音楽ナタリー Power Push - レキシ

乱れそめにし世に放つ平安からのメッセージ 9年目の1stシングル完成

女は宇宙だな

──「飾りじゃないのよ涙は」みたいに言わないでください(笑)。話が前後しますが、今回阿波の踊り子(チャットモンチー)をフィーチャリングアーティストとして起用した理由は?

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さっき言ったように「♪シキシキブンブン」のところは先にできてたから、歌ってもらうとしたら女子だなっていうことはずっと思っててさ。で、いざ「誰がいいかな」って考えたときに、ストレートにロックなシンガーよりも、いい意味で外してくれる感じがほしいと思った。ロック調の曲になじんじゃうより、声に特徴がある人がいいなと思ったんだよね。そこでチャットのえっちゃん(橋本絵莉子)が思い浮かんだの。あっこ(福岡晃子)とは前から友達で「いつか一緒にやりたいね」とも言ってたし。

──橋本さんとは初対面だったんですか?

いや、以前に挨拶したことあったんだけどさ、今回「はじめまして」って言われて。ああ、向こうの中では印象なかったんだなって(笑)。チャットの音楽ってジャンルはロックだけど、えっちゃんの声はかわいらしいタイプじゃない? で、歌詞ではすごくドキッとすることを言ってる。そういうトライアングルがすごく好きでさ。

──橋本さんの個性的な歌声の中には、女性の持つさまざまな顔が見え隠れする感じもありますしね。

だよね。今回歌ってもらったらその通りだった。かわいらしい女の子っぽさと、女性ならではの情念のようなものと……あと最近子供が生まれて家庭的な感じもするのに「いつだって恋をしたいよ あなた以外と」(チャットモンチー『ときめき』)とか歌っちゃってさぁ……。底知れないすごさがあるというか「女は宇宙だな」って思わせる。それこそまさに「SHIKIBU」で伝えたかったことなんだよね。

──この「SHIKIBU」をライブで披露したら、モッシュやダイブが起こりますかね?

こっちとしてはモッシュが起こってくれないと困るんだけど! でもまあ……ならないな(笑)。「Hey!」って言ってくれるぐらいかな。あっ! 1つ言っておきたいんだけど、「Hey!」は平安時代の「平」だから。それはレキシの永遠のメッセージ、「平和」にもつながる。そう“ラフ&ピース(レキシの活動のテーマ)”ですよ。「今この世は 乱れそめにし」ですから。

もはや伝統芸能に近付いてきてる

──カップリングには「Takeda' 2 feat. ニセレキシ(U-zhaan)」と「キャッツあつめ~CATS LIVE SELECTION~」が収録されています。

「Takeda' 2」は、アルバム「レシキ」に入ってる「Takeda'」の別テイクなんだけど、いつか作品として世に出したいって思っててさ。「レシキ」を出したときも「Takeda'」の感想ばかりだったもんね。みんな「あの曲すごいね」としか言わないんだから。

──しかしこの「Takeda' 2」を聴くと、「レシキ」に収録された「Takeda'」の完成度の高さは、かなりミラクルが起こってたんだなってわかります。

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すごいでしょ? やっぱり「Takeda' 2」のほうは2テイク目ということもあって、ちょっと飽きてる感じも出ちゃってるから(笑)。だってアルパカって言いたいだけだもん。狙ってる時点で「違う」っていう空気があふれちゃってるというか。そこらへんのさじ加減って大事だし、自分らが新鮮な気持ちじゃないといけないからね。まあ、そんなところも踏まえて聴いてくださいっていうことで。

──そして「キャッツあつめ」がまた、前代未聞の1曲といいますか……。

ライブの模様をCD化してほしいという声がすごく多いので、「じゃあわかったよ!」ってことで発表した、レキシ初のライブ音源です!

──過去の膨大なライブテイクから、「狩りから稲作へ」のおなじみのコール&レスポンスである「キャッツ!」の部分だけを集めてコラージュしたという、普通のライブ音源がほしかったファンにとっては猫だましを食らったような衝撃の1曲で。

キャッツだけにね! 初のシングルの初のライブ音源。でも、歌っていないっていう(笑)。

──10分以上ある長さなんですけど、聴いてるうちに妙な感動が湧いてくる。

それはレキシ特有の感覚だね。ライブを観た人に「『縄文土器 弥生土器』って言ってるだけなのに、最後には感動してるんだよね」ってよく言われるんだけど、俺から言わせれば、みんなどうかしてるよ(笑)。まぁ「キャッツあつめ」を聴くと、俺はこんなことを4年間ずっとやってきたんだなって思うよね。

──スチャダラパーで言うところの「タワーリングナンセンス」といいますか。くだらなさの金字塔ですよ。

聴けばわかるけど、その時々によってキャッツネタもいろいろ変わってるんだよね。それは自分としても新たな発見だった。だからこれは、キャッツの歴史だよね。いや、キャッツの歴史っていうと語弊が生まれるか?(笑) 採用された音源の中でも言ってるけど、本当はもう飽きてるし、やりたくないのよ。

──MCでそう言ってるのも、かなり前の音源ですよね。

それを経ての今だから。「やりたくない」って言ってたのをずっとやり続けていくうちに、森光子さんの「放浪記」のでんぐり返しみたいな感じで、これがないと終われない十八番みたいな感じになりつつあるよね。もはや伝統芸能に近付いてきてるというか。その途中経過が「キャッツあつめ」ですね。

1stシングル「SHIKIBU」2015年11月25日発売 / 伽羅古録盤
初回完全生産限定盤 [CD+グッズ+ランダムジャケット] 1620円 / VIZL-904
通常盤 [CD] 1080円 / VICL-37121
収録曲
  1. SHIKIBU feat. 阿波の踊り子(チャットモンチー)
  2. Takeda' 2 feat. ニセレキシ(U-zhaan)
  3. キャッツあつめ ~CATS LIVE SELECTION~
レキシ「レキシツアー IKEMAX THEATER」
  • 2015年12月1日(火)北海道 Zepp Sapporo
  • 2015年12月3日(木)宮城県 仙台市民会館 大ホール
  • 2015年12月4日(金)新潟県 新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)
  • 2015年12月7日(月)石川県 金沢市文化ホール
  • 2015年12月10日(木)兵庫県 神戸国際会館
  • 2015年12月11日(金)福岡県 福岡市民会館
  • 2015年12月14日(月)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2015年12月16日(水)東京都 両国国技館
  • 2015年12月21日(月)大阪府 オリックス劇場
  • 2015年12月23日(水・祝)広島県 アステールプラザ 大ホール
  • 2016年1月11日(月・祝)沖縄県 ミュージックタウン音市場
CM出演情報
dヒッツ「意外な出会い」篇

放映:2015年11月26日(木)より全国でオンエア
出演:レキシ / 小林竜樹
音楽:レキシ「SHIKIBU feat. 阿波の踊り子」

レキシ
レキシ

1974年福井県生まれの池田貴史によるソロプロジェクト。池田は1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、2004年からは100sのメンバーとしても活躍。その日本史マニアぶりを生かし、2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」を発表した。レキシでは日本史の登場人物や史実をソウルフルなサウンドに乗せて歌う独自のスタイルで注目を集め、2011年3月に2ndアルバム「レキツ」、2012年12月に 3rdアルバム「レキミ」をリリース。2014年6月に4thアルバム「レシキ」を発表した。同年8月には初の日本武道館公演を開催。12月には上原ひろみを迎えた東名阪ツアーを実施した。2015年9月には青森・三内丸山遺跡でのワンマンライブを成功させる。同年11月25日に、初のシングル作品である「SHIKIBU」を発表する。