内インディーズシーンで注目を集め、2006年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO」の公募選出枠「RISING★STAR」に868組の中から選ばれ初出場を果たす。2007年5月にBabeStarレーベル(現:FlyingStar Records)より1stアルバム「GO TO THE FUTURE」、2008年1月に2ndアルバム「NIGHT FISHING」を発表。その後、初の全国ツアーを行い、同年夏には8つの大型野外フェスに出演するなど、活発なライブ活動を展開する。2009年1月にVictor Records移籍後初のアルバム「シンシロ」をリリース。2010年3月に4thアルバム「kikUUiki」を発表し、同年10月に初の日本武道館公演を成功させる。2011年には5thアルバム「DocumentaLy」をリリースし、同作のレコ発ツアーの一環で初の幕張メッセ単独公演を実施。約2万人のオーディエンスを熱狂させた。2012年は「僕と花」「夜の踊り子」という2枚のシングルを発表。2013年3月に約1年半ぶりとなるアルバム「sakanaction」をリリースし、全国ツアー「SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction」を開催した。